魔法ギルド 1 風魔法の授業

「今日はよろしくオタクに中園さん、宮永さん」


「いやぁ4人で予定が合って魔法ギルドに行けて良かったでござるよ!」


 翌朝、魔法ギルドに行くことを言ったらいつも通っている中園さんとオタクだけでなく、宮永さんも今日は予定が無かったらしく魔法ギルドに顔を出したいということでチームでの行動が実現した。


「授業料とかどれぐらいかかるんだ?」


「1日100Gでござるな。冒険者ギルドは1コマ5Gから10Gと聞いたでござるが、それに比べると割高でござるが、1日でござるよ」


「コマではなく施設利用料みたいな感じか」


「うん、魔法ギルドへの入場料さえ払えばどの授業も自由に受けれる感じだよ」


「「へぇー……」」


 俺と宮永さんが声が合わさる。


 朝食を終えて魔法ギルドに行くと冒険者ギルドよりは人が少ないが、それでも結構な人数が建物に入っていく。


「最初は受付をする必要があるでござるよ」


 受付では冒険者は冒険者カードを見せて魔力が一定水準あれば魔法ギルドに所属することを許される仕組みらしい。


「はい、カネダさんとミヤナガさんの受付完了です。次の来館からはこちらのシンボルを見せていただければ入館料の支払いだけで済みますのでよろしくお願いします」


 現代換算で1日1万円……普通の冒険者の2日分の給料を入館料として取られるだけあり、中は綺麗でしっかりとした造りをしていた。


 オタクは最初は掲示板を見ると良いと言われて掲示板を見ると各授業や講義の教室や時間が書かれていた。


 魔法ギルドは時計が各教室や控室にあり、時間厳守で進むらしい。


 鐘の合図で授業が切り替わる冒険者ギルドとは違うようだ。


「朝一でござるが、拙者は魔道具製作の授業を受けてくるでござるよ」


「私は回復魔法全般の授業を受けてこようかな」


 オタクと中園さんはもう受ける授業が決まっていたらしく、俺と宮永さんには最初は直感で授業を受けてみた方が良いと言われた。


 掲示板を見て


「風魔法について学んでみるか」


 と言い、宮永さんは炎の魔法について学ぶらしい。


 それぞれ教室に移動し、座席に座って待っていると、ぞろぞろと授業を受ける生徒達が入ってきた。


 そしてローブを着たいかにも教師という方が入ってきて教壇に立ち


「はい、風魔法初級の講師をしますフーデルと言います。皆さんよろしく」


 だいたい座席数が30席あるのに、受講するのは俺含めて10名らしい。


「あー、初めて見る顔も居るから言っておくが、この時期の受講者数はどこもこれくらいだ。金がかかるからな。才能があれば直ぐに覚えることもあれば、初級でも1ヶ月通い詰めての場合もある。まぁ覚えにくいってなったら少し高くなるが個別指導の方が早く覚えることが出来るから、金があるなら個別指導を受けてみろ……じゃあ今日の授業は風魔法の基礎からだ」


 魔法の基礎は空気中にある魔素を呼吸で吸収し、体内で魔力に変換し、魔力を使って魔法を放つというのが普通で呼吸方法の改善とかで魔力が上がることもあるため呼吸方法の改善はまた別の教室でやっているから、気になるなら受けてみると良いと言われる。


「では風魔法だが文字通り空気を操る魔法全般を風魔法と定義付けている。だから極めていくと空気中の温度操作もできるようになり、室内を冷気で覆ったり、灼熱にしたりと火や炎と呼ばれる魔法や水魔法の領域にも踏み込んでくる」


「嵐等があるように風魔法は他の魔法との親和性が高い。火は火災旋風、水は嵐、土は砂嵐……他の魔法と組み合わせることでより強力な魔法に発展することが多々ある。そんな風魔法だが攻撃魔法になるのが中級からと大器晩成型の魔法でもある」


「カマイタチという風が刃となる現象があり、風魔法の基本攻撃方法、次に空気砲と呼ばれる空気の塊を相手にぶつける事で相手を転倒させたり、足止めする2つの魔法が基本となる」


「応用として臭いを消すという方法もある。これは初級や下級の風魔法使いでもできるが、体の臭いを風で飛ばすことで常に風下に居る状態を作り、モンスターからの発見を遅らせる魔法だ。これはソレンス迷宮3階層では絶大な効果を発揮する」


