第2話 流行りの曲でレツダンシン
さて、と。今日も長くて楽しい学校が終わりましたよーっと。
高校二年も半分が終わって、九月も半ば。進路がどうとか考えないといけない時期……なのだが。
「ふざけるなぁーー!!! まだまだJKやらせろぉーー!!!」
「西尾うるさい」
いきなり叫んだのに、小森は言うほど驚いていない。この奇行に対するツッコミもない。クラスメイトはみんな「またか」みたいな目で見てくるのに。
なんか冷たくね?
「小森ぃ、遊ぼうよぉー」
「どこで?」
「そりゃいつもの二択でしょ」
学校でダベるか、流行ってるものを探してそこに行くか。田舎が流行りに追いつくのは遅いから、基本は前者だ。
「うぃー」
だが、目の前で眠そうにしている小森を見ると、なんだか一瞬で目が覚めるようなことをしたくなる。
ちなみに、好きな友達には嫌がらせしたいタイプです。
ということで、やってきたのは正門前。
「え、なんで止まるの?」
「今日はここで撮ろうかなって」
小森はよくわからない顔で私のことを見てる。……うそ、見惚れてる?
なんて思ってたけど、ちょっとずつ顔から表情が抜けていって、今では冷たい目で私を見ている。それもそれで悪くない。
すぐにでも校内に戻ってしまいそう、だーけーどー?
「撮ろ♡」
「……はいはい」
ノリの良さなら誰にも負けないのがこの女、マイベストフレンド小森なのだ。
というか、見た目に反してダウナーな話し方をしてるけど、こいつ私よりもダンス上手いし流行りにも敏感だからね。興味ないです風を装って、実は裏では努力してるタイプだから。
かわっ! おまっ……可愛いかよっ!
「どっちにする?」
正門の端っこで、二つのダンス動画を小森に見せる。一つはアイドルソングで、もう一つはアニソン。どっちも中々ハードだけど、小森は二つとも見てから言った。
「どっちもいける。前に一人で撮ったから」「え、それ投稿した? 私それ見てないよ」
「加工ブレやばくてお蔵入りなった」
「うわぁ〜」
現実はこんなもんだ。
というか、現実を見せていない。化粧もするから顔には自信があるけど、それでと加工がブレるのは大問題なのだ。
投稿するときに顔にモザイクを入れるのも一つの手だけど、小森がそれをやらないということは、ずっとブレて一度も顔を晒せない動画になったのだろう。
「どする? フルで顔隠す?」
「顔見切りで撮るのはど?」
「ありよりはべりのいまそかり」
「マジ頭バグるからやめろ」
小ボケにもちゃんとツッコミしてくれる。眠気は飛ばせたみたい。踊るのはアイドルの方で、やる方からすれば楽しくて可愛いけど撮ってるの見られるとなると……くっ……!
気にせずここからエンジン全開レチゴー!
「やっべミスった」
「西尾どんくさ」
「どうせ何回も練習してきたくせに」
「お互い様〜」
「はっ、JK舐めんなよ!」
「同じだっつの」
三十分近く撮影をして、ようやく綺麗に取れたのができた。何回も「もっかいやんね?」とか「つか逆光にしたくね?」とか言って撮り直しまくった。
その間の他生徒の目ときたら……ドン引きされたり苦笑いされたり、恥ずかしいったらなんの。グロいくらいのイタ曲なこともあって、まぁ顔は熱いよ。
「よぉし、一応こんな感じになったけど」
「見して見して」
「ほれ」
小森が隣に並んでから、動画を再生する。お尻フリフリ、腕シュッ、からの肩グワン、でピョンピョンピョン。イッタイ。
「見せパンよし、顔も出てない、ダンスはもち完璧。投稿していいよ」
「うぇーい」
ハイタッチのポーズで構えて、小森がしてくれるまで五秒くらい待ったけど、やっぱり最後にはしてくれる。
「西尾、明日は何する?」
「動画撮影」
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