バーガータウン案内 1
爆睡も爆睡……朝ドアがノックされるまで目覚めることができなかった。
慌てて服を着てからドアを開けると中園さんがおはようと声をかけてきた。
「お、おはよう」
「もう少しで朝食の時間だから靴を履いて準備した方が良いよ」
そう言われたので、靴を履いて、ベッドのシーツや毛布、掛け布団を畳んでベッドの上に並べ、下の階に降りる。
食堂からはいい匂いが漂っている。
俺が最後だったらしく一部の人はもう食べ始めていた。
俺もカウンターから料理の乗ったオボンを受け取ると席に座る。
朝食は目玉焼きが2つに分厚いベーコンが3切れ、白くて柔らかい丸いパンが3つ、スープはポテトのポタージュにコップには紫色のジュースが入れられていた。
テーブルには蜂蜜、リンゴジャムとブルーベリージャム、よくわからないジャムの4種類が卓上調味料として置かれている。
横に座っていた佐々木によくわからないジャムの味を聞くと佐々木は食べてみろよと勧められたのでパンに塗って食べてみるとシャリッとした食感が口の中で鳴った。
「玉ねぎジャムか! これ!」
日本ではなかなか見ない玉ねぎのジャムで砂糖の甘さと玉ねぎの辛さが美味いこと調和が取れていた。
オニオンドレッシングに近い味わいかもしれない。
パンにも合うが、どちらかと言うと昨日のハンバーグのソースとしての方が合いそうである。
「これはこれで美味しいけど」
まぁパンは3個あるので他のパンはリンゴジャムとブルーベリージャムを付けて味わう。
最後に残ったスープを飲み干し、皆外出の準備を始める。
宿の裏の広い空間で体操をしたり柔軟や軽く筋トレをしていて時間を潰す。
30分位するとニーナが裏に回ってきて依頼を受けた冒険者の方が来ましたと伝えてくれた。
宿に戻るとラフな格好をしたキッチーナとその仲間の人が待っていた。
『キッチーナ久しぶり!』
『よぉカネ、無事に外に出られたか! 良かった良かった。昨日の夜にギルドの職員から個別依頼が来ていると言われた時には何かと思ったが……何が仕事になるか分からねぇな! 冒険者をやっていると……ふとした縁が仕事になるからな』
『今日はバーガータウンの町案内をお願いしたいけど4つぐらいのグループに分かれるからそれでいいか?』
『ああ、もちろん。一応契約の確認だ。1日町案内、昼食と夜食付きで1人100Gに間違いないな』
『ああ、報酬は後払い。内容が良かったら追加報酬を払う感じで』
『OK、契約成立だ』
俺達は朝食後に決めた班に分かれる。元男子と女子はごちゃ混ぜで、俺の班は前田先生、宮永さん、中園さん、藤原さん、飯田、オタク、元サッカー部の加茂を加えた8人になった。
担当してくれるのはキッチーナらしい。
『ものの見事に美女ばっかりだな……これじゃあ俺ハーレム野郎って噂されそうだ』
『そういう迷惑料込みで高値を支払ってるから許してくれや』
『まぁな! 案内で100Gは旨すぎるから頑張らせてもらうわ……何処か必ず回っておきたい場所とかはあるか?』
『服屋は行きたい。あとこの町は1日で回りきれる広さなのか?』
『うーん、頑張れば1日で行けると思うぞ。とりあえず夕食を食べたらここに戻ってくるイメージで案内するわ』
キッチーナは俺達の班を連れて案内を始める。
『まず冒険者ギルドに行く道から説明していくぞ』
冒険者だと一番通う回数が多くなるのは冒険者ギルドになるので、冒険者ギルドに行く道の説明を受ける。
『まず冒険者ギルドがある地域には冒険者をメインにした商売をしている店ばかりだから宿、酒場、飯屋、売春宿が殆どだ。言っちゃ悪いがこの町で一番治安が悪い地域だ』
冒険者ギルドに行くまでの道で行きそうなのは飯屋くらいか……パスタが美味い店があるらしい。
