トンカツ定食
夕方、中園さんとデートみたいになったが、ぶらぶら散歩を終わりにし、宿に戻ると豪炎寺と原村さんがせっせと料理を作っていた。
釜からはグツグツと湯気が立ちこめ、米が炊けるいい匂いがしてくる。
前田先生が
「できたら皆さん呼びますので部屋で待機していてください」
と言われた。
俺と中園さんもそれぞれの部屋に移動し、俺は軽く筋トレをしたり、昨日教わった風魔法や火魔法の練習のやり方を実戦し、片手は風魔法で紙を浮かせ、もう片方の手は五指全てに火を灯し、座禅を組んで乱れないように集中した。
そんな事をしてだいたい40分くらい待つと、ドアがノックされて食事ですよと前田先生から言われた。
俺も3階の連中に食事だぞと声をかけて回り、食堂に全員が集まった。
食堂には既にご飯が器によそわれ、汁物として豚汁、副菜にはそぼろ大根、ポテトサラダ、もやしとキノコの炒め物が並び、それに玉子焼きとメインにトンカツがお出しされた。
「トンカツはソースが合うのが作れなかったから塩とレモンで食べてくれ」
と言われたが十分である。
今日は宿の店主のアルベートさん、エイダさん、アルス、ニーナの4人も一緒に食べるらしくその分の料理が並んでいた。
俺達元日本人には木の棒を削って作られた箸が並び、アルベートさん達にはフォークとスプーンが渡されていた。
全員座席に座ったら
「いただきます」
「「「いただきます」」」
と先生の挨拶で異世界の言葉でいただきますと言い、食事を始めるのであった。
そぼろ大根から箸でつまむが、よく煮込まれていて簡単に箸で切ることが出来て、恐らく溜まり味噌を使ってやや醤油に近い味わいがする。
元の世界よりも味噌風味が強いがこれはこれで美味い。
豚汁を飲むと元の世界の味とほぼ一緒。
野菜と豚肉……多分トゲイノシシの肉であるが、肉がゴロゴロ入っている影響で肉のうま味がより凝縮されている感じが強く、大根、人参、長ネギ、玉ねぎに青色の唐辛子が入っていてピリ辛になっている。
里芋の代わりにジャガイモが入っているが、それがお腹に溜まる溜まる。
そしてメインのトンカツをガブリ……。
衣が効いていて外サクサク、中モチモチでご飯が進む進む。
玄米だから食感が悪いかなと思ったがそんな事は無く、白米みたいに噛めば噛むほど甘みが僅かに出てくる。
というか玄米なのに白米並みに美味い。
色も殻からして白色だったので、玄米になっても白色で、色的には白米と変わらない。
ただ前田先生は精米していないと言っていたのでこれは玄米なのであるが、もちっとしていて食べ応え抜群である。
塩とレモンを搾ったトンカツとの相性も素晴らしく、それに豚汁が口の中を整えてくれる。
クラスの中には静かに泣き出す奴もいる。
あっという間に山盛りだったご飯を完食し、全ての料理を完食した。
「ごちそうさまでした」
食べ終わった奴から食器を洗い流し拭いていく。
仕舞う場所はわからないので調理台のうえに重ねて置き、豪炎寺と原村さんに改めて感謝の気持ちを伝えて、食事会は終わるのだった。
ちなみにこの料理を食べたアルベートさんとエイダさんはトンカツと豚汁に感動し、豪炎寺と原村さんにレシピを教わっていた。
トンカツは油を多く使うので予算内に納めるのは難しいかもしれないが、豚汁は積極的にメニューとして出すと言ってくれるのであった。
アルスとニーナも食べたことが無い料理だったらしいが、とても美味しかったと大満足のご様子。
ちなみにだが、ご飯を食べてみた結果、ステータスの精神が4ポイントも伸びて、俺の精神のステータスは90に到達し、他の皆も多い人だと5ポイント、低い人でも3ポイント精神の値が伸びた事を確認し、やっぱり俺達が取ってきたこの米は精神力が食べると上がるアイテムであることが判明し、前田先生なんかは精神の値が97にまで上がっていたのだった。
