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しばらくすると御堂が冷たく言った。
「貴様とシナガワが先ほどの放送を流したのか。フン、その成果は褒めてやろう。僕もいささか困っていたところではあったからな」
「そうね。仲間を探すとなると、1日では無理でしょう」
瑞希さんも同意する。
「でも、これからどうすれば……?」
りえかさんが困ったような顔を見せる。
だが、そんな心配は無用だった。
「……面接を受けにいらっしゃった皆様ですね?」
「!!」
ちょうどいいタイミングで、ドラゴンキャッスルのスタッフ衣装を着こんでいる男が現れた。
こいつはきっと、EPIC面接の関係者だろう。
「こちらへどうぞ。面接室にお連れします」
俺はこいつを……信じていいのか? 急に不安が頭をかすめる。
「どうしたの? 松山くん」
シナガワが不思議そうに聞く。
「……ついてこないようでしたら、こちらで全員辞退するという形になりますが」
「ちょっと! あたしたちまで辞退ってことになっちゃうの!?」
ミホさんが大声をあげるが、スタッフは首を縦に振った。
「あなた方を集めたのは彼です。弊社に必要なのは、『夢と希望と幻』――。『現実』に気づいてしまった方々には、こちらからご辞退願います」
「………」
言ってる意味がよくわからない。
ボーッとしていると、ガコンという大きな音と叫び声が聞こえた。
「きゃあっ!!」
「うわあぁっ!!」
「なんだ、これは!!」
「……『リーダー』を恨むことです。あなたたちのつらい人生に、夢を与えなかった松山くんをね。あと10秒で底板が落ちます。9、8、7……」
首には太い縄が巻き付いている。これが0になったら俺たちはきっと……。
「いやああっ! 死にたくない~!!」
「やめてくれ! なんでもするっ!!」
「わ、わかった! ついて行く!! ここまで来たら、行くしかねーだろ!」
俺がそういうと、首の縄が緩む。それを外すと、みんな大きなため息をついた。
「なにすんのよ、あんた! あんたのせいで死にかけたじゃない!」
ミホさんが俺に罵声をあげる。他の面子も俺をしらっとした眼差しで見つめる中、川勢田さんだけは違った。
「転職のベストチャンスを逃すわけにはいかねえ! それに命がかかっても……な」
川勢田さんは乗り気だ。その言葉に、次々と同意の声があがる。
「私も……まだ死にたくはありませんし」
「ボクも行くよ! 命云々はともかく、元はと言えば面白そうだから来たんだしね☆」
りえかさんとキャットも強くうなずく。
というか、このまま進まないと殺される……。だったら行くしかない。
「フン、元から面接を受けに来たのだ。当然行くに決まっている」
「そうですね」
御堂・瑞希さんのメガネコンビも強くうなずく。
「足代、もらってないし、死にかけたんだから、お金をもらうまで帰れないわよ!」
「俺も帰れねぇよ! はは!」
爪を気にしているミホさんに、適当な東さん。
「どうやら決まったようですね。ご案内いたします」
男は俺たちをドラゴンキャッスルの中にある、秘密のエレベーターへ乗せる。柵の隙間からは、ドラゴンキャッスル内のアトラクションに目を輝かせているゲストが見える。
夢と希望と幻の国から、現実の世界へ――。
俺はぐっと唇をかみしめると、エレベーターとともに地下へと落ちた。
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