バーガータウン案内 2

 横道を通るとまだ冒険者に向けた店が並んでいる。


『冒険者の道具は店によって扱いが違うからな。高い買い物だけに色々吟味した方が良いぜ』


 あちゃー、こっちにも鞄屋とかがあったからこっちで探してもよかったかもしれない。


 まぁキープしたし、気に入ったのは事実なのであのバックは買うが……。


『ちなみに武器屋によって職人の得意不得意があるからさっきの大通りの店は量産品だが質が均一。こっちの店はムラがあるが当たりの目利きができるならこっちの武器屋の方が安くて質の高いのが手に入ったりするぜ。あっちの防具屋は盾の質が良い』


 店によって色々あるらしい。


 キッチーナが教えてくれたから色々知ることができているが、他所から来た新米冒険者とかは自分の足で調べなければならないことを考えると大変だと思う。


 やっぱり横道にも宿とかがあり、冒険者ギルドから離れた立地な分安宿が多くなった印象がある。


『ここらへんは新米冒険者が生活するのが多いな。金が無いから安宿に泊まることになるし、安い飯屋も多い。味はその分大雑把だがな。質より量ってやつだ。味を求めるんなら商人の多く住むエリアの方が少し高いが良いのを作っているよ』


 また広い十字路にぶつかると本道の方に入る。


 異世界の町だとヨーロッパの丸い城塞都市みたいなのをイメージしていたが、碁盤の様な都市なのかもしれない。


 今度空飛んで見てみるか……高度限界みたいなのを確かめたいし。


 ただこうして見ると木造とレンガ造りが入り混じっているなぁと感じる。


 安宿は木造だし、俺達が泊まっている宿はレンガ造りのしっかりした造りだし、冒険者ギルドは以外にも木造だけど……。


 冒険者ギルド周辺は木造の建物が多くて、今居る下級市民や商人のエリアはレンガ造りと木造が入り混じっている感じ。


 この道に入ると食堂というよりレストランって感じるお店が増える。


 安さよりも質にこだわってるのかなと感じる。


 売春宿も一気に減って若い女性や子供の数も増えた気がする。


『服屋はここの通りに多くあって7店舗だったかな? そんぐらいあった気がする。女性メインは5店舗で残りは男物と子供服を取り扱っている店だな。下着なんかも買えるが、時間かかると思うから今度にしてくれないか?』


『少しで良いから入っちゃだめか? 今下着が無くて履いてないんだよ俺達』


『マジか、そりゃ必要だな。じゃあここで時間を取るから隣の雑貨屋に居るから終わったら声をかけてくれ』


 そう言われて俺達は女性物の衣類を取り扱う店に入った。


 そこには女性物の外着や部屋着、下着がズラッと並べられていた。


 社交用のドレスなんかもある。


『とりあえずまたせているから下着を数着だな』


 俺達元男子達はどれを選べば良いか迷うが宮永さん、中園さん、藤原さんにどういうのを選べば良いのか聞くが、ブラジャーが無く、コルセットがブラジャーの役割と一体化していた。


『下は紐パンで良いとして……私達も流石にコルセットは使った事が無いなぁ』


『翼も通さないといけないから服とかも特注になるんじゃないこれって』


『あぁ、確かに……』


 俺は店員さんにコルセットの胸部だけで胸が垂れないように固定する下着は無いか聞くと特注になりますが作ることは可能ですよと言われた。


 他のメンバーにも今日は時間が無いから紐パンとTシャツ、短パン等の部屋着と下着を数着購入し、また後日に頼みますと店員さんに断った。


 下着は1着10G、Tシャツは15G、短パンは30Gだった。


 短パンは1着、他は3セット購入する。


 ちなみにTシャツは背中は布が無く、紐でクロスしているのを購入した。


 お店的には布面積を減らすことでコストダウンをするための苦肉の策らしいが、俺達は翼があるのでそれ以外のTシャツは着ることができなかった。


 だいたい30分程度で購入は終わり、トイレを借りて購入した紐パンを着る。


 ただ元男子達は紐パンの履き方がわからないので女子達に履き方を教わり、時間がかかってしまった。


『すまんキッチーナ、待たせた』


『いや、ちゃんと買えたか?』


『まぁ……胸を押さえる下着は特注に作らないといけないことが判明したけどね……』


『お、おう……まぁそれは仕方がないな……皆大きいし……俺的には尻尾があるのに下着が入ったのが驚きだが……』


『紐パンは偉大なり』


『あ……なるほど』


 逆に紐パン以外の下着は尻尾が邪魔してダメそうである。


 ドラゴンの体……強いが服を殆ど特注にしないといけないので苦労しそうである。


 とりあえず部屋着と下着は手に入れられたので更に町の奥へと進んでいくと屋台が立ち並ぶ市場らしい場所に到着した。


『ここは市場だ。野菜や果物や小物や古着等が並ぶ。子供達の遊び場でもあるな……市場の周りには肉屋やパン工房とかもあるから家持ちの市民はだいたいここら辺で食材を購入する感じだ』


