第3章 リスタート

033 僕にとって大事なもの……

 リスタートを切った日から、早くも一か月が経過していた。


 最初は訓練施設のダンジョンを回っていたが、時間的に考えて近場の食材系ダンジョンを中心に潜るようにしていた。

 移動時間もそうだけど、ダンジョンに泊まり込んでのレベル上げに勤しんでいた。

 幸いと言って良いのか分からないけど、ダンジョンのランクは訓練施設と同じGランク。

 難易度設定は最低だった。

 だからこそ美鈴たちも、このダンジョンをメインとして活動しているんだろうけど。

 死んだら元も子もない話だから。


 それと、第1層から第4層までを中心に活動していると、食料には困らない。

 出現するモンスターは大まかに3種類。

 スライムとフォレストボアとグリーンマン。

 スライムは、訓練施設のダンジョンと変わりはしなかった。

 以前自衛官に確認したところ、その生態系が判明しつつあるそうだ。

 ダンジョンの掃除屋と呼ばれていて、ダンジョン内のゴミや汚れを好んで捕食しているだとか。

 その性質上、侵入してきた人間も〝ゴミ〟として扱っているんじゃないかと言われているそうだ。

 フォレストボアは基本こちらが攻撃しない限り、悠然とその辺の草を食べていた。

 ただ、怒りだしたら手が付けられず、いかに暴れる前にとどめを刺すかが、攻略の焦点となっていた。

 グリーンマンに至っては土に埋まっており、僕も最初は見分けがつかなかった。

 たまたまフォレストボアが食べたのがグリーンマンで、突如そこで戦闘が開始したときは本気でびっくりした。

 慣れるまでは全く分からず、思わず踏み抜いて足元から奇襲を受けるなんてことが日常茶飯事だった。

 これについては慣れてくると、見分けがつくようになり奇襲を受けることはなくなった。

 むしろ注意点を聞いたのにもかかわらず、知ってて教えなかった美鈴に、あとでいやがらせでもしてやろう。

 それとは別に、うれしいことに食糧系ダンジョンで寝泊まりしていると、スキル【食材調達】を覚えることができた。

 自分より5レベル高いモンスターまでなら、解体して食材にできるというものだった。

 確か、最初のパーティーにもこれを取得していた人がいた気がする。

 フォレストボアからは肉が。

 グリーンマンはその見た目通りの各種野菜が手に入った。

 あとは、必要なものとして調理器具と調味料を持ち込んでいる。

 そしてなんと言っても米!!これがないと始まらない。

 おおよそ半月分の米や調味料などなどをインベントリにしまい、ダンジョンの階段を拠点として生活を送っていた。


 そして、このダンジョン引きこもり生活で僕のステータスは大幅に上昇するかに見えた……

 しかし、そこで問題が発生していた。


 レベルが上がればボーナスポイントが10もらえる。

 そう信じていた。

 美鈴もそうだと思っていた。

 SNSで調べてもらったが、やはり10上がるってことで確定事項となっていた。


 でも違ったんだ……

 総ボーナスポイントが200を超えたとき、異変に気が付いた。

 ポイントが8しかもらえなかった。

 これも一つの可能性だけど、ボーナスポイントは総獲得200ポイント毎に減少していくのではないだろうか。

 これはまだ検証段階なのでわからない。

 でも、最悪を考えると……

 そのうちボーナスポイントがもらえなくなる可能性が出てくる。

 つまり、僕のスキルはあくまでも〝今後貰えるであろうボーナスポイントの先取り〟ができるに過ぎないのかもしれない。


 嫌な考えが頭を過るが、やることは変わらなかった。

 レベルを上げてスキルを取る。

 ボーナスポイントでステータス強化。

 これだけだった。


 ただ、結果としてその懸念は現実のものとなってしまった。

 総獲得ポイントが400になったとき取得ポイントが6になった。

 これでほぼ確定した。

 あくまで僕の場合だが、これから200ポイント毎に取得ポイントが減少していく。

 これからの計画が崩れていく音が聞こえてくるようだった。


「ステータスオープン」


ーーーーーーーーーー


ステータス


レベル :1

 EXP :  0/  2

 HP  :120/120

 SP  : 90/ 90

 体力  :170(+5)

