魔法ギルド 2 ハイエルフのルシア
2コマ目の授業では先ほどの続きで今度は紙が置かれ、紙を風で浮かせる授業となる。
片手で風で持ち上げるに手のひらに置かれた紙に僅かな風を送り続けて紙を浮かせる。
コツがいるが1度できれば簡単に出来る。
続いて先ほどのろうそくの様に両手で風を起こして紙を浮かせる。
これは小さな竜巻を起こさせる必要があり、少し難易度が上がるが、手のひらの角度と風を出す位置を手のひら全体ではなく点で出すことで渦を発生させることが出来る。
紙で慣れたら水槽に手を突っ込んで水の中で渦を作るように言われる。
もちろん水魔法は使わないでだ。
それができれば風魔法の初歩はマスターしたことになるらしい。
出来た人から初級は卒業と言われて、俺はコツを掴むと5分程度で3つの項目を終わらせて講義を終了させた。
講師の先生から別の講義受けてきて良いぞと言われて教室を後にした。
ステータスを確認すると風魔法下級が習得されたことになっており、5ポイントもスキルポイントが浮いたことになる。
「こりゃ良いわ」
俺は早めの昼飯を取った後(オタク達とはタイミングが合わなかった)、火魔法初級の授業も受ける。
2コマみっちり受ける事になったが授業を終えると火魔法下級のスキルを習得することに成功した。
後は残った時間は図書室で何か学べることがあればと図書室に向かうと、ピンク色の髪をポニーテールにし、耳が尖った胸のデカい女性が黙々と何かを書いていた。
俺は気にせずに本を手に取り読み始めると、先ほどの女性が話しかけてきた。
「ねえ、あなた凄い魔力をしているわね……」
「はぁ……」
「ちょっとお姉さんとお話しない?」
「お姉さん?」
顔を見ると童顔で座っていたからよくわからなかったが、身長も中園さんより少し大きいくらい……150センチくらいの身長しか無い。
その割には胸がデカいなぁと思ったが……。
「まぁ暇していたのも事実ですし、控室で話しましょうか……ここだと話しをするのには不適切な場所ですし」
「えぇ、そうね」
座っていた女性は魔女の様な大きく黒い円錐の帽子を被ると本を司書の方に返し、ノートを畳んでから図書室を出た。
控室に移動して、俺がコップに白湯を入れて出すとありがとうと言われて彼女が自己紹介を始めた。
「私の名前はルシア……ルシア·バーダグローブよ」
「俺の名前はカネダです。カネと呼んでください」
「じゃあカネね。あなた普通の竜人ではないわね……竜人って魔法使うのが凄い苦手な種族なのよ……なのに凄い魔力を有しているし……エルフ以上の魔力がある存在をモンスター以外で初めて見たわ」
「ルシアさんは「ルシアで良いわ」……ルシアはエルフで?」
「えぇ、ハイエルフと呼ばれる種族よ」
「エルフとハイエルフの違いがわからないのですが……」
「あら? ハイエルフはエルフの中でも王族や高貴な生まれの人が名乗る名称でもちろん純血のエルフなのよ」
「はぇ……あれ? でもバーガータウンというか公爵領はエルフの国ではないですよね?」
「まぁこの王国にはエルフが領主の領地もあるし別に居ても不思議ではないわ。逆に竜人はこの国には旅人以外居ないわ」
「まぁ俺も旅人と言えば旅人で……魔法実験の失敗で転移してしまって……」
「ふーん、でも竜人の魔力ではないわね。貴女のお仲間の竜人の人達も魔法が使えるようで突然変異でも無さそうだし。何か訳が有るわね」
「妄言と思われても良いんですけど……実は元々人族でして転移したら種族が変わっていたのと、竜人じゃなくてドラゴンという種族なんですよね」
俺は冒険者カードを見せる。
「確かに種族が変わってと言うなら納得のいく部分はあるけど、魔法実験の失敗と言うなら貴女達高貴な魔法使いということに鳴るけど初歩の魔法授業を受けていたのはなぜ?」
「そ、それは……」
「まーだ何か隠しているでしょ? お姉さんに言ってご覧なさい!」
