第2話「お店」

木と街灯が交互に並んで設置されている街の道を歩く。ユウカの後を歩いて数分。路地裏に入る。あれ?こんな所通るの?ユウカが店らしき前で止まった。どうやらここがその行きつけの店らしい。

「着きました!」

するとユウカはニコニコで私の方を向いてくる。

「ここです。」

「…?ここが?」

私は店を見る。なんだ…。このボロボロ感は…。

「さぁ!行きますよ!」

ユウカがその店の扉を開ける。

私はその後について行く。

カラン。カラン。

明かりが眩しい…。中は綺麗だ。本当に綺麗だ。あの店の外観からは想像出来ない綺麗さだ。

「お!来たか!」

カウンターから声が聞こえた。少し強面な男性の人だ。ユウカはカウンターに近づき話し出す。

「来ましたよ!店長!」

どうやらこの強面の男性はこの店の店長らしい。

「お?今日は連れが居るらしいな。」

店長が私の方を見てくる。

「あ。そうなんですよ。実はナンパを助けていただき…。その御礼としてここのご飯を奢ろうと…。」

私のことを紹介してくれた。まじまじ見てくる店長…。店長は話し出す。

「それにしてもそのお嬢ちゃんに助けてもらったのかい?ユウカ…。お前本当に25か?その子お前より若く見えるぞ?」

からかいを入れる店長。

「いつもここ通る時されてなかったんで驚いて反応出来なかっただけですよ。」

「・・・。そうか。お前ならそう言うと思ったよ。最近ナンパ多いから気おつけろよ。それにしてもお前がナンパされるなんてその男見る目無いね。」

「はぁ!?」

「嘘嘘。店長ジョーク。」

すると2人はゲラゲラ笑う。全然笑えないぞ。そのジョーク。すると店長は少し私達の顔を見て話し出す。

「いつもので良いかい?」

「はい!お願いします!テーブルはどこでも?」

「あぁ!いいぞ!」

私は空いてるテーブルを見つけお互い反対の席に座る。

ユウカが席に座るとバックからペンとメモ帳を取り出す。

「…?本当に記者なんですね…。」

「だよ!なんなら名刺出すよ?」

咄嗟に名刺を出してきた。

「あ…。本当だ…。」

「でしょ!私をなんだと思ってたの!?」

「私に興味ある変な人。」

するとユウカが手を顎に起き考えている。

「変…。まぁ変ですね。」

一、二回首を傾げる。

「それは置いといて!まず!1つ目の質問良いですか!?」

「唐突ですね…。まぁどうぞ。」

するとユウカは質問をしてくる。

「あなたは本当に死神なんですか!?」

「・・・・。本当?」

「はい!何者か!あなたは私と自己紹介をした時に”死神”と言っていました。それが本当でどんな死神なのか聞きたい。」

「…。なるほど…。」

すると店長がこちらに近ずいてくる。

「お待たせー。」

すると店長がコーヒーと。…?花瓶!?