 そんな実用的な話から始まり、実際に講師が魔法を実演していく。


「まず初心者の方が覚えるべきは魔力感知という技術です。周囲の魔力を視覚的に見ることができればモンスターとの力量差等を測ることにも繋がります」


 魔力操作とは違う言葉が出てきた。


 確かにスキルで魔力感知というスキルはあるが、最初はこれを習得すべきだったか……。


 とりあえずこの時間はスキルを取らないで体験してみよう。


 もしかしたら習得できるかもしれないし……。


 やり方としては、加工された魔石がまず配られる。


 魔石を触ることで熱を感じる、それができれば魔力を感じるのが出来たことになるらしい。


 講師から置かれた魔石を触るとほのかに温かい。


 俺は魔法をバンバン使っているからある程度感覚でわかるのかもしれない。


 となるとこの手で触れている魔力を視力で見えるように集中すれば良いのか? 


 俺は手の感覚を魔力操作で視力と接続する。


 すると薄っすら虹色のオーラみたいなのが講師の先生から漏れ出ているのがわかる。


 他の生徒の方も僅かだが漏れ出ていた。


 ステータスを確認すると魔力感知がスキルポイント無しに追加されていた。


 なんだよ……これくらい簡単ならオタク言ってくれれば良かったのに……。


 それからも魔力感知のコツを講師の先生が言い続け、30分もすると皆できるようになっていた。


「全員魔力を見ることができるようになりましたので次は魔力を操作してみましょう」


 これは魔法を使うのにいつもやっていることなので楽だ。


 先ほど渡された魔石に魔力を流せば赤く光るらしい。


 俺は直ぐに赤く光らせて合格を貰う。


 これも全員15分もしないで合格を貰い次に進む。


「今回の受講者の皆さんは優秀ですね! では風魔法の初歩を教えます」


 そう言うとロウソクが渡され、講師の先生が火をつけていく。


「では両手を横に置いて魔力を流します。そして両手から魔力を両手の間を流す感覚を覚えてください。そうすれば魔力が流れれば空気も流れます。出力を上げていけば風になり火を消す事ができます。できなくても火が揺らぎ始めるのでそれで感覚を掴んでいきましょう」


 確かにこれなら初歩を覚えることが出来るだろう。


 俺は両手の間を魔力を勢いよく流すと火がふっと消えてしまった。


「おお、早速ですか……失礼他の魔法を覚えている感じですか?」


「土魔法と水魔法、回復魔法を少々」


「なるほど……なら早いですね。では今度は火を消さないように揺らぎ続けるようにしてください。出力のコントロールのトレーニングになりますから」


「はい!」


 俺はまたロウソクに火をつけられると、両手を置いて火を揺らがせる。


 イメージは手で消えないように扇いでいる感じだ。


 さっきは団扇で勢いよくを風を叩きつけた感じだったが、それを手で扇ぐようにすれば……。


 ひらりひらりと火が揺らぎ始めた。


 他の人もロウソクの火を消したり、揺らがせる事ができたらしく、ここで一旦休憩になる。


 休憩も座席に座って居ると茶髪でボブカットの女性から話しかけられた。


「私ベッキーって言うのさっきの授業で言ってたけど土に水に回復魔法も使えるって凄いね! あまりここでは見ない顔だけど別の町で習ったの?」


「いや、独学……だから他の人に感覚が説明できないのと魔法の理論的なのを学びたくてこの町の魔法ギルドに来たんだ」


「へぇ! 良かったら魔法見せてくれない?」


「じゃあ石を出すわ」


 俺は手から石を生み出す。


「ほい」


「わぁ! 本当に石が出てきた……土の性質変化を組み合わせているから上級魔法よね!」


「まぁそうなるな」


「凄い凄い!」


「ベッキーはなんで魔法を?」


「私は冒険者になるために親が魔法を習っておいた方が良いって言われて通わせてもらっているの! 今できるのは火の魔法で火をつけるくらいしかできないけど、風魔法と組み合わせれば強い攻撃魔法になるんじゃないかと思って!」


 確かに俺の火炎放射も火を飛ばしているので火と風魔法を組み合わせれば出来るかもしれない。


 それができれば3階層くらいのモンスターなら楽に倒すことが出来るだろう。


「俺も冒険者だけどそれが何回も放てればゴブリンには遅れを取ることは無いと思うぞ」


「本当! なら良かったわ! あ、ちなみに私の家は本を扱っている家だからもし良かったら来て買っていってよ!」


「わかった。今度顔を出すよ」


 ベッキーと雑談すると直ぐに時間になり授業が再開するのだった。

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