賃貸選び 1
午後からは冒険者ギルドで料理の講習を2コマ受けて、パンドラとハートを拾って宿に戻った。
宿に戻ると今日も委員長達は帰ってこないのか……と少し心配になりながらも遅れているだけかなと思い、夕食を食べて素振りを行う。
パンドラとハートにも筋トレをやってもらい、風呂に入って柔軟をし、今日教わった事を教えてもらう。
今日はこの町の構造や冒険者ギルドの仕組みなど一般常識を最初のコマで教わり、残りは文字の読み書きの授業を受けたらしい。
俺達もスキルで異世界の言語を習得しているが頭が自動翻訳してくれているみたいな感じで、今では日本語よりも異世界語で皆とも会話しているからな……。
読み書きも頭に書くべき文字が浮かんでくる。
ちなみに文字の形態はアルファベットに近いし、数字は異世界でもまんまアラビア数字だし……もしかしたら俺達みたいな存在が文字や数字の概念を持ち込んだ可能性も無きにしもあらずといった感じか?
2人共に宿に帰る前に雑貨屋でノートと鉛筆と鉛筆削りを買っていたが、文字の練習をするためだったか……。
「明日も文字の練習か?」
「はい! 当分かかると思います」
「そうか……ただ同じ授業だと飽きがきてしまうから色々な授業を満遍なく受けた方が良いぞ。俺は明日2コマ目を周辺のモンスターについて勉強するが、一緒に受けるか?」
「「はい!」」
懐かれていると可愛くてしょうがないな。
俺は今日も2人にマッサージをしてあげてから前田先生の部屋に行き眠りにつくのだった。
翌朝、野村や委員長達が朝食の時間に戻ってきた。
「見慣れない奴が居るな」
「あー! 米食べてる!」
パンドラとハートの精神回復に塩おにぎりが出されていたのを見てマッシュルーム迷宮に行っていた面々がこの子が誰なのかとかでざわつきだすが、俺が経緯を言える範囲で話していき、発狂していたが米を食べれば精神の数値が上がり回復するために食べさせていると説明すると多少不満はあれど納得してくれた。
パンドラとハートには冒険者ギルドでの授業が1コマから入っているので先に行かせて、俺は野村と委員長の2人を部屋に呼んで詳しく事情を話すことにした。
眷属化の事を含めて話すと
「俺達が居ない間にそんな事になっていたのか……」
「確かに眷属化の話はあの場で話すことはできないな。でもクラスメイト以外を宿に泊めるのは僕は正直良い気分ではないですよ」
意外な事に委員長はクラスの和を最上位に置いているらしく、パンドラとハートを受け入れはするが、なるべく早く転居の方が良いと話す。
宿の人には同郷の仲間と話していることを引き合いに出し、認識に齟齬が出れば不審に繋がるので、パンドラとハートは宿の人と関係が発展する前に出ていった方が良いと説明する。
確かに委員長の言うことは最もだ。
ここの宿はあくまでクラスメイトが泊まる宿であって助けた人を泊まらせるのはクラスの皆からの善意で成り立っている。
その善意に長く甘えるのはいけない……となると今日の授業はキャンセルして借りられる家を探した方が良いな。
「すまんな委員長、なるべく早く俺と助けた2人は出ていく事にするから」
「あ、いや、僕も人を助けるのは別に良いと思うし面倒を見ている金田君には好意を持っているけど、それはそれ、これはこれだから……うーんうまく言えないな」
「そもそも金やんは新居選びの金は足りるのか?」
野村からご尤もな意見が出る。
「まだ俺下級市民だから借りることしか出来ないが、金は多分大丈夫だと思う。ただこういうのどこに相談すれば良いんだ? 不動産みたいなのあったっけ?」
委員長が
「とりあえず冒険者ギルドでベアトリーチェさん辺りに聞いてみれば仲介業者くらいは紹介してくれるんじゃないかな?」
と言ってくれた。
とりあえず状況説明は終わり、俺達が部屋から出ると中園さんと宮永さんが聞き耳をしていた。
「中園さん? 宮永さん?」
「ちょっと揉めそうな雰囲気だったから心配で……」
「そそ、何かあったら突入できるように! 私達も金やんの新居選び手伝うよ!」
野村と委員長……何ニヤニヤしながら俺の肩を叩いているんだ?
「とりあえず迷宮潜っていたメンバーには金田君の詳しい説明はしておくよ」
「金やんは新居選び頑張れよー」
と委員長と野村に言われた。
俺と中園さん、宮永さんの3人で冒険者ギルドに向かうのだった。
まだ忙しい時間だった為か人で混んでいたが、2階に上がるとベアトリーチェさんが対応してくれた。
「奴隷を雇うから宿では無く複数人で住める家を借りたいねぇ……確かに冒険者ギルドから仲介業者を紹介することはできるね。巨大魔石を売ってくれた事もあるから本来なら出さないけれど補助金も4割出そう。その分稼いでくれよ」
「ええ、なるべく冒険者ギルドに利益が出るように頑張りますし、奴隷の人もこの前俺が連れてきた竜人で」
「ああ、種族がドラゴニュートの2人だろ? ステータスも優秀だし、実績上げてくれればカネや他の皆さんと同じ様に特別冒険者に上げましょうか?」
「うーん、俺が頭張るのでそれは良いですわ。多分2人が依頼を受けるときは殆ど俺もセットで付いて行くので……ただ俺と居る時は奴隷の2人も2階で話しを聞くのを許してください」
「ええ、構いませんよ。今不動産屋の紹介状を書きますから、そこに行ってみてくださいね」
ベアトリーチェさんから紹介状を渡され、俺達は冒険者ギルドから出た。
「ところで中園さんと宮永さんも……もしかして住む感じ?」
「当然! チームメイトでしょ!」
「今の宿も良いけど金田君と一緒に過ごしたいんだけど……駄目かな」
「あー! 中ちゃんそれ告白じゃん! じゃあ私も! 金やん一緒に住も! 同棲同棲!」
「お、おう……いや、前々から好意があるのはわかっていたけど……良いのか? 俺の体今女だぞ」
「気にしないよ! 私達金やんの中身に惚れたんだから」
「うんうん!」
「そ、そうか……ありがとうな。じゃあ一緒に選ぼうか」
オタクに少し悪いなと思いながらも2人を連れて、商人エリアの紹介状に書かれた場所にやって来た。
「ここかな?」
「不動産屋って書いてあるしここでしょ」
「お、お邪魔します」
中に入るとカウンターにおじさんが2人座っていた。
「お、客か?」
「いらっしゃい不動産のアイアントへようこそ」
とりあえず案内されて席に座ると
「担当のカールです。よろしく」
「カネです。こっちはミヤとナカです」
「ミヤでーす!」
「な、ナカです」
「はい、よろしく……冒険者ギルドからの紹介で特別冒険者……失礼貯金額は2万Gは超えていますか? 規約でそれを超えている人じゃないと賃貸を貸すことが難しく……」
「はい、超えています。口座金額見ますか?」
「拝見できるならさせてください」
俺は口座カードを見せる。
「はい、ありがとうございます。問題ありません。高額物件でも貸すことができますが……ご希望等はありますか?」
「まず最低条件が6人以上(一応オタクも入れて)で生活することが出来る事と風呂とトイレ、キッチンがあることです」
「なるほど……立地の希望は?」
「冒険者ギルドに近ければ嬉しいですが、そこまで気にしません」
「庭はあったほうが良いですよね?」
「はい、洗濯物を干せて、多少の運動ができればなお良いです」
「他に希望はありますか? 例えば商業利用をするとか」
「いえ、それは無いですね……2人も何か希望はある?」
「あ、家具は自前で用意しますので備え付けが無くても大丈夫です」
「それだとこちらは結構お安くできますが、お客様の負担が大きくありませんか?」
「その分は稼ぎますので」
「なるほど……では条件に当てはまる物件を選んできますので少々お待ちを」
そう言われて待つことになるのだった。
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