「はい。コーヒーと2個と…。百合の花持ってきましたぁ。」

「え?百合の花?」

ユウカは少し困惑していた。

「あぁ。色は様々。白、赤、オレンジ、黄色、黒。様々あるよ。花屋で買ってきた。」

「綺麗ですね。」

ユウカは説明を受け少し笑顔で言った。

「それは。ユウカさんに花瓶ごとやるよ。」

「ええ!いいんですか!?」

ユウカはびっくりしていた。

「毎度仕事して疲れるやろ。それを見て癒されて欲しいなぁって。これから料理持ってくるから、これ飲んで待っててね。」

「ありがとうございます!」

すると店長はキッチンへと戻って行った。

「さて…。」

ユウカは持ってきてくれたコーヒーを飲み私の方をむく。

「で!さっきの質問の続きを…!」

私は飲んでいたコーヒーを吹きかけた…。急にくるな…。まぁ話すか。私はテーブルにカップを起き話す。

「…。死神…。まぁ死神にはね。優しい死神と悪い死神が居るのね。」

「はいはい。」カキカキ…。

「え?本当に書いてるの?」

「まぁ記者なのでメモはしっかり取りますよ。」

「熱心なんだね。」

「それで優しい死神と悪い死神の提議ってのはなんですか?」

この人止まらないなぁ…。

「まぁ待って。」

私はコーヒーを1口飲み、カップを置き話だす。

「それは今起きてる話題の事件と深く関わってると思うからそれと一緒に…。なんだっけ…。その事件の名前…。」

死神は首をかしげ考える。

「え?”連続自殺事件”…?のことですか!?」

ユウカは目をキラキラさせてそう言った。

「そう!それ!その事件…。その悪い死神が裏で糸を引いている。」

「え?」(ちゃっかりと犯人が見つかったなぁ…。)

「その悪い死神を殺す為に私こと優しい死神がこの下界に舞い降りて来たのだ! 」

「おぉ!」

「けどねぇ…。理由がよく分からないのよねぇ…。」

「理由?」

「うん。そもそも人を殺すこと自体…。死神としては御法度。」

「人を殺すこと自体…。あ!何か死神にはルールが有るんですか!?」

「あるよぉ。大体3つ。あ…。メモとる?」

「はい!」

するとユウカはメモ帳とペンを持ちメモを始める。

「まず1つ目は、人を殺しては行けない。人が天命尽きた時その魂はあるべき所へ持っていく事。」

「はいはい。」

「2つ目は、人間との関わりを持っては行けない。」

するとユウカはメモを取る手が止ま理由私の方を向く。

「あれ?私と優しい死神さんは良いんですか?」

「良いよ。私は特別な許可は得てる。」

「そうなんですか!」

「そして3つ目は…!なんだっけ?」

がく!

ユウカはずっこけた…。すごいこけっぷりだ…。芸能人?

「何なんですか!?」

「忘れたわ…。すまん。」

私は謝る。

「まぁその3つの全てを犯してしまうとそいつは悪い死神って訳。」

「なるほど…。つまりあなたがあと2個罪を犯せば悪い死神と?」

「まぁ…。・・・!そんな訳ないやろ!からかいすぎや!」

「あはは…。すみません…。」

すると店長が机の方に近づいてくる。

「ガハハ!話終わったかい?出来たよ!ハンバーグ定食2個!オレンジジュース付き!さぁ食べな!」

「お!食べよう!お腹すいた!」

「頂きますか。」

私たちは少し遅めな夜ご飯を食べる。

1時間私達は少し談笑をしてお店を出る。

「また来なよォー!」

店長が帰りを見送ってくれた。店長から貰った百合の花を持っている。

少し店を出て数分。帰路。ユウカが話す。

「いやー。面白い話を聞けました。ありがとうございます。」

「良いよ。久しぶりに人と話せて嬉しかった。」

するとユウカが提案をしてくる。

「どうですか?死神さんって泊まる場所無いでしょ?私の家来ませんか?」

私は少し考える。

「…。良いかな?少し世話になってもいい?」

「喜んで!」

するとユウカは花瓶にある花を見て話し出す。

「…。死神さんは白の百合みたいに綺麗な心を持っていますね。」

「なんだ?急に?」

「私死んだら怖い思いするんじゃ無いかなって思ってたんですよ。けど…。あなたみたいな死神…。しかも優しい死神さんみたいな人が居るなら私は死んでも怖い思いをしなくてしなくてすみます。あなたみたいな人がいる一方、悪い死神も居る。応援してます!私もその力になりたいです!」

するとユウカは白の百合を見ながらそう言った。

「…。いいや。私は白色の百合なんて似合わないよ。」

「そうなんですか?」

「私には…。」

きゃーーー!

