2-2
飲み物の話をして、しばらく。
突然、バーの中にあった古いテレビがついた。
全員がそれに注目する。
ザザザッ、という音が消えると、黒いスーツ姿の男が画面に映る。ただし、首から上……顔は見えない状態だ。
『EPIC社へようこそ。私が人事を担当する……って、堅苦しいなぁ~』
「え?」
面接官は背もたれに寄りかかると、足を組んだ。
『オレのことは【ミスターEPIC】とでも呼んでもらおっか? その方が面白そうだしね!』
「これって社長……?」
「いや、社長ではないと思う。EPIC社の社長は、70歳のアメリカ人だ。手を見ればわかる。この人はもっと若い」
りえかさんの質問に、俺が答える。社長ではない、ということは、面接官は人事部の人間か……? それとも別の役職か何か? それにしてもテンション高いな。まぁ、あんなイカれた筆記試験を作った会社だ。まともな会社員がいるとも思えない。
『オレがゆるゆるだからって、甘く見ちゃダメだかんね~? 一応、面接なんだから。と、いう訳で! まずは軽~く志望動機を聞こうかな? ほらほら、面接らしいっしょ?』
「志望動機……」
俺はごくんとつばを飲む。
さて、どんなことを話そうか?
ともかくこの人数の中で、確実に高評価を得るとしたら……。
俺は真っ先に手を挙げる。
するとミスターEPICは俺に気づいたようだ。
どうやらバーの隅にカメラがついていて、こちらの様子がリアルタイムで向こうに伝わっているらしい。
『んじゃ、松山クンから行ってみよ~!』
「はい!」
俺はイスにしっかりと座りなおすと、隅のカメラを見つめた。
「私が御社を志望した理由は……」
『突然ウチから手紙が来て~、足代10万!? ひゃっほー! 行く行く! 落ちても金がもらえるし~って話じゃないの?』
くそっ、その通りだよ……。俺はそれについて、素直に認めた。
「ええ、そうです。ですが、そのあと御社について調べて、改めて自分から面接に参加させてもらいたいと思ったんです」
『へぇ~、意外! ウチのどんなところがいいと思ったの?』
「クロスワードの筆記試験……御社から手紙が来た時、自分が選ばれたことについて、とても興奮しました。自分には他人にはない『可能性』がある。そう信じています!」
『ふうん、可能性ねぇ~』
「それと同時に、最高の快感というか……面白さを感じたんですよね」
『面白さ?』
俺はふと、感じていたことを話していた。
「EPICはグローバルワンダーランドの運営会社……だから当然、面白さは追及していかないといけないんだとは思うんですけど、やっぱり自分が面白くないとダメっていうか。まさかクロスワードの景品が面接だなんて思わないじゃないですか。そういう部分の遊びっていうのかな。俺、普通のことよりも刺激的なことが好きみたいなんス」
『松山クンの貴重な言葉、めっちゃ嬉しいよ。だよね。刺激的じゃなきゃ面白くない。オレと同じ考えだ』
……同じ考えってことは、もしかしてこれが正解だったのか?
自然と『私』から『俺』って一人称も変わっちゃったし、熱がこもりすぎてっちまったかと思ったけど。
『それじゃ、他の人はどーかなぁ?』
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