「誰にも言わないでくださいよ……実は異世界からの転生したっぽいんですよね。俺達が知る中でモンスターや魔法は元の世界にはありませんでしたし……」
「あー、それは言わなくて正解よ。転生しているから大丈夫だけど、昔異世界から人を呼べるのではないかって魔法が盛んに研究されたわ。で、実際に人を呼び出すことに成功した国があったんだけど、召喚した人を媒体として疫病がその国で大流行したのよ。それから異世界関連の魔法は禁術に指定されたわ」
「お詳しいんですね」
「もうかれこれ500年前の出来事だけど、私も幼いながら生活していたからね」
「ご、500歳以上なんですね……ルシアは……」
「エルフは500歳なんてザラよザラ……でもドラゴンに転生して人の形をしているのは気になるわね……ステータスはまさにドラゴンって感じだけど」
俺に冒険者カードが返される。
「でも勿体ないわ……それだけ魔力があれば凄い魔法使いになることが出来るから……ねぇ、貴女やその仲間を私の弟子に出来ないかしら」
「え……良いんですか?」
「貴女達は巨大な才能と言う名の原石よ! 教えたらどこまでも輝く可能性を秘めているの。私はそう言う原石を磨くのが大好きなのよ」
「俺含めて仲間が31人居るのですが」
「ふーん、じゃあ仲間と相談しなさい。私は貴女達を教えるつもりがあるわ。同郷のエルフが営んでいるエルフの宿り木と言う宿があるからそこに居るから私に魔法を教わりたければそこに来なさい」
「わかりました。今夜仲間達と相談してみます……ところでなんでハイエルフで立場がありそうなルシアはなんでこの町に?」
「王族にも色々あるのよ。王位継承権とかでね……それが嫌で立場を捨てて魔法の研究や各地で弟子を取って育てているのよ」
「あぁ……なるほど」
「まぁもう450年も前の話だけどねー! ドラゴンだから寿命長いと思うし少しの間よろしくー」
軽いな……長寿種のノリなのかこれが……あぁ、婆さんとかが昔は辛かったけど今は楽しいよとかそういうノリかもしれん。
まぁ俺も仲間も高名な魔法使いの弟子として教えを受けられるなら良いかもしれない。
授業が終わり、オタク、中園さん、宮永さんと合流してルシアの事を説明する。
「そんな高名な人に教わるの気が引けるんだけど……」
「でもパワーアップイベントではござるよ! これは乗るしか無いでござる!」
オタクは乗り気だ。
更にルシアは
「魔法ギルドに私が言えば教室借りることも出来るから魔法ギルドで魔法を教えようか……機材も使えるからその方が早く覚えられるでしょ」
とのことだった。
俺はお願いしますと言い、なんなら仲間は俺が説得しますと断言した。
魔法ギルドでルシアと言う凄まじい大物と出会ったが、良い出会いであった。
俺は前田先生にまず相談すると
「凄いじゃないですか……確かに高名な魔法使いの方から魔法を学べるまたとない機会ですので私も受けたいです……しかし31名の教鞭をとるのはなかなか難しいと思いますが大丈夫なのでしょうか」
「500歳を超える人ですし、弟子が沢山居るようなので大丈夫なんじゃないですかね……あと異世界転生の事も色々聞かれたので誤魔化しきれずにゲロったのですが……」
俺は異世界転生で良かったと言われたことを話す。
「確かにヨーロッパ人が南米を発見して交流を深めるとヨーロッパから持ち込んだ疫病で抗体を持たない人々が次々に亡くなったと言う歴史が私達の世界でもありましたし、この身体で良かったかもしれませんね」
と先生が言う。
歴史とかも詳しい前田先生はそういう例えをすらっと出せるので改めて教養の高さがわかるが、それだけに前の世界では見た目で大きく損していたんだなぁと思った。
その後夕食で帰ってきた皆にルシアの話をするのだった。
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