震災4 サバイバル

各々の車内で一夜を過ごした明くる日の朝。

3月の仙台とは思えぬ程寒く、1日目でもはや車内生活は無理と判断。

誰かの家に皆で入ろうということになった。

電気の復旧がまだまだかかりそうな事、避難所から比較的近くてプロパンガスが無事な家。コーダイのアパートに決まった。

避難所から近く歩いて帰れるツッキーだけは自宅に帰り、それ以外は皆コーダイの家に向かう。

途中何件かガソリンスタンドがあったが、長蛇の列。1目盛りまでという限定的な内容だったことから並ぶのを諦め、コーダイのアパートに着いた。


日中ということもあり、カーテンを開ければ日の光も十分入ってくる。明るいうちにこれからの事を話そうとなった。

まず目下の目標はガソリンの補給だった。俺のはもはや1目盛りを切っている。待ち時間も考えればガソリンスタンドに行くのがギリギリだろう。食料確保の移動の為の車はコーダイの車になった。近くに大きなショッピングモールがあり、営業しているという事だったので、早速じゃんけんでチームを作って買い出しに向かうことになった。1日目はコーダイとぐっさんが担当となった。


帰ってくるなり、

あんまり買えなかったっす。つうか、殆ど配給みたいなもんですよ。数量決まってるのでそんなに買えないし、人数居れば良かったっすね。それよりも!近所のガソスタのおっちゃんに会って、明日の朝早い者勝ちで給油してくれるらしいっすよ!


ガソスタはコーダイの家から歩いていける距離らしく、朝何時に並びだすか交代で見に行こうとなった。それまでは交代で寝る。暖かい暖房の効いた部屋で寝ることがこんなにも幸せなことかと痛感した。

夜中2時。

車というか人気がちらほら見えてきたらしく、きっと我々と同じく何処かで噂を聞いた人が様子を伺っているのだろう。早めに手を打とうとなり、各々の車に乗り移動開始。ガソスタ前に車を並べ待機。目盛りはどんどん減っていく気がする。

朝方5時。約3時間待ち。店員が早めに来てコーダイと話をしている。どうやら我々の車だけは満タンにして欲しいと交渉しているようだ。


交渉成立。

サクッと入れて帰ってきた。ぞろぞろと皆にこやかに帰ってくる。これで買い出しが二手に分けれる。

早速俺とコーダイ、ぐっさんと姉さんに別れて買い出しに。

朝7時にも関わらず一時間待ちの大行列。


...あれ、ツッキーの家っすね(笑)


コーダイが謎の呟きをする


どゆこと?


聞き返すと、


いや、あのスーパーでかいんで(笑)


いくらでかいとはいえ、もはや巨人のそれである。


あの家に収まるかな?ツッキー


俺もノッてみる


屋根部分に寝そべってるっすね。イメージ。


それ、どっかの国の涅槃像みてぇだな。つうか、家ってか、ベットじゃん。立ったら突き破るぜ(笑)


地下空間あるんじゃないすか?(笑)


じゃあ地下に寝ろよ(笑)


そこまでの資金がないんですよ。昨日だったら雪積もってますね(笑)

つうか、マジで失礼っすね。ツッキー居ないとこで弄るとか(笑)


もう遅い!俺にはあのスーパーの屋根には寝そべってるツッキーしか浮かばん!


2人でゲラゲラ笑いながら過ごしてたら一時間待ちなぞ気にならない。

パンや缶詰め等そのまま食べれる物を中心に買い、カップラーメン等は限定数ギリギリまで買った。それでも4人が食べて行くには心許ない。帰りに別のスーパーに立ち寄りながら買い足ししていくことになった。


帰宅。

結局、立ち寄ったスーパーも目一杯並んでいるのでそのまま帰宅。ガソリンを少しでも節約しようという決断だった。


ぐっさんと姉さんも合流。

やんややんやツッキーの家で盛り上がっていた我々とは違い、2人は長期を見越して乾麺や水等豊富に買ってきていた。別班を組んでいて正解である。


あんたら何買ってきてんの?これで何日間持たせるの?何処行ってきたの?


姉さんの問いかけはもっともである。調理するという考えまで至ってない我々の買い物は持って3日である。すまんとしか言いようがない。


何処って、ツッキーの家。ツッキー寝そべってた(笑)


は??


コーダイと俺はゲラゲラ笑いながら説明しつつツボっていたが、別班の2人にはなかなか伝わっていない。やはりあの時あの場所でそういう話しないと分からないのだろうか。

説明しては思い出して更にどんぶり重ねてゲラゲラ笑っている我々を横目に反射式ストーブの上で湯を沸かす姉さん。缶詰め使ってパスタを作ってくれた。有難い。こんなにも素朴な物が上手いことに改めて気付かされる。食事って大事。


夕方。日が落ちるのが早い。

ローソクを立て灯りを灯し、ストーブの上で湯を沸かす。さすがにシャワー浴びてないので臭い。身体をタオルで拭き洗髪した。電気はまだつかなかった。朝早かったからか急に眠気が襲う。気づけば漆黒の夜を迎えると共に全員が寝ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る