パンドラとハートの冒険者登録
美味しいピザを食べた後に靴屋に行き、彼女達の靴を買ってあげた。
最初パンドラとハートは安い靴を選んできたが、冒険者になったら安かろう悪かろうは駄目だと言って冒険者向きの結構頑丈なブーツと普段使うための革靴の2足と靴下を数足ずつ購入してあげた。
ちなみに俺と前田先生も普段履く靴を持っていなかったのでこの場で購入し、紙袋に包んでもらって持ち歩く。
そして冒険者ギルドに行き、時間的に空いている時間だった為に受付の職員に連れの冒険者登録とステータスの測定をお願いすると特に聞かれる事無く、受付の人に冒険者ギルドの五箇条を言われて、守ることを誓わされ、ステータスの測定に入る。
「カネダさんとマエダさんも測定しますか?」
と職員に言われたが、まだ前回の計測から2週間も経ってないので大丈夫ですと断った。
「ではこちらがステータスの書かれた冒険者のカードと口座のカードになります。どちらも無くさないように気をつけてください」
と言われて2人は頷いていた。
あとパンドラとハートの2人は逸れたメンバーの名前を言って冒険者ギルドに登録した人は居ますかと聞いていたが、誰も登録されていないと言われて少しショックを受けていた。
逃げた5人は町に着いていないとおかしいほど時間が経過していたので、話から聞くにバラバラに逃げた先でゴブリンやモンスター、野生動物にやられてしまったのかもしれない。
街道を一度外れれば深い森だったので方向感覚もわからずに迷ってしまう事もあるだろう……。
パンドラとハートは私達は捕まって運は悪かったが、俺に出会うことができ、その点は運が良かったと言っている。
ちなみに2人のステータスを見せてもらったが
【名前】パンドラ·モーリスビレッジ
【年齢】0歳
【性別】女
【種族】ドラゴニュート
【状態】健康/従属
【レベル】1
【ステータス】
·体力 250
·力 250
·防御 250
·器用さ 12
·素早さ 9
·魔力 250
·精神力 15
·幸運 52
【名前】ハート·モーリスビレッジ
【年齢】0歳
【性別】女
【種族】ドラゴニュート
【状態】健康/従属
【レベル】1
【ステータス】
·体力 250
·力 250
·防御 250
·器用さ 15
·素早さ 8
·魔力 250
·精神力 16
·幸運 43
とだいたいルシア師匠が予想していたステータスに近しい数値になっていた。
体力、力、防御、魔力はだいたいレベルアップする前の俺達ドラゴンのステータスの最低値に固定されているっぽい?
それでも普通の人に比べたらべらぼうに強いらしい。
100を超えていれば凄いと言われる世界なので250は普通の人族の枠組みからは外れているらしい。
そのまま2人は冒険者ギルドの機能や依頼の受注のやり方、冒険者ギルドで技能を学びたい場合の予約のやり方等を教わって解放された。
「わぁ! これで私達も冒険者かぁ!」
「カネダ様! 私達頑張ります!」
むふー! とハートが鼻を膨らませながら宣言する。
とは言え体や精神的に厳しい事の連続だったので、当分は前田先生にも言って精神の上がる米を食べる様に言った。
これは他のメンバーにも許可を取ってある。
あとルシア師匠の授業以外は当分は冒険者ギルドで基礎技能を学ぶように伝えた。
俺達は元の世界で基礎学力はあったが、パンドラとハートには学力が全くない状態だ。
ルシア師匠にはここで別れて、寮に戻ってからパンドラとハートにお小遣いとして1万Gを渡した。
「とりあえず俺に雇われていると言う状態で冒険者ギルドで色々な授業を受けて冒険者の技能と常識を身に着けてもらう。1万Gはお給料だ。それで冒険者としての道具や日用品、洋服なんかを揃えて欲しい。武器や防具を注文するときは値段がすると思うから追加で出すから俺も一緒に行く。とりあえず2人は色々学んでよく食べろ」
と伝えた。
俺は前田先生と風呂に入りながら2人のステータスについて話し、精神の数値が常人が50前後なのに15くらいしか無かった事を話題に出す。
「2人とも一度発狂しているので精神が著しく下がってしまい、米を食べて精神が回復したと考えるのが自然ですかね」
「金田君の考察であっていると思いますよ。ただそうなると他のステータスも鍛錬をサボったり老化や怪我によって減少するのかもしれませんね」
「なるほど……なら鍛えておいて損は無さそうですね」
「しかし何とかなって良かった……金田君は2人を結局奴隷にするのですか?」
「うーんどうなのでしょう。2人が落ち着いてからも奴隷になることを望むのでしたら考えますが」
「一度日本の常識は捨ててしまった方が良いかもしれませんね。教科書などでは奴隷制は悪だと伝えられますが、それは奴隷では購買意欲や消費者の拡充に繋がらないと言う資本主義的側面がありますからね。古代ローマの様に繁栄しているのであれば労働力としての奴隷が必要なのも分かりますし」
「意外です……前田先生は奴隷に対して否定をするかと思っていましたが」
