第3話 動画ここ使お

 休み時間だしさぁて何しよっかな。

 小森はサボりでいないから、昼は別の友達と食べることになる。

 ちなみに、実は私って友達あんま多くない。学校ではちょっとした有名人だから、遠目で見られたり、逆にガツガツ近づいてくるファンみたいなのがいたりで、なんつーか、ちゃんとした友達みたいなのが少ない。

 まぁいないわけじゃないけどねん♡


朱鷺ときぃー、一緒に飯くおー」

「あぁ」


 座っていたその子が返事をしてから立ち上がる。

 身長は私や小森より少し小さくて、前髪長めストレート(たまに巻き)の私と違って、朱鷺はいつも高い位置でポニテをしている。髪型にこだわりがないわけではなく、動きやすいかららしい。休日はオシャレしてるからギャップ萌え。


「小森はとうとう来なかったな。サボりか?」

「じゃね? 朝『散歩中』っつって写真投稿してたし」

「くそ、今日は一緒に神社巡りするって約束してたのに。ふざけやがって」


 これが良い味出したんだよなぁ。

 朱鷺は、というか私や小森もだけど、みんな口が悪い。さっきのは流石にネタだけど、ブチギレしたらドン引きワードがポンポン出てくる。


「てか神社巡りて。渋っ」

「お前らがキャラグッズ買って推しキャラに貢いでんのと同じだ。賽銭で自分に課金してる」

「趣旨キモ」


 雰囲気とか目当てで行くんじゃないの? 少なくとも賽銭に自己投資するような目的の人はいないだろ。

 私はコンビニパン、朱鷺は弁当を食い終えて、それでもまだ時間はある。


「あ、そだ。今日さ、動画撮る予定だったんだけど、朱鷺も一緒に撮ろ」

「私もか? 誰も求めてないだろ」

「いや私のフォロワー、コモトキのファンも少なからずいるからね。自分のアカウントでも投稿しなって」

「たまにしてるよ。てかコモトキやめろ」


 本当にたまにじゃん。フォローしてんのに月一頻度でしか流れてこないよ朱鷺の投稿。しかも私か小森関連だし。

 ……え、お前も私のこと好きすぎなん?


「普通に話してオモロいとこだけ使うから気にすんなって、恥ずかしがらずに撮ろうぜぃ」

「気が重いな……言葉遣い大丈夫か?」

「編集するから大丈夫よ。てか平気っしょ、どうせ元ヤンバレてるって」

「だからちげーって」


 筆箱にスマホを立てかけて、内カメで画角を確認。後ろは壁だから誰かが通り過ぎて映ることもない。ビジュよし、写りよし、照明も妥協でよし。準備バチグ。

 朱鷺に合図してから撮影開始。


「てか、おすすめアニメ見た?」

「あー……見てない」

「なんで!? さっさと見ろよ!」

「だってイケメンしか出てこない完全女向けだろ? アレ系嫌いなんだよ、なんか面食いバカ女みたい」

「お前今メスオタクの大半を敵に回したぞ」

「メスオタクも大概だろ」


 イケメンしか出てこないから嫌いって……はっ! そういうのを全部BLだと思ってる腐ってない女の妄想じゃねーか! そっちのがドン引きだわ!

 と言いたいけど。小森と違って、残念ながら朱鷺はオタくない。話題になったら見る程度で、だから偏見もそれなりにある。

 この手の話だと毎回、厄介オタ代表小森と偏見非オタ代表朱鷺が言い争いになる。どっちも頑固だから譲らんし。

 私? そりゃ正論パンチで優勢になってる方の応援してるよ。意外と朱鷺のがマトモなこと言いがち。


「西尾だって、どうせ私が勧めた神社行ってないだろ」

「行ったわ! 片道一時間1500円かけて一人で行ったったわ! 朱印貰ってきたわ!」

「それはもう私が完全に悪いわ。今週中にアニメ見ておくよ。後、ちゃんと御朱印って言え」

「わかればいいんだよ」

「ちなみに、私が教えた神社はお前の家から徒歩五分圏内にあるけどな」

「…………」


 すぅーっ……あ、いっけね! 教えてもらったとこじゃない神社行ってたわ! 間違えた間違えた……え、違うよ? 全然、言い返すために嘘ついたとか、そういうんじゃないよ? 私生まれてこの方一回だって嘘ついたことない。


「なぁ、これは私が完全に悪いよな? だって西尾は、私が教えた場所よりもよっぽど遠い神社に時間と金を使ってわざわざ行ってくれたんだもんな? あぁ?」


 喧嘩口調なってますやん。ばりばりキレてますやんか。


「ほんの冗談ですやんか〜。本気なわけありゃしませんて。ほんま冗談の通じない人なんやから、そゆとこ好きでっせ」

「舐めてんのかお前」


 何も言えずに睨まれて、何秒かしてから朱鷺が吹き出した。さっきのは耐えられなかったらしい。

 エセ関西弁の破壊力マジやべー。


「どうよ、困った時の方言ボケ」

「わかったよ、わたしの負けだ」


 なんか、喧嘩して先に謝れる方が大人って文化おかしくない? これじゃ私がただ嘘ついてボケただけみたいじゃん。……あ、その通りじゃん。

 朱鷺は思い出してツボったらしくて、そしたらなんか私にも移って、何分か二人で笑いまくった。


「西尾、明日は何する?」

「ぶらりブイログ」

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