震災5 跳んで岩手
ツッキーがコーダイの家に来た。
なんだかサッパリしている。
1人だけずりぃ!
実はツッキーの家の周囲は電気が復旧しているということで、風呂に入って来たそうだ。で、もし良かったら入りませんかと訪れたようだ。それ以外にも、職場で食料配ってること、炊き出しをしていること、手伝い出来る人は来るようにとの伝達役も担っている。むしろそっちが本当の目的だろう。
ふと、ツッキーが真顔で俺の方を向いた。
兄さん。宮古でしたよね?なんか、結構ヤバいっすよ。
ん?
電気が復旧したことでテレビを観ていたらしい。すると全国ネットで何度も津波の様子が放送されている。その場所が宮古市であるというのだ。
映像を観れていないので何とも言えないが、実家はそもそも高台で、そこまで津波が来ることはないと踏んでいた。心配なのはむしろ、津波後に孤立してしまう恐れがあるということだけだ。連絡さえ付けば安心も出来るが、何れにしろ、無事を祈るしかない。
大丈夫。避難場所に住んでるようなもんだから。
と言ってみたもののやはり心配である。どうにかならんものか
心配をよそに、コーダイ他皆はツッキーの家で風呂を頂くことになった。
俺は、昨日拭いたばっかだからいいよと断った。全国ネットで放送される地元の被害を観たくはなかったのだ。
兄さん、ヤベェって。行けるなら行った方がいいっすよ。俺の地元も放送されてたけど津波で規制されて行けないし。行ける人は行った方がいいですよ。
宮古までは行けるみたいですよ。緊急車両のみってことになってますけど、実家に帰る人も車で行ってるみたいですし。職場の炊き出し手伝いとかは地元の奴らでやっとくんで、行ってきていいですよ。
皆の言葉に励まされ、岩手に帰ることにした。ガソリンは高速道路の方が入るようなので心配はいらないということだった。アパートに1度戻り、着替えを何着か詰め込み、いざ行かん!岩手!
高速道路も静かなもので、渋滞もなくスムーズだ。電気も明るく、道路も影響ないようだ。ガソリンスタンドにも問題なく入れた。幸先の良い旅立ち。...束の間だった。山沿いの辺りは漆黒。星が綺麗だ等という余裕はない。道路のひび割れや隆起にも気を付けなければならず余計に疲れる。
ようやく電気が復旧している場所に出る。途中、コンビニに立ち寄りおにぎりやサンドイッチを調達。ようやく実家まで山1つのところまで来た。このトンネルを抜ければ海沿いを走ることになる。心拍数が上がっていく
トンネルを抜けると、闇。
突如として現れるリアル。
大木が突き刺さっている家
一階部分がグニャリと折れ曲がり斜めになった家
船がガソリンスタンドに突っ込んでいる
海岸沿いにあったゴルフ練習場やガソリンスタンド等は見るに耐えない無惨な姿であった。
実家に着く。チャイムを鳴らす。
俺だよ!
少し驚いた様子で親父が出てきた。
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