第20話 金網


 ・・・・・・・・





 ・・・・・・・・




 ・・・目が覚めた時、驚きました。ここがどこなのか分からなかったのです。




 薄暗いいつもと違う場所で目を覚ます事に違和感を感じながら、ゆっくりとソファーから起き上がりました。



 ハネダがいつのものか分からないその辺りに置いてあったタバコを吸いながら窓の外を見ていて、ノブハラが地べたに寝袋を敷いて寝ている姿がありました。



 あっ・・・・・



 そうか・・・・お父ちゃんのアトリエに隠れる事にしたんだった・・・・。



ハネダ「・・・外は異常なしだな。ごめんハク、おやっさんのタバコ貰ってるよ。見たこと無い銘柄だ。外国のタバコかな?・・・」




ハク「いやいいけど・・・・もう外真っ暗だね・・・。こっちはハネダのタバコの火くらいしか見えない。」



 一体何時間私は寝ていたのでしょうか・・・。体中が痛くてソファーで寝返りを打つたびに痛みが走ります。凄まじい筋肉痛でした。



 再び眠る為に目を瞑りました。



ハネダ「・・・・ふぅー・・・・・」




ハク「・・・・・・・・・・」




ノブハラ「スースー・・・・・」




・・・・・・・・



・・・・・・・



ブーーーン・・・・



ブオーーーン!!




ハネダ「・・・誰か来た・・・。ハク、ノベタン・・・・。なんか来たぞ。」



 ハネダは慌てて横にあった灰皿でタバコの火を消して私を起こしてきました。



ハク「えっ・・・・・」



 車のライトが私達の小屋を照らしました。




ハネダ「奴らか?・・・・ハイバラ?・・・・・」




 ハネダは小屋の壁に身を隠しながら外をチラチラ確認していました。




 車のライトが消灯し、車の中から男性と思われる人間が1人出てきました。



ノブハラ「この時間・・・こんな所に用事なんかないだろ・・・・。」



 起きたノブハラが部屋の中にあった木の棒を持ちました。



 もし万が一このフェンス内に入ってきたら言い訳がつかないので、戦わなければならないのですが、もう私達にはこれくらいしか武器がありませんでした。




 ピストルもドスも全て島の森や海の中です。



ハク「・・・・・・・」



 固唾をのんで、ただただ静かに待ちます。



ハネダ「来ないな・・・・・なんか・・・廃校の方に向かって行ったぞ・・・・。」



 私達が居る小屋のすぐ近くに廃校があるのですが、その男性は廃校側に向かって歩いて行きました。



 1本の懐中電灯の明かりで進んでいく姿が見えました。


ノブハラ「・・・・ヘルメット被ってるな・・・・。もしかして・・・警備員か?・・・・」


ハク「だね・・・なんかそんな感じの服装だね・・・・。」



 ガっ・・・・ガタンっ!!



 私は窓の外を見ようと少し身を乗り出した時に、立てかけてあった額縁を倒してしまいました。



ノブハラ・ハネダ(ばかやろっ!!・・・)




 その警備員風の男性が持っている懐中電灯の光が一気にこちらを向きました。



男性「・・・なんだ?・・・なんの音だ?・・・」



 フェンスの前まで来て、懐中電灯の光で私達が居る小屋を照らしてきました。



ハク「・・・・っ!!!!」


 ノブハラもハネダも息まで止めて身を屈めます。




ハク(・・・しまったぁ・・・・・)




男性「うーん・・・・・・気のせいか・・・・・・・」




 暫くするとその男性は、何事もなかったかのように廃校の方に歩いていきました。




ハク「・・・・2人共ごめん、足元がほぼ見えなくてね。」




ハネダ「寿命が縮まる・・・・。」




ノブハラ「いや・・・仕方ない・・・。でもあの男性は本当に廃校の方に向かって行ったぞ・・・。追手ではなさそうだな・・・。よかった・・・・・。でも・・・・ここに居る事がバレると警察に通報される可能性があるから、絶対に向こうにはバレないようにはしないといけない。」



 どうやら今宵来た男性は、警備員のようでした。こんな夜中に、こんな山奥まで一人で来るなんて一体あの人はどういった仕事をしているのでしょうか・・・・。怖くないのでしょうか・・・・。



 約30分後、そのヘルメットの男性は車に乗って出ていきました。



ノブハラ「そうか・・・廃校側に車を停める場所が無いから、アトリエの前に停めたのか・・・・。」





ハネダ「よかったぁ・・・・マジで気を付けようぜ。小便漏らしそうだった・・・・。」




ノブハラ「・・・それとハネダ、夜にタバコは禁止だ。・・・火が原因で居場所がバレる可能性がある。匂いも出るし禁止だ。」



ハネダ「・・・・確かにそうだな・・・・気分転換に吸ったんだよ・・・。・・・やめるよ。」




ハク「トイレ行く時も気を付けよう。ここって本当に誰が来るかわからないね・・・。廃校になっているから絶対誰も来ないと思ってた。」




 このアトリエの直ぐ近くに昔小学校だった廃校と、山を登った所に電波塔、太陽光発電所があり、少し山を下りた所に公民館がありました。設備業者や公的な仕事をしている人間が出入りする可能性がここにはありました。




 いつどこで通報されるか分からない恐怖、そしていつ追手が来るか分からない恐怖。それらの恐怖が私達を襲っていました。




ハク「なんか目が覚めちゃった・・・。ハネダ、変わるよ見張り番・・・・。」



ハネダ「いいの?あと1時間あるよ?」



ハク「いいよ、私もう充分寝たから。」



 ハネダとバトンタッチし、窓際の席につきました。



 月が綺麗でした。こんな夜でも月が綺麗でした。



 静寂の闇の中、3人はそれぞれの考えを巡らせていました・・・・。

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