女性の悲鳴…。

「なんだよ!あれ!ビルの屋上に人が居るぞ!」

男性がそう声をあげる。

「まさか…あれってまさか…。ネットで有名なあの事件!?」

そこ声を皮切りに周りが騒ぎ出す。

携帯を開きカメラモードで動画を撮るもの。

やめろ!と騒ぎ止めようとするもの。

1、2分で沢山人が集まった。

私は気持ち動転していたユウカに話かける。

「どうするユウカ?あれは多分。」

すると私の声に気持ちが少し戻る、

「…。5回目の連続自殺事件…!取材してきます!」

ユウカはバックからカメラを取りその人混みに入ろうとする。

「あの…。私行きますね。」

「え?どこに?」

「あの子の所に。」

「え?」

私は目を疑う。

「え?えーーー!?なんで…!空を飛んでるんですか!?え?てか周りの人見えてない!?どうして!」

私が騒ぎ始めるが周りはそれを気にしない。

すると死神は少し考え…。クス…。と笑う。

「死神だから?かな?」

私は上昇する。…。久しぶりだな…。空飛ぶの。

「え?待って!」

私はユウカの声を無視しあの子の所に向かう。

あ…。ユリ持ったままだった…。

――――――――

「…。よっと。」

私は…。その自殺する人の近くにくる。私は話しかける。

「ねぇ。どうして自殺するの?」

するとそいつは私の質問に答える。

「…。あなたは死神?」

「え…?あ…。うん。優しい死神。」(見えるのかこいつ…。)

その子は外の夜の風景を見ていた。

「優しい死神…?まぁいいや…。」

するとその子は私のほうを振り返り・・・

「私さぁ…。今自殺したらどうなるの?」

泣いていた。

私はその子を見てびっくりした。

(顔に傷…、服でも隠しきれない所まで傷が…。それに…。時間がもうない…。)

頭の上には時間が書かれている。その時間とは人の寿命だ。刻々と時間はすぎていく。私は声に出さないように話す。

「さぁ。私たちの仕事は魂をあるべき所に返す…。それが仕事。あなたがどうなるかは分からない。けどあなたならいい所に行けるわよ。」

するとその子は察したのか…。

「あはは…。最後にあなたみたいな人と話せて嬉しかった。」

彼女は泣いていた。

私は近づき…。

「え?」

私はその子の涙を拭く。

「最後ぐらい泣かないでよ。」

「・・・・・!」

「私が…。見届けるよ…。」

私はその子の耳元に口を近ずけ話す。

「あなたの・・・・。」

(…!)

私はその子を押した。

(自分で自殺するより…。人に殺された方が…。少しは楽になれるかな…。)

ひゅーーーー…。どしゃ!

きゃーーーーーー!下にいた人達の悲鳴…。

するとその子の魂は身体から解放されたように空を踊る。私はその魂を抱え込む…。

「…。ごめんね…。」

私はそっと白いユリを置いた…。

―――――――

カシャ!カシャ!カシャ!…。人が落ちてきた…。あはは…。血が飛び交ってる…。なんでだろう?人が死んだから?ひとが死んだから?カシャ!カシャ!カシャ!

「ねぇ!ねぇ!ねぇ!」 カシャ!カシャ!

「・・・・・。」カシャ!カシャ!

「ねぇ!ねぇ!ねぇ!」カシャ!カシャ!

「はい!なんですか!?」

私は少し死神さんの声に反応した。

「カメラ…辞めたら?」

すると死神さんは私の腕を軽く叩く。

「…!すっすいません!」

私はどうやらカメラのボタンをずっと押してたらしい…。私はカメラのとった写真を見た。

「なにこれ…。」

血塗れの写真しかないじゃん…。

「私ね。2分前からあなたの事を呼んでたのよ。」

「え?本当ですか?」

「ええ。ずっとカメラのボタン押してたよ…。ユウカさんって悪魔?」

「あはは…。私疲れてるんですかね?」

「まぁこの場は離れよう。周りも離れだした。帰ろうよ。わたしも疲れた。あなただってこんなの見たら疲れるに決まってる。それに多分またさらに大変な事になるよ…。それにこの事件…。ユウカさんは引いた方が良いよ。」

「いや!私はこの事件を追います!」

私はユウカさんの頭の上を見る…。・・・。イイカモ。

「はぁ…。なら…。最高の新聞書こうよ。私も付き合うからさ。」

そう言って私は赤とオレンジのユリを渡し笑みを浮かべた。












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