あと酒場兼遊技場があるところもあり、そこではビリヤードやダーツが楽しめるらしい。
あと酒場に行くと踊り子や吟遊詩人の方が踊ったり、各地のニュースを広めてくれるので情報を仕入れるなら酒場に行った方が良いと言われた。
『あと冒険者のパーティーを集める時も酒場はよく活用されるぜ。冒険者ギルドの掲示板は夕方になるとパーティー募集の張り出しの板に変わるんだ。カネ達みたいに強い奴はなかなか居ないがパーティーを組むことを考えているんなら夕方以降の掲示板を見て、書かれている居酒屋に行って、そこで話し合いをするんだ。依頼を書いた張本人とマッチングすることもあれば、その場に居合わせて意気投合して……なーんてこともある。俺のパーティーも最初はたまたま居合わせた酒場で話したら意気投合してかれこれ4年も組んでいるからな』
『なるほど』
冒険者ギルドに到着すると人でごった返していた。
『朝に依頼の掲示板が更新されるから朝から昼前までのギルドはこんな感じだ。ただお前さん達は特別冒険者になったから2階に行けばギルド側から処理して欲しい依頼が言われるハズだぜ。ごった返しには紛れ込まなくて良い』
『冒険者ギルドの周りの建物は冒険者ギルドの関連施設。オークション会場や商人の出入り口、冒険者から買い取った品を購入する場所、冒険者ギルド主催の勉強会やスキル習得を目指す技術訓練所、新人冒険者を育成する教練場なんかがある』
冒険者ギルドの本館も大きいが、その周りの建物も十分大きく、人の出入りも激しい。
冒険者ギルドから先に進むと迷宮が3箇所ある町の出入り口に近づく。
そこら辺のお店は武器屋や防具屋、鞄屋等の冒険者の必要な道具が一通り購入できる場所になっていた。
武器屋に入ってみると、鉄製の剣やメイス、斧に素材採取用のナイフなんかが並べられていた。
だいたい800Gから2000Gといった感じで、あくまで量産品といった感じだろう。
防具屋も似た感じで、俺達みたいに胸が大きい人は特注の鎧を作る必要があるので最低3000Gするらしい。
正直防具に関しては今着ているドレスが切れたり、千切れても再生するので困っていない。
アームシールドとかも売っているが、翼でガードした方が強いしなぁと思う。
一番有用だと思ったのは鞄屋で、バックパックみたいな大きなリュックが置いていた。
値段は2000Gするものの、自衛隊の背嚢みたいなバックパックが売っていた。
『おう、大容量のバックパックだ。大量の鉱石だったりピッケルとかもバックの後ろのベルトで固定することもできるし、だいたい1週間分の食糧や毛布とかも入れることができる優れものですぜ』
横のポーチも合わせれば65リットルくらいの容量がありそうだ。
俺は翼があるので背負う時に少し時間がかかりそうであるが、これがあれば便利そうだと思い、鞄屋の親父にこれは何個も在庫があるかと聞くと
『なんだ嬢ちゃん欲しいのか? 在庫は10個あるし、なかなか売れねぇからなぁ。近々買うんだったらキープしておこうか?』
俺はお願いしますと言い、明日買いに来ると約束し、名前を書いてキープしてもらった。
他には異世界ではお馴染みのポーション屋もあり、入ってみるとポーション屋というよりは薬局っぽい。
毒消し、麻痺直し、止血用包帯……飲むだけで傷が回復するようなポーションは1個5000Gと高い値段で売られていたし、あくまで外傷にかけて使用するので内臓が傷ついていたらアウトだし、欠損も止血にはなるが腕が生えるとかでは無さそうだ。
あとは精力剤や避妊薬、性病の治療薬から風邪薬なんかも扱われていた。
腸の清掃や便秘改善の為にミニスライムもちゃっかり売られていた。
『ここまでが冒険者ギルドから伸びる通りだな。次は下級市民や商人が多く生活しているエリアに移動するぞ』
俺