酒場での話

「うはぁ……ビッチャビチャ……拭き掃除してもうひとっ風呂浴びてくるか」


 筋トレを終えた俺は雑巾で汗を拭き取ってから浴場の洗い場にて冷えた水を魔法で出して体の汗を洗い流す。


「よし!」


 シャキッと水で体を冷やして引き締め、ドレスを着てからオタク達を呼びに行く。


「そろそろ行くぞー」


 ドアをノックしても返事が無い。


 中園さんと宮永さんも返事が無く、ドアに耳を当てて聞き耳すると、オタクの部屋からはイビキの様な音が聞こえてきた。


「全員寝たなこりゃ……しゃーねぇ俺だけで行くか」


 俺はミスリルの剣とお金を持って女神の涙という酒場に向かう。


 現在の時刻は18時……だいたいこの季節はこの時間には日が落ちるし、冒険者達も17時頃を目安に町に帰ってくるらしい。


 カランカランと店の扉が開く。


「おお! 竜人の姉ちゃん待ってたぜ!」


「店主! さっき言っていた姉ちゃんだ」


 するとバーテンダーみたいな格好をした男性が現れて


「8階層まで行ったんだってな! 話聞かせてくれよ」


 そう言ってきたので俺は店主に


「先払いだ1万Gあればここに居る連中も奢りにできるか?」


「おいおいまじかよ嬢ちゃん! 随分と気前が良いな」


「本当は4人で来るはずだったんだけど他の3人が爆睡しちゃったから代わりにな。せっかくだからおごるぜ」


 うおおおとその場に居た冒険者達から喝采が挙がる。


「店主、とりあえず皆が食える料理とジュースちょうだい」


「なんだ酒じゃねえのか?」


「酔っぱらったら話せないからね。まともな情報を聞きたいのだろうし」


「あいよ」


 店主はジョッキでリンゴジュースを出してきた。


「サンキュー」


 俺は椅子に腰掛けて


「まずは自己紹介だな。特別冒険者のカネダだ。カネって呼んでくれ。基本素手と魔法でモンスターを倒す。この町に来たのは5日前か? まぁそんな感じだ。見ての通り竜人……よろしくな!」


 そう言うと周りから指笛等が響く。


「さて何から話そうか」


 と周りに問いかけ、周りから6階層の情報が欲しいと言われる。


「6階層はオークと飛んでくる鉱石のエリアだな。オークがそこらを徘徊していて、6階層の入り口の所にオークの巣がある。5階層から降りた所に巣を作っていて10体から20体がそこで飯を食ったり生活をしている。そこを突破できる力が無いと厳しいだろうな。オークを倒せても鉱石が飛んでくる」


 俺は店主に許可を取っても壁の前に石壁を魔法で作り出す。


 そして魔法で石を作り出すと、俺は150キロくらいの直球を投げる。


 石壁にぶつかった石が弾け飛ぶ。


 石壁にはくっきりと投げられた石の跡が出来ていた。


「こんなのが壁からビュンビュン飛んでくる。空間自体は紫色の水晶みたいなのが光り輝いていて整備されている3層くらい明るい。ただ飛んで来る鉱石を何とかしないと危険だから踏み入らない方が良いな」


「カネは大丈夫なのかよ」


「試してみるか? 石投げるのに自信がある奴」


 するとぞろぞろと5人の冒険者が立ち上がった。


 俺は投げやすいように球体状の石を生み出して、彼らに渡す。


「投げていいぞ」


「おいおいまじかよ」


「やめとけって」


「大丈夫。一斉に投げてみろ。傷つけられたら100G渡すから」


 そう言うと彼らは躊躇いながらも俺に石を投げつけてくるが俺は翼で体を覆った。


「俺達はこれができるのよ。触ってもいいぞ」


 俺は冒険者達に翼を触らせると


「うわ、めちゃくちゃ硬ぇ」


「飛竜の翼みたいだなと思ったが、それよりも硬い……これ剣が通らないんじゃねーか?」


「まぁ鉄の剣くらいだったら通りません……と、店主ありがとう」


 俺は石の壁や石を消していく。


「最初のは驚いたけど石がいっぱい飛んでくるんだったら動けねぇな」


「全身鎧とかにしないと突破できねぇってことか……それか高価な魔道具を使うとか」


「6階層って宝箱とかねぇのか?」


「今回は見なかったな……ただ壁を掘ったら大量の鉱石が出てくる。500キロ掘ってだいたい80万Gにはなったが……運ぶ手間やオークの巣を抜けるのを考えると厳しいんじゃないか」


「じゃあ7階層はどうなんだ?」


「7階層はピラミッドだ。中にミイラがうようよいる。火で燃やせれば簡単に倒せるが、事前準備無しだと厳しいだろうな」


「カネはどうなんだよ。何回か行ったことがあるのかよ」


「俺がこの場所に来た理由が転移魔法の実験の失敗で集団転移かつ、ソレンス迷宮最深部に飛ばされて脱出するまでに何回も今回行った8階層や7階層は通ってきた。7階層には俺達が作ったキャンプもあったりする」


 おぉと皆感心したり、じゃあ8階層で何か出てきたりしたのかと聞かれたが、俺はミスリルの剣をテーブルに置く。


「ミスリルの剣」


「「「おおお!?」」」


 俺は機械人形と呼んでいるモンスターが居てそいつを倒して奪ってきたと説明する。


「流石にこれは見せるだけです」


 俺はミスリルの剣を石の塊にしてしまう。


「さて、じゃあ8階層の話をしますか」


 料理が届き始め、テーブルが賑わい始める。


 各々酒を頼んだりし始める。


「8階層……ゴーレムと機械人形がメインで宝箱も出やすい階層になります。宝箱は1日探していれば1個くらいは出てきますし、出てくる物も相当高価な物だと思います」


「オークションには出てないけど」


「冒険者ギルドの方から出さないで欲しいと言われているので出してません」


 グビグビとジュースを飲む。


「ゴーレムって強いモンスターなのか?」


「2メートルから5メートルくらいの土の塊が攻撃してくる。頭の中に魔石が埋め込まれていて頭を破壊すれば撃破できる。だいたい1体5万Gの魔石が出てくる」


 おぉ! と場が盛り上がる。


「ただしこの剣が出てくるのは機械人形……機械人形は必ずミスリルの武器を落とすんだけど、ミスると俺の翼でも切り裂かれる。ミスリルの武器を使っているから当たり前だけどね……まぁ今回はそれ以上の化け物が居た」


「象ってわかるか?」


 皆首を傾げる。


 俺は象の特徴を言っていく。


 それを含めて象頭のモンスターとの激闘を語っていく。


 翼を貫かれた事やミスリルの剣で首を切断した事等を語っていく。


「そうやって倒して魔法のモーニングスターを手に入れたのでした」


 おぉ! と拍手が起こる! 


「それで象頭のモンスターは巨大な魔石を落としましたとさ……流石に金額は言えないけどここで皆の食事代を払ってるので察してくれ」


「嬢ちゃんスゲーな」


「面白かったぜ」


 そう言った声が挙がり、俺も食事を楽しむ。


 チーズたっぷりのピザを食べながら雑談をしていく。


「特別冒険者ってすげーんだな……」


「でも俺知らない事ばっかりよ。剣の扱い方は素人だし……講習で出会ってもお手柔らかに」


「おう! よろしくな」


 この場に居た冒険者の心はガッチリ掴むことができたらしく、どんちゃん騒ぎをして夜遅くに宿に戻るのだった。


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