第4話 M、襲来

 朝、轟音と共に目覚めるDとS子。

 急いで外に出てみれば、クソでかい四足歩行の獣が村を破壊せんと暴れているではないか!


「S子!拙僧が彼奴の相手をする!君は村人と共に安全な場所に避難しなさい!」

「無茶よ!あれが『マグノリア』!『禅人ゼンジン』でないと倒せないわ!」

「だからといって、このまま指を咥えて見ているだけでは!」


 刹那、獣の尾による薙ぎ払いにより石壁に叩きつけられるD。


「D!……こうなってしまったら、もう!」


 S子は懐から木製の腕輪を取り出した。


「……へ、ん……っつ」


 腕輪を持つ手が震える。異世界人から受けた数々のはずかしめが蘇る。


「あ──」


 カランと、乾いた音と共に地に落ちる腕輪。その音に反応した獣がS子に牙を剥く!


「いやぁ……!」


 ガグゥ!S子の眼前で獣を押しとどめたのはDであった。そのかいなには鋭い牙が食い込み、黒い液体が滴り落ちている。


「む……痛みが薄いな……?ふむ、薄々気づいてはいたが拙僧の肉体は元の世界のモノではないのだな?S子よ」

「今!?そうよ!私達はロボットみたいな体に魂だけ呼び出されてる状態だけども!」

「ろぼっと?その言葉はよくわからぬな。他の言葉は自然と意味が理解できるのに」

「それはこの肉体にあらかじめそういう魔法が──そんなことより!」


 バキッ!とDから無理矢理牙を引き抜いた獣が追撃せんと爪で切りかかる!


「これを借りるぞS子、よいな?」

「──え?」

「ほう。手に取るだけで使い方がわかるのか。これも魔法なのだろうか。うむ、これなら!」


 Dは腕輪の穴にフウッと息を吹きかけた。途端現る4つの灯火。


『南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……』


 流れる念仏。


「変身!破ァァァァァ!!!」


 Dはその腕輪──『ゼン・リング』を、腕に嵌め込む!

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