ルシア師匠に報告

 翌朝、朝食を食べた後にパンドラとハートの2人と前田先生、俺の4人でルシア師匠が泊まっているエルフの宿り木と言う宿に向かい、ルシア師匠を訪ねた。


 ルシア師匠はちょうど魔法ギルドに向かう準備をしていた途中だったらしく、俺ができればあまり人に聞かれたくない話なのですがと言うと、ルシア師匠は魔法ギルドで教室を借りて話を聞こうと言ってくれた。


 ルシア師匠が魔法ギルドの受付に教室を1部屋借りたいと言うと空き教室の鍵を受付が渡し、場所を案内してくれた。


 パンドラとハートは村では見たことの無い綺麗な建物にキョロキョロと周囲を見ていた。


 教室に入り、鍵をかけると机を並べて面談の様な形式になる。


「それで話ってなんだい?」


「実は……」


 俺がゴブリンに犯されていた2人を生きながらえさせる為に眷属化と言うスキルを使った事を話す。


「うーん、確かに魔王が使うスキルだね……まぁ魔王未満の魔族とかも使うらしいけど……そうか、そのスキルを使えるのか……パンドラとハートと言ったね。カネダへの忠誠心以外に破壊衝動があったり人間を襲いたいと言う気持ちはあるかい?」


「いえ……そういうのは全くありません」


「この忠誠心も命の恩人だからと言う気持ちからなのかもしれないと思ってます」


「いや、眷属化をすると使用者に好意を抱くのは当たり前で、どんなに醜い化け物でも眷属化を受ければ嫌悪感は抱かない様になる。まぁ大抵の場合人の形を保つというのが稀だけどね……」


 ルシア師匠は一呼吸置いて


「まぁカネダとマエダが私に最初にこの話を持ってきたのは正解だよ。眷属化は魔王のスキルと認識されているから知られれば不味いことになる」


「あの、俺もスキルにバッチリ眷属化と言うスキルが書かれているのですが……」


「大丈夫、偽装と言うスキルがあるだろう? 前に出会った勇者がそれで魔力とかステータスを偽装して魔王を討伐したことがあってね……それを使えばスキルを1つ隠すことぐらいは容易いハズだ」


「あ、本当にある……1ポイントなので今取っておきます」


「まぁ計測されるのも冒険者ギルドくらいだし、普通偽装なんてスキルは取れる物じゃないから冒険者ギルドの計測機を偽装を見破るようなピンポイントの改造もしないだろう」


「あと、2人のステータスで状態が従属になっているらしいのですが」


「あぁ、それは奴隷の奴には必ず出るステータスだから気にしなくて良い」


 そう言われると俺はホッとした。


「まぁ仮説だがカネダやマエダ達は魔王にも勇者にもなれる素質があるのだろう。相反する2つの性質を持っているが、生活する分には悪い事では無い。要は使い方だ。私もそこら辺もしっかり教えるから安心しなさい」


「ありがとうございます」


「ちなみにだから私から見たパンドラとハートの魔力量は一流の魔法使い並みにはあるだろう。技量が伴えば化けると思うから2人も私の弟子として勉強を受けなさい」


「「は、はい!」」


「あとは恐らく他のステータスも体が変化したことで大幅に強化されていると思うから細かい力加減の調整を慣れる必要があるだろうが……」


「その辺はどうなの? パンドラ、ハート?」


「えっと力を込めるとコップの持ち手が取れたり、タオルが破けそうになりましたが……そこまで変わったかというと?」


「力は強くなった気がしますが調整はできます」


「ほう……モンスターに変えられた人間は力加減がわからずに破壊しまくる事が多いが、意識も理性も働いているようだからその辺の加減が出来るのかねぇ……とりあえず午前中はこの教室で2人のできることを探る。午後は冒険者ギルドで冒険者の登録をしてきな。あと靴も買っておきな」


