クラスメイトへの報告
「とりあえず体洗おうか」
俺は体を軽く拭いたとはいえ髪とかが汚い事に変わりないパンドラとハートを浴場に連れていき、タオルをそれぞれに渡して髪や体を洗うように指示した。
彼女達は石鹸は村でもあったらしいが、シャンプーは無かったらしいので、初めてシャンプーを使い、髪を洗う。
蓄積した汚れからか泡立たずに俺が水魔法でお湯を生み出し何度も2人の髪の毛を洗い流していく。
何度も洗うと、くすんだ緑色だと思っていたパンドラの髪色は光沢のある緑色になり、ハートも焦げ茶から栗色へと髪色が変わる。
それに体を洗っていき、湯船で浸からせる。
村では、川で水浴びか井戸水とタオルで体を拭くくらいでお湯に浸かるという事はしなかったらしいので、2人共に気持ちよさそうにしていた。
風呂を終えて、先ほどのTシャツ、短パンに着替えさせて俺の部屋で待機、夕食の時にはまた呼ぶと伝え、俺は冒険者ギルドに今日の依頼の報告をしに行かないといけないと2人は伝えた。
2人も頷き、俺は宿から出掛けるのだった。
「お待ちしておりましたカネダさん!」
冒険者ギルドに行き、2階の部屋でリーフィアさんが対応してくれて、俺は取ってきたゴブリンの鼻と赤毛のクマの頭を置く。
「まぁ! レッドベアーも倒してくれたんですね! 行商人の被害は出てませんでしたが、コイツも行商人や村人にとっては天敵みたいなモンスターなんですよ……1体200Gで討伐報酬をだしていますのでお渡ししますね」
「ゴブリンは58体倒しましたのでそれを加味した値段を口座に入れておいてください」
「はい、依頼金の150Gとゴブリン1体5Gの58体で290G、それにレッドベアーの200Gも合わせると640Gになります!」
2人の宿代を考えると赤字か……まぁ仕方がないだろう。
報酬を口座に振り込んで貰い、俺は宿を出て、服屋に向かった。
2人の分の下着や服を買っておかないといけないからだ。
とりあえず短パンを4着に背中が紐になっているTシャツを10着、紐パンも10着購入し、そのままの足で雑貨屋でタオルを10枚とスリッパを3足購入する。
結構な出費だが仕方がない。
俺は宿に戻るとパンドラとハートの2人に買ってきた服や下着を与えた。
「翼や尻尾が生えているから適切な衣類がなかなか無くてな。今度オーダーメイドしてもらうからそれまではその服で我慢してくれ」
「いえ! 凄いありがたいことです!」
「見ず知らずの私達にカネダ様は親切にしていただいて感謝の気持ちしかありません!」
そのまま夕食までの間に前田先生を呼んで、2人に色々聞き取りをしていく。
前田先生は2人に色々質問するが、町に来て冒険者になる予定以外何か宛はあったのかを聞くと、前に町を出た先輩達を頼る以外は特に宛が無いことがわかった。
それに逃げ出した同郷の子達も無事にこの町に辿り着けたかわからないし、辿り着けていても気まずいという事やゴブリンに犯された自分達は普通の倫理観であれば娼婦で雇ってもらうにも断られる可能性が高い為に、正直俺に縋るしか無い状態なのだとか……。
俺的には自立してもらうのが良いのだが、こうなると最後まで面倒を見ないと駄目だと思ってしまう。
2人は眷属化した影響か、それとも命を助けた恩義からか、俺の奴隷になりたいと言っており、奴隷のタイプも3年働いたら解放されるのではなく終身タイプを選択したいと言っている。
流石に2人の人生をそう簡単に決めるのは良くないと俺は思うし、前田先生も急激な状況変化と吊り橋効果で感情的になってしまっているから、状況が落ち着くのと眷属化の影響や冒険者登録が終わるまでは奴隷云々の話は保留にしましょうという事になった。
そうこうしているとオタク達が帰ってきて、オタク、中園さん、宮永さんと前田先生を踏まえ、食堂にて5人で話し合いをすることにした。
とりあえず俺が流れを説明し、現在俺の部屋で2人を休ませていることを言うとオタク、中園さん、宮永さんは俺の判断は間違ってないと最初に言い、ただこれからどうするべきかの話をしなければならないと言われた。