 力   :120(+1)

 知力  : 70

 精神力 : 60

 魅力  : 50

 幸運  : 80


 任意ステータス振り分けポイント残:0


スキル

 

 共通  :世界共通言語 レベル無し

      インベントリ レベル2

 

 ユニーク:スキルクリエイター レベル1

      スキルアップグレード レベル1


 武器術 :剣(UP) レベル2

      盾(UP) レベル2

     

 武術系 :剣術 レベル2


 強化系 :身体強化(UP) レベル2

      部位強(UP) レベル2

      切断 レベル3

      打撃(NEW) レベル2

      衝撃(NEW) レベル2

      命中率補正(UP) レベル2

      回避速度補正(UP) レベル2


 魔法系 :土属性+(UP) レベル2

      土属性-(NEW) レベル2

      風魔法+(NEW) レベル2

      風魔法-(NEW) レベル2

      水魔法+(NEW) レベル2

      水魔法-(NEW) レベル2

      火魔法+(NEW) レベル2

      火魔法-(NEW) レベル2


 特殊系 :食材調理(NEW) レベル1


ーーーーーーーーーー


 とりあえず取れる攻撃魔法は取得してレベルを2まで上げてみた。

 そのほかのスキルのレベル2まで上げた。

 もう少し時間をかければもっと上げれたと思う。

 でも、そろそろダンジョンを出ないといけなくなった……


 そう、お米が切れました……


 半月ぶりにダンジョンの外に出てきたら……

 そこは見知らぬ世界だった……

 なぜこんなことになったんだ……

 何故だ~~~~!!



 ってなるはずもなく、普通にみんな生活していました。

 食糧系ダンジョンから自宅に戻った僕は、母さんから開口一番……


「くさっ!!」


 って言われた。

 しかも、家に入れてもらえませんでした。

 

 外の水場で全身を洗い、着ていた物をすべて手洗い。

 着替えも終わり、何とか家に入れてもらえました。


「ずっとダンジョンにいるっていうから、まだ潜ってるかと思ったよ。」


 美鈴が二階から降りてきた。

 今日は休養日だったらしく、一日ダラダラしていたそうだ。

 父さんは相変わらずの引っ張りだこのようで、今度近くの神社の建直しも請け負ったそうだ。

 すでに父さんのスキルレベルは10にまで到達してしまったそうだ。

 美鈴に聞いたところ、スキルレベルが二桁の人は結構な数現れているみたいだった。


 そして頭角を現してきた集団もいた。

 『スミスクラン』という職人集団だ。

 鍛冶や製薬、ブラックスミスなどのクラフト系スキルを持った人が集まって作ったクランらしい。

 正式には認定されてはいないが、周知の事実として扱われていた。

 現在法人化を目指して動いているそうだ。

 何を隠そう……父さんもそこに参加していた。

 そこでは木工師の副棟梁だとか。

 父さん……実はすごかったんだ……


 そして、美鈴に今現在僕に起こっていることを説明した。

 ボーナスポイントの総獲得数が、200ポイント毎にボーナスポイントが減少していくという現象を。

 おそらく20レベルを超えてきている人はいると思う。

 しかしそれはほとんどが自衛官や警察官なのに限られているだろう。

 つまり、外にはまだ発表されることはないかもしれない。

 僕は美鈴に、事の詳細を記録した手紙を一ノ瀬さんに届けてくれるよう頼んだ。

 そして、僕はまたダンジョンに潜ることにした。

 今のままでは、まだまだ力不足だと思ったからだ。



 

 食料と調味料の買い出しの為街中をぶらつくと、以前とは違う光景が目についた。

 鍛冶屋や道具屋などの店が増えていた。

 父さん同様に、どこかに所属していたり、個人だったりいろいろだった。


 僕はお目当ての食料などを買い足していく。

 そろそろ装備も心もとなくなってきた。

 できれば新調したいけれども、食料買い足しで元手が不足気味だった。

 さすがに装備品を父さんに出してもらうわけにもいかない……


 一度ちゃんと金を稼いで装備を新調しようと心に誓ったのだった。


 準備が終わり、そろそろ食糧系ダンジョンへ戻ろうと思った時だった。

 懐かしい声が聞こえてきた。

 いつぶりだろうか……

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