「「はい!」」


 2人はいい返事をするとルシア師匠や前田先生からアドバイスを受けながら体の動かし方の違いを確認したりするのだった。






 教室の中ということで体操をしてみたり、柔軟をしたり、俺が出した硬さの違う石を握って砕けるかを確認したりすると、体操、柔軟はぎこちないどころかめっちゃ体が硬い事がわかった。


 前屈みになったら俺は床に手がべったりつくが、パンドラとハートは足首辺りで手が止まり、プルプルしているし、胡座(あぐら)や女の子座りも痛くて悲鳴を上げていた。


「肉体が変化して筋肉の密度が変わったから体から柔軟性がなくなってしまっているっぽいな……なぁカネダ、助ける時に過剰に回復魔法をかけたりしなかったか?」


「あ……痛がっていたのでしました」


「筋肉が回復した時に必要以上に回復し、筋肉痛になっていたのも回復して体が誤作動を起こしているんだ。まぁ回復魔法が慣れていない魔法使いがよく起こすミスだ。多分それもあって筋肉が硬直しているんだろう」


 とルシア師匠が結論づける。


 石を握る方は明らかに普通の人の握力では無く、俺達ドラゴンに近い力をしていた。


「パンドラ、腹に力を込めろ」


「はい?」


 ルシア師匠はパンドラの腹部を思いっきり殴るとドスっと音がしたが、パンドラはお腹がジンジンしますと言う程度でケロッとしていた。


「私はこれでも力のステータスが120あるが、それの全力パンチでダメージがほぼ無いとなると防御ステータスが100近くの差があることになる。多分防御や体力もドラゴンに近づいているんだろう」


 確かに簡単に人間の枠組みを超えられる眷属化はそりゃ恐れられるわなと俺は納得する。


 垂直跳びでも天井を触る事が出来たり、腕立て伏せや腹筋も100回程度なら多少疲れるけれど余力があると言う感じで13歳の少女の筋力量ではない。


「この体であればゴブリンに負けることも無いだろう。それこそ20体以上に囲まれても倒せると思うし、飛竜とも1人でいい勝負できそうだ。パンドラ、ハート……良かったな。冒険者として大成できると私からお墨付きを出そう。もちろんある程度鍛錬をしたらだけどな」


「「はい!」」


 あとは冒険者ギルドにどう説明するかである。


「同郷設定で良いだろう。魔法実験に巻き込まれた人がまだ居て探索したら見つかったとでも言えば納得すると思うぞ」


 とルシア師匠が提言してくれたのでそれで行く事にする。


 調べる事も終わり、ルシア師匠に色々やってもらったので昼食奢りますと言うと悪いねぇと言いながらルシア師匠は昼食を一緒に食べることなり、ルシア師匠オススメのピザのお店に連れて行ってくれた。


 ルシア師匠が注文したのはバロメッツマヨピザで、ちょっとだけ味が違うがほぼマヨネーズソースにバロメッツの肉(ほぼ蟹味)を全体にまぶしてチーズとキノコを盛り付けたピザとコーンたっぷりのコーンチーズピザ、それにフライドポテトとぶどうジュースを注文した。


「へい、おまちどう」


 店員に出された焼きたてアツアツのピザを皆食べていくが、ふとエルフって肉とか食べないベジタリアンじゃないっけと思い質問すると


「そりゃエルフの国だとそうだけど、外に出たエルフはそんな事気にしないよ。肉もモンスターも魚も食べるよ……ちなみにバロメッツはエルフの国だと野菜扱いだからね」


 以外な事実を知ったが、味は美味しく、バロメッツマヨは蟹マヨピザに近く、コーンチーズにもマヨが隠し味にかけられていて美味かった。


 ちなみに卵は鶏の卵だと長期保存が難しいのでマッシュルーム迷宮で採取可能でソレンス迷宮でも取れた卵の果実を使うと3ヶ月は酢の殺菌作用で常温保存ができるようになるらしい。


 まぁ焼いているので腹を下す心配はせずに食べるのであった。



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