宮永さんが
「まず金やんはどうしたいとかある? 下級市民になっているから宿を出てどこかの家を借りてそこに住むというのも手だと思うし、オタクみたいに奴隷を買って自分のチームを作りたいみたいな選択肢もあると思うんだよね」
と言われる。
確かにこの宿は住みやすくて好きであるが、他のクラスメイトにも迷惑がかかってしまう。
となると住居を借りてそこで生活すると言う手もある。
「種族を変えてしまった以上最後まで面倒をみるのは絶対だと思う……もうパンドラさんとハートさんだっけ? は、普通の人間として生活していくことは難しいんだから金田君が手綱は握っておかないと駄目。私も協力するから……」
中園さんは相手の容姿や種族が変わった以上最後まで面倒を見ないといけないだろうと言う。
「ただ自立できる部分は自立させないといけないでござるよ。2人が終身奴隷を望んでいるならなおさら拘束する中でどれだけ自由を与えられるかが問題になってくるでござる。給金をどうする、迷宮に潜らせる、冒険者ギルドや魔法ギルドで技術を覚えさせる……はたまた召使いの様に扱う……様々な選択肢があるでござるが、それを決めるのは金やんでござる。前田先生が言うようにとりあえずルシア殿に眷属化の事を確認するのは急務でござるが」
オタクは、クラスの皆に話すのも下手に隠すより話してしまった方が良いとし、ただ宿の人達に眷属化の話はできない事なので手分けして説明するしか無いと言われた。
俺はとりあえずルシア師匠に相談することと、冒険者ギルドで彼女達のステータスの確認や口座開設等を行い、できることを確認してから今後どうするかを決めると説明した。
場合によっては2人の育成を手伝ってもらうかもしれないとも言い、チームには大きな迷惑をかけるかもしれないと謝罪した。
「仕方がないでござるよ。命を助けるための行動でその後に面倒事になるとしても正しい選択を金やんはしたと思うでござるよ」
「「うんうん」」
「ありがとう皆……」
「まぁ金はまだまだ余裕があるでござるし、困れば迷宮に潜れば良いでござる。人材を育成したり運用したりする経験が得れると考えれば良いではござらんか」
「そ、それもそうだな……そう考えることにするわ……ありがとうオタク」
「困ったら直ぐに相談でござるよ」
とりあえず俺達は今宿に居るクラスメイトにパンドラとハートが一時的に住むことと眷属化というスキルを用いて助けた事を伝える。
和田さんなんかは
「金やんのそう言う正義感は良いと思うよ! でも抱え込み過ぎてパンクしたら駄目だからね」
とも言われた。
他の皆も別に気にしないよとか助け合いだろとかと優しい言葉をかけてくれた。
このクラスが皆いい奴で良かったと心の底から思う。
前の世界でももっとクラスの皆と交流をしておけば良かったとクラスメイトの本質を知って少し後悔したりもした。
とりあえずパンドラとハートの2人を数週間受け入れるというのは問題無く、こちらも普通に接すると皆から言われるのであった。
夕食になるとパンドラとハートは皆から色々質問される。
まるでクラスに転校生が来たみたいな感じで村の事とか冒険者になって何をやりたいかとか魔法を使いたいか等を話す。
パンドラとハートも俺とクラスの皆の関係を聞いたり、色々教えてくださいと人懐っこく聞いていた。
年が俺達より1回り小さい……パンドラとハート曰く13歳らしいのでそういうのを含めて皆妹分が出来たみたいに可愛がった。
パンドラとハートも辛いことがあったばかりなのに笑顔で対応しているし、皆も気を使ってゴブリンの事や逃げ出した仲間の事は聞かなかった。
夕食が終わり、俺は素振りをし、風呂に入って前田先生の横のベッドで眠るのだった。
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