 魚は無いのかと聞くと海が遠いので塩漬けや干物は買う事が出来るらしいが高いのだ。


 ウナギとかは安いらしいが川魚は泥臭くて人気が無いらしい。


 豪炎寺が知れば泥抜きして川魚を美味しく調理してくれそうなので今度頼むか。


 以外にも砂糖は畑でてん菜が収穫できるらしく比較的安価に購入することができるらしい。


 塩も迷宮から岩塩の採掘ができる所があり、安価で出回っているとのこと。


 キッチーナが前に食べさせてくれた味噌は作っている工房が1箇所しか無いので高いのだとか……。


 あと米は市場をみた感じ無かった。


 キッチーナに米という食材を知らないかと聞いたら知らないと言われたのでここら辺では生産してないのらしい。


 市場は円状になっていて町の中心で東西南北に道が伸びており、南に進めば冒険者ギルドのある道へと繋がり、北に行けば中級市民が多く生活する居住地域や奴隷商館等、役場があるらしく、市民になるための税を納めるのに行くくらいで頻繁に行く場所でも無いらしい。


 その更に北には上級市民……町の行政権限を持つ金持ちや公爵領内で準貴族(騎士とかユンカーとか言われる地主貴族)と呼ばれる人達が生活しているらしい。


 上級市民には中級市民として長年活動していることや一定以上の資産を持つこと、貴族に準じる地位を公爵や王国から認められた者と決まっているので……日本に例えると貴族院があった頃の議員さんと考えれば近いかもしれない。


 そんな縁の無い話しを聞きながら、キッチーナがオススメと言われた市場で売られているバケットサンドを購入し、昼食として軽く休憩を挟んで西側のエリアに向かう。


 西側エリアは下級市民の居住地域でお店がポツポツあるくらいで宿とかも殆ど無く、目ぼしい物は無いと思ったが


『ここのエリアには2箇所凄いのがある。まずはここ』


 キッチーナが指差した先には冒険者ギルドよりも大きな建物が建っていた。


『魔法ギルド……魔法を司る機関で魔法を勉強するならここに加入する必要がある』


 キッチーナ曰く加入条件は適性がある事らしく、授業を受けるのに学費が必要なのだとか……冒険者ギルドで受講できる技術よりも値段が高いが、覚えることができれば便利だし、冒険者からも引っ張りだこになるらしい。


『カネ達は魔法を使えるから余計なトラブルを避ける意味でも加入だけはしておいたほうが良い』


 と言われた。


 今回は町を回ることが優先なので見送るが、近い内に必ず行こうと決めるのだった。


 西エリア最後に見せられたのは立派な教会だった。


 教会では死者の鎮魂や神の教えを説いており、キリスト教に近い教えをしていた。


 ただ少し違うのは悪の定義で異教徒を悪とはせずに魔王とその眷属を滅ぼすべき悪としていた。


『魔王とその眷属?』


『カネ達は平和な所だったから知らないと思うが、人類に仇を成す強大な存在は魔王と呼ばれ、人々を堕落させたり絶滅させようと疫病を流行らせたりしてくる存在で、その眷属は魔王によって姿を変えられた元は人類だった存在で不老不死や強力な魔法、何でも治す力と引き換えに魔王の眷属になり人類の仇をなすようになった存在だ』


『堕落してしまえば教会や冒険者ギルドから討伐対称に指定され大きな災いや新しい魔王になる前に討伐しなければならない。大昔に存在したと言われる大魔王は国を3つ滅ぼし、大陸に住む人を10分の1まで減少させたとも言われている。最古の勇者が討伐に成功したらしいが封印されただけでまだ生きている可能性もあるのだとか……』


 あとキリスト教との違いは一夫多妻を認めていることや性に対して寛容なところもだろうか。


 大魔王のせいで人口が激減したのと迷宮で結構な勢いで人が死ぬので産めよ増やせよが基本らしい。


 今は人口は元に戻り安定期に入った国が多いらしい。


 特に大きな戦争も無く、平和な時代が続いているのだとか……。(多少の内紛はあるらしいが)


 あと教会の役割として呪いがかかってしまった場合の解呪や産婦人科の役割も担っているらしい。


 西のエリアも見て回り、町の外についても軽く教えてもらうのだった。

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