第2話 E世界召喚
森を抜け小さな村にたどり着いたDとS子。村人達が大層困っていたので話を聞けば、山からの大きな落石により水門が塞がれてしまったため、このままでは作物が育たなくなってしまうとのことだった。
Dは
「私達がこの世界に呼ばれたのはね、元いた世界で特別な力を持っていたからよ」
「ふむ。確かに拙僧は他者と比べて腕力には多少自信があるが。S子もそうなのか?」
「いいえ、私は別に。ただ──」
S子が言いよどむ。
「誰しも言いたくないことの一つや二つあるだろう。拙僧に言う必要はないぞ」
「……ありがとう。そうね、知られたくないわ。貴方には」
「そうかそうか。では早く信頼してもらえるよう、拙僧も精進せねばな」
「……」
「あの村の者達の困りごとを、君に何の相談もなく受けたことが不満かな」
S子は一瞬目を見開き、すぐに顔を逸らす。
「そうね。わざわざ自分から目立つようなことをするなんて。信じられないわ」
「困っている人を助けるのは大切な仏の教えだからな。そうでなくとも、彼らの苦を見て見ぬふりなんて自分が納得できない」
「自分が?」
「ああ、彼らに手を差し伸べない自分を自分が許さない」
水門の前までたどり着く。10人がかりでも動かせなさそうな巨岩が水路に鎮座していた。
「破ァー!」
Dは始球式の第一投のような軽やかさで巨岩を放り投げた。巨岩は時速300kmで空に消えた。
水門から水がドバドバ流れ出す。
「これでよし。さあS子、村人に報告しよう」
「村人が城の連中に私達のことを密告しているかもしれないわよ。本当に戻るの?」
「城?追手は城の者なのか?」
「そう。城の王様が怪物を倒すために、身勝手に私達を呼びだして道具として使おうとしているの」
「怪物?」
Dの顔つきが変わる。S子はハッとして「言わなければよかった」と悪態をついた。
「……この世界には『マグノリア』と呼ばれる怪物が出るの。私達はソイツらを倒すために呼ばれたらしいわよ」
苦々しくそう吐き捨てた。
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