032 余計なお世話

 谷浦たちが去ってから、改めてスキルについて考えていた。


 しかし、いくら考えても結論が出なかった。

 やはりスキルについても、一度一ノ瀬さんに相談してアドバイスをもらった方がいいかもしれない。

 このまま考え続けても、結論が出ずに終わりそうだから。


 そうこうしていると、約束の時間が近づいてきた。

 僕は指示された通り、受付の自衛官にブリーフィングルームについての確認を行った。

 指定された部屋番号は、〝E-102〟とのことだった。

 ちなみに部屋数は結構多かったりする。

 建物正面から見て左からA~Eまでの縦割りと、奥行きの00~04まで横割りで、1階に25部屋。

 それが5階まであるから、ある意味すごい。

 僕が指示されたのはE-102なので1階にある右手奥の部屋になる。


 部屋に着くと、すでに一ノ瀬さんがくつろいでいた。

 いつもの任務中の一ノ瀬さんと違い、少しゆるりとした印象だった。


「すいません。遅れてしまったようで。」

「問題ありませんよ。私も先ほど来たばかりですから。時間もないのでさっそく話をしましょう。相談というのはなんでしょか?」

「はい、2点ほどありまして。一つは僕自身のスキル・レベルについてです。もう一つは、この前お世話になったカイリさんたちについてです。」


 一ノ瀬さんに、僕の現状のスキル構成とレベル・ステータス計画の説明をした。

 一ノ瀬さんは少し思案すると、おおむねその通りでいいのでは?と返してきた。

 ただし、一つ問題もあるそうで、探索者ランクの上昇はレベル制限が設けられており、レベルは上昇する事が大前提となっている。

 つまり、減少するということは想定外だった。

 なので、探索者ランクを上げた後、基準以下のレベルになった際に問題が発生する可能性があるそうだ。

 なんでも、ダンジョンへの探索依頼等があと一か月くらいで始まるらしく、上位ランク者に優先的に割り当てられるとのこと。

 今はまだ低ランクなので問題はないけど、もし上位ランクになってからレベル1にまで下がったら……

 最悪、ミスマッチな依頼がやってくる可能性もあるそうだ。

 言われてみればその通りで、依頼失敗ならまだしも命を落とす危険性すらある。

 一応は拒否権もあるそうだが、立て続けに拒否をするとバツとしてランクダウンになるらしい。

 つまり僕の場合、ランクを上げるなら基準以下のレベルにならないように気を付けないといけないらしい。

 ものすごく面倒なことになってきた。

 結論としては、今はランクアップはせずに今取れるスキルを取って、スキルレベルを上げることを優先することにした。


 次にカイリ達の事だ。

 彼女たちは僕とパーティーを組みたいといってくれてはいるが、このスキルのせいでそれは難しくなってしまう。

 それに、僕のランクが上がらないと彼女たちは上位ダンジョンへ行けず、レベル上げなどが行えないのだ。

 僕に付き合って探索をすることは、彼女たちにとってデメリットでしかない。

 これについても一ノ瀬さんは同意していた。

 そして、彼女たちにあうベスト構成を相談したら、おおむね僕が考えた通りの内容になった。

 やはり、現在は魔法重視の構成になっているため、物理系の構成が必須になってくるそうだ。

 第5層は属性スライムが多く、その属性の魔法耐性がものすごく高いのだそうだ。

 自衛隊は銃火器をメインにしているため、比較的容易に属性スライムを駆逐できているそうだ。

 一ノ瀬さんの知り合いで、彼女たちに合いそうな探索者などがいれば教えてほしいと伝えると、了承を得られたがあまりいい顔はしていなかった。

 おそらく彼女たちの了承を得られないだろうと。

 確かに、いきなり紹介して『さあ組みましょう』は無理があるかもしれない。

 とりあえず、女性限定で声をかけてくれるとのことだったので、少し待ってみることにした。

 これについては、僕の完全なるお節介でしかない。

 彼女たちには死んでほしくない……それが僕の純粋な思いだ。


 一ノ瀬さんと世間話を交えていろいろ情報交換を行ったが、基本的には僕の考えで間違っていないと言われた。

