畑仕事
その日の夜は先生から俺達が米を採ってきた事ができたので精米した後に米を食べることができると通達が行き、皆盛り上がった。
豪炎寺なんかはご飯に合う最高のおかずを用意すると張り切っている。
まぁ先生から精米するのにもう少し時間がかかると言われて沈静化。
それでも皆の士気が上がったのは言うまでもない。
それと俺達以外のチームは別の迷宮に行ったらしく、グリーンビット迷宮を探索した飯田、桑原、梶原さんと前園委員長のグループ含めた7名は、今日は迷宮内の地理把握に努めたらしい。
4階層まで行ってみたらしいがとにかく広いらしく、飛行しないととてもじゃないが1日で最深部の4階層までは行けないらしい。
ただ4階層にはユニコーンが生息しているらしく、ゲームとかに居るような白馬では無く栗毛や芦毛、青鹿毛なんかの様々な毛色があり一角の生えた馬という印象らしい。
処女でなければ懐かないとかそういうのではないが頭が良く、気に入った人を背に乗せて走るが、気に入らないと角で攻撃してくるといった感じらしい。
グリーンビット迷宮ではそんなユニコーンを捕獲し、農耕馬にしたり、馬車を引かせたり、軍馬にしたりといった労力として活用したり、馬と掛け合わせてより人に飼い慣らしやすい馬……混血だと角が2本以上になるらしいのでバイコーンと呼ばれる馬にしたりもするらしい。
まぁ獰猛過ぎてどうしようも無かったら絞めて馬肉や角を魔法の素材に、皮はバッグの素材、馬毛はブラシに加工されたりするらしい。
用途が色々なので1頭生きている状態で捕獲できれば2500Gで冒険者ギルドが買い取ってくれるらしい。
もっともユニコーンハンターという冒険者グループが居るらしく、ユニコーンを捕獲するノウハウや多頭数を移動させる術を持っているのだとか。
グリーンビット迷宮は他に大きく丸まる太った鶏だったりイタチ擬きや狐擬き等の動物に近いモンスターが居るらしく、冒険者も猟師みたいな人が多い印象を受けたと委員長が言っていた。
冒険者ギルドからグリーンビット迷宮は現状でも管理できているため間引きの優先度は低そうである。
逆に野村や佐々木、サッカー部コンビの二宮と加茂の4人が行ったマッシュルーム迷宮では動くキノコやお化けカボチャ等の食糧になりそうなモンスターが大量に居たらしい。
お盆にお供え物として供えるキュウリの馬とナスの牛みたいなのも走り回っていたらしい。
飛行すれば3階層まではあっという間に行けるくらい各階層の天井は高いらしいが、野菜や食糧みたいなモンスターがメインなので高額商品……みたいな物は無さそうだと言われた。
あと3階層にはバロメッツも普通に居たと報告を受けた。
こうして聞くと間引きはソレンス迷宮とマッシュルーム迷宮の5階層以下をメインにした方が良いだろうし、金を稼ぐだけならソレンス迷宮一択という判断になったっぽい。
野村達は委員長や桑原のグループと合同で今度マッシュルーム迷宮の深部に数日間のアタックを行うと宣言し、豪炎寺と原村さんも連れていきたいということを皆に言っていた。
俺は別に反対しないし、他のグループも反対意見は出なかった。
俺達も昨日のソレンス迷宮の話を皆にして、6階層で壁を掘れば結構な値段になることや、土魔法の聖級まで行けば金属の抽出ができること8階層の象頭の化け物の話や出たら消えてしまう空間の話もした。
和田さん達の女子グループは数日後にソレンス迷宮に金稼ぎで潜るらしく、里崎とかのグループも和田さんと一緒に行動するらしい。
残った前田先生は精米作業で、まだグループになってない人達は塩漬けされた依頼を受けたり、ギルドの講習を受けたりしているらしい。
あと宮永さんが絵が上手いので服のデザインの要望を受け付けて、描いた絵を渡して俺達が行った服屋とかに持っていけば2週間で作ってくれるらしいというのを話していた。
他にも細々とした情報交換をして今日は解散となるのだった。
爆睡からの朝風呂、柔軟して朝食……今日は農家と繋がりを作るための依頼を受ける事にした。
オタクと中園さんは得たお金を使って魔法を学びに行き、宮永さんは画材を買いに行くらしい。
芸術が好きな宮永さんらしい。
冒険者ギルドで人混みの中掲示板を見ていると畑を耕すのを手伝って欲しいという依頼があり、1日40Gに昼食が出るとなっていた。