「この世界は私達が居た日本よりも命の価値が低い。奴隷として職を得るという選択肢もあるというのに気が付きましてね。私も奴隷がどんな物なのか奴隷商館に行って説明を聞いてきたんですよ……そしたら思ったよりも派遣社員感覚で奴隷になる人も居てビックリしました」
「そんな軽いんですね……俺も冬を越す為に奴隷になる人が居るというのは聞きましたが」
「だから奴隷が悪とは言えないのですよ金田君……その国にはその国の法律がある。奴隷でも児童労働の様な事をさせているところもあればアルバイトや派遣社員の代わりの様な扱いもある……実に政治というのは難しい」
前田先生は天井を見ながらそう言う。
色々と深い事を考えて発言しているように思う。
それを俺は軽い気持ちで返答することはできなかった。
「……よく考えます」
そう言うしかできなかった。
寝るまでは自室に戻ってパンドラとハートと一緒に柔軟をしていく。
午前中の確認で分かっていたが筋肉がガチガチだ。
俺は柔軟と同時にマッサージしてやる。
最初は畏れ多いと恐縮していたが、早く体を馴染ませるためだと説得し、ベッドの上に横にならせて揉みほぐしていく。
「あぁ~」
揉んでいくが筋肉が張り付いていて指が全然入っていかない。
とにかく肩周りの筋肉や腰周りをほぐせるだけほぐし、2人共にマッサージが終わる頃には眠ってしまった。
俺は前田先生の部屋に行って、ベッドで横になり眠るのだった。
翌日、早めに起きて裏庭で筋トレや体操をしたあとにまとまっていた洗濯物を浴場で洗っていき、窓際に干していった。
「「おはようございます!」」
「おう、おはよう!」
パンドラとハートも起きて朝食を取りに行き、朝食後、冒険者ギルドに移動して、2人は昨日予約した講義を受けに行く。
俺は畑の様子の確認にギータ爺さんの所に行ってみたり、前田先生が言っていた様な奴隷商館に顔を出してみるのだった。
奴隷商館では人が牢舎に入れられて展示されている……みたいなのではなく、見える位置は綺麗な建物であり、商館の従業員の方に知り合いが金に困っていて、俺の永久奴隷になる代わりに金を工面するみたいなのは可能なのかと聞くと可能ですと言われた。
「その場合魔法の契約により魂に契約者と奴隷本人を縛る事になり、契約者が破棄を宣言しない限り永続の奴隷契約が存在します。我々は契約の手数料を頂くという商売もしていますので、もし契約を行う場合は奴隷になる方も来て頂く必要があります」
と言われてしまった。
ちなみに奴隷の値段の相場が知りたいと聞くと戦争奴隷と犯罪奴隷、労働奴隷の違いを説明された。
戦争奴隷は他国と戦争をした捕虜で大抵は交戦国と捕虜交換や金銭でやり取りされて解放されるらしいが、末端の兵士とかや大勝して捕虜の買い取りが相手国ができないとなった場合市場に流れてくるらしい。
欠損とかもできる限り治され、労働力として人気で値段も高いし、中級市民以上の間で競りが行われるらしい。
最低金額でも5万Gから競りが開始されるらしく、女性でも健康的なら沢山子供が産める為に人気らしい。
次に犯罪奴隷は犯罪をして奴隷に落とされた人達で、いわゆる前科者達で、重罪の場合は死罪であるが、盗みやレイプ、違法植物の栽培、重罪者の親類等もこれに当たるらしい。
罪の重さで年数が決まり、その年数期間3食の食事代と契約年数が終わった時にある程度纏まった金を渡して人生をやり直す資金として年数×1000Gを渡す必要があるらしいが、購入時に先に最後に渡すお金を支払うのだとか。
ただ過酷な仕事に割り振られる為に5年とかの契約でもその前に死んでしまった場合は残りの年数分のお金が戻ってくるらしい。
例えば5年刑期で5年の奴隷契約をして3年目に亡くなったら残りの2年分の2000Gが返却される……みたいな仕組みらしい。
こういう奴隷はよほど容姿が優れている場合や技術を持っている人を除いて冒険者の壁役や荷物持ちとして雇われて使い潰されるらしい。
逆にこれで生き残れば冒険者として成り上がれる素質を持っているので、よほど馬鹿でもない限り冒険者としてやり直しが効くらしい。
最後に労働奴隷は借金の返済等を理由に労働契約を結ぶ奴隷で、相場より少し安い賃金になるが派遣社員の様な契約で奴隷という立場で働く事になる。
こちらは奴隷側が契約を指定することができ、命の関わる仕事はしませんとか、怪我をした時に見舞金が欲しいですとかの条件をつけることができるらしい。
従業員の方がご厚意で奴隷のカタログも見せてくれて、労働奴隷の場合、安宿と食費を奴隷商側が支払わなければならないので早く売れて欲しいのだとか……。
「ちなみに畑の管理とかだとどれくらいになりますかね」
「そうですねぇ……1日食費込みで25G、1年契約ですと仲介手数料込みで1万Gといったところでしょうか……畑持ちの方で奴隷を雇う方は多いですよ。我々も売り込んでいますよ」
「なるほど……今回は見送りますが、今後お世話になるかもしれません」
「ではその時お待ちしております」
奴隷商にそう言われ、俺は店を出るのであった。
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