 そしてやはりここでも念を押すように情報は伏せてほしいとの事だった。

 それから一ノ瀬さんは少しの休憩の後、またダンジョンの哨戒に当たるそうなので、ブリーフィングルームで別れた。

 僕は少し居残りをして、さっそくスキルを習得することにした。


 「スキルクリエイター起動。」


『スキル【スキルクリエイターレベル1】を使用しますか?』


 もちろんYESだ。


『作成可能スキルを表示します。』


 あれ?前見た時より内容が増えてる?

 理由は全くわからないけど……


強化系

≪パッシブスキル≫

属性耐性     :各種四属性への耐性。レベル×2% レベル:7


 なんか第5層におあつらえ向きなスキルが来た気がする。

 しかもレベル7だから1に戻ってしまうか……

 でも、4回繰り返して、レベル上げて……

 気が遠くなるな……

 でもやるしかないかな。


 他にも各種耐性がレベル2で取得。

 強化系の打撃・衝撃が1レベルか……

 あとは魔法がレベル5。


 やれることはいっぱいありそうだ。

 早いこと上げまくってヒモ生活から脱出しよう。


 それにしても、どれから手を付けるべきか……

 それよりもだ、問題としてあるのは時間が限られるってことか。

 もういっそのことダンジョン生活するのも一つかもしれないな。

 インベントリがあれば物資の持ち込みも可能だろうし、やろうと思えばできなくもない。

 階段は今のところ安全地帯だから、休息についても問題ないかもしれない。

 食料の調達は……モンスター食?とりあえずフォレストボアは食べれるからできなくもないかな?


 なら、食料の事を考えると食材系のダンジョンがベストなのか?

 でも、まだ入ったことのない場所はリスクが大きい。

 ここのダンジョンはだいぶわかってきたから、安全マージンを取りやすい。


 うん、考えれば考えるほど深みにはまっていく。

 どうしたものかな。

 とりあえず今日はここのダンジョンでスキル取得とレベル上げを繰り返すとしようかな。

 あとは、美鈴に食糧系ダンジョについて聞いてみて判断しよう。


 よし、まずは攻撃手段を増やそう。

 特にカイリがやっていた足止めはソロで潜ってるときはかなり有効に見えた。

 なのでまずは魔法系基礎魔法『土属性+』が無難かもしれない。

 これでレベルは8→3になる。

 残り2レベルを使って強化系≪アクティブ≫スキル『部位強化』を取得しよう。

 内容的には任意の体の部位を強化するスキルらしいので、一瞬だけ腕力を上げるとか脚力を上げるとかに使えそうだ。


 というわけでさっそく取得をしてみた。


ーーーーーーーーーー


基本情報


 氏名  :中村なかむら 剣斗けんと

 年齢  :35歳

 職業  :探索者G

 称号  :駆け出し


ステータス


レベル :1

 EXP :  0/  2

 HP  :100/100

 SP  : 10/ 10

 体力  :100(+5)

 力   : 70(+1)

 知力  : 25

 精神力 : 20

 魅力  :  5

 幸運  : 20


 任意ステータス振り分けポイント残:0


スキル

 

 共通  :世界共通言語 レベル無し

      インベントリ レベル1

 

 ユニーク:スキルクリエイター レベル1

      スキルアップグレード レベル1


 武器術 :剣 レベル1

      盾 レベル1

     

 武術系 :剣術 レベル1


 強化系 :身体強化 レベル1

      部位強化(NEW) レベル1

      切断 レベル3

      命中率補正 レベル1

      回避速度補正 レベル1


 魔法系 :土属性+(NEW) レベル1


ーーーーーーーーーー


 一気に体が重くなったのを感じた。

 数値的にはさほど変わりはないんだけど、ステータス1の重みがこれなんだと思う。

 とりあえず、ここから新たなスタートだと認識して強くなろう。

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