俺は依頼書を取って、受付の職員に見せると特別冒険者なので2階層で職員が対応しますのに……と呆れられた。
まぁ依頼自体は受諾されて場所を説明されて向かうのだった。
空を飛んで向かうと目的の農家の家が見えた。
バサバサと音を立てて降りると依頼人と思われるおじいさんが農具の準備をしていた。
「空から人が!」
「こんにちは! 依頼を受けてきた冒険者のカネダです。ギータさんのお宅でよろしかったですか?」
「あ、あぁ……冒険者の方だったか……随分と美人さんが来たもんだ……改めて農家のギータと……おーい婆さん」
「はいよ!」
出てきたのは腰の曲がったお婆さんだった。
「うちの女房のザジルだ」
「ザジルと言います。よろしくねお嬢ちゃん」
「婆さんが腰を痛めてしまって儂だけだと畑の管理が厳しいからな。冒険者の方に手伝ってもらおうと思ってな」
「わかりました! 頑張ります!」
「そうかそうか! 助かるぞじゃあ早速耕すのを手伝ってもらうぞ」
俺は鍬を渡されたが
「いえ私には魔法がありますので!」
「魔法が使えるのか! でもうちの畑は広大だぞ」
「魔法の鍛錬になるので大丈夫ですよ!」
と説明し、俺とギータ爺さんは畑に移動する。
まだ耕されていない硬い地面だった。
「どれくらい耕せるか見たいから一回ここの区画を掘り返してくれねぇか」
「わかりました!」
俺は魔力を込めると地面がモコモコと動き初め、フォークリフトで耕すように地面がかき乱されて柔らかい地面に変わっていく。
ギータ爺さんは耕された地面に指を差し込むと
「だいたい30センチか……カネダさんもう少し深く掘り返すことができるか」
「わかりました!」
俺は深さを更に深く魔法で掘り返していく。
「深さはこれぐらいでええ、これをこの区画全面でできねぇか!」
「わかりました!」
俺は魔力の範囲を広げて、ゆっくり歩きながら指定された区画を耕していく。
「カネダの嬢ちゃんは凄い魔法使いなんだな! 悪いな土いじりさせちまって」
「良いんですよギータさん、さっきも言いましたが魔法の修行になるんで」
「そしたら肥料を撒いていくぞ」
肥料らしき液体をギータ爺さんが畑に撒いていく。
俺も見様見真似でバケツを受け取ると肥料を撒いていく。
「これ肥料ですか?」
「ああ、糞尿をたらふく食べたスライムを絞めて液体化した物だ。良い肥料さなるぞ」
「へぇ……」
肥料を撒き終わるとギータ爺さんは見本の畝を作り、それに合わせて畝を作っていく。
魔法で土を盛り上げて畝を作ったらギータ爺さんは一旦家に戻り、荷車に苗を積んできた。
「この苗は?」
「赤芋っちゅう芋だ。儂達の収入源。町にこの芋を卸して生活しているんだよ」
「へぇ……」
見た目サツマイモの苗に見える。
それを手作業で苗を植えていくとあっという間にお昼になる。
「カネダの嬢ちゃんが頑張ってくれたお陰で苗を植える所まで午前中でできたな! ありがてぇぜ」
「いやいや、午後はどうしますか?」
「正直今年はこれくれぇしか畑の管理ができねぇと苗を用意してねぇんだわ。土地を貸し出すにも小せえから借りてぇと言う人が来なくてな」
「あそこの土地ですか?」
丁度田んぼ1枚分くらいの広さの土地が余っていた。
「俺が借りてもいいですか?」
「嬢ちゃん下級市民か?」
「いえ下級市民ではないですが、やっぱり必要ですか?」
「金あるんならなっちまった方がええぞ」
「じゃあ数日後にまた来ますんでその時に借りてもいいですか? 今日は耕してはいきますんで」
「おう、雑草生えると不味いから耕してくれるのはありがてぇぜ」
「ちなみに借りるとなるとあの広さだとどれくらいかかりますか?」
「1年200Gくらいで貸すぞ。管理も手伝うが」
「200Gですか……わかりました。ちなみに肥料とかはどこで買えますか?」
「郊外に肥料屋がある。言ってくれればまた肥料を注文するから送ってもらえるぞ」
「じゃああの畑分の肥料もお願いします。お金は」
「20Gだな」
「じゃあ今渡しておきますね」
俺は袋から20Gをギータ爺さんに渡す。
それから空き地を耕して畑に直して、米を撒く準備を整えていくのだった。
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