大満足な食事会が終わり、夕食後の素振りをするが浮遊とホバー移動、風魔法で体から空気を噴出させることで機動を調整し、空中での回転斬りをゲームの様に出来ないか試したところ、1発でそれなりの動きをすることが出来た。
それを見ていた他の素振りメンバーは曲芸の様な動きになったので拍手をする。
空中で縦旋回の3回転の回転斬り……大きな敵とかには効きそうである。
「随分と大技を練習しているな」
「あ、五十嵐」
素振りをしていた五十嵐が話しかけてきた。
「でもまぁ魔法と強化された身体能力でゲームのキャラクターみたいな動きができるよな! そのうち斬撃とか飛ばせるようにならねぇかなぁ」
「風魔法を強化していけばできるようになるんじゃないか?」
「風魔法か……魔力を剣に乗っけて振り抜く感じかね」
「それが出来ないか俺も色々試してみるけど、五十嵐も色々試してくれよ。情報教え合おうぜ」
「そうだな……」
「ちなみに五十嵐は武器をどうするんだ?」
「ミスリルの武器でダブついていたカトラスって剣みたいなナタがあったろ? それを数本武器屋に持っていって両手剣に加工してもらっているんだ」
「あー、なるほどね……確かに倉庫の肥しになってるくらいだったら加工して使えるようにした方が良いわな」
「それに今の筋力なら大剣の方が俺には合っていると思ってな」
確かに五十嵐の振っている木剣は大剣の形をしていた。
これだけでも十分強そうではある。
「でも五十嵐、明日から長期の迷宮へのアタックだろ? そろそろ切り上げた方が良いんじゃねぇか?」
「そうだな……明日の準備もあるし、これで今日は切り上げるわ。金やんはどうするんだ? まだやるのか?」
「そうだな。もう少し素振りをするわ」
「おう、頑張れよ」
風呂に入った後に部屋に戻り柔軟をしていく。
「靴もスリッパみたいな家履きの履物が欲しいな……明日買いに行こう。あ~でも明日せっかくだから塩漬けの依頼を受けておくか……うちのメンバー結構出発するから依頼受ける人減るだろうし……」
そんな事を考えながら俺は眠りに着くのだった。
翌朝、体操をして、朝風呂からの柔軟、朝食というルーティンを終えて宿を出ると空は灰色の雲が多く、雨が降りそうな天気であった。
「うわ、雨が降るかもしれねぇな……雨具の準備してねぇよ」
俺はそんな事を呟きながら冒険者ギルドに移動し、受付の職員に挨拶して2階に移動すると、今日はリーフィアさんが対応してくれた。
塩漬けされている依頼として家の解体、下水道の清掃、街道のゴブリン退治なんかがあり、今日は街道のゴブリン退治を選択した。
「地図でこの町から東に伸びる街道で行商人がゴブリンに襲われる事が多発していまして、討伐の証拠としてゴブリンの鼻をもいできてぐださい」
「なんでこの依頼人気無いんですかね? 依頼金も150Gプラス1匹5Gと悪くないのに」
「ゴブリンの数が不明なのと街道も広いのでゴブリンに出会えるかは運次第になります。しかも普通5人くらいのチームで挑む依頼なので割り勘すると1人50Gくらいになってしまいますし、労力が見合うかというと微妙ですので……あとゴブリンは土葬しておかないと狼とかが腐肉を求めて集まってきますので必ず土葬をしないといけないというと決まりもありますので」
「あぁ、そりゃ人気がないわな。とりあえず街道近くのゴブリンを駆逐してくるわ」
俺は冒険者ギルドを出て、雨具屋に向かい雨具を見るが、翼と尻尾が邪魔をして着るタイプの雨具は着れないし、傘みたいなのは今からの依頼内容を考えると邪魔だなぁと思い、多少濡れるのは仕方がないと、依頼の街道に出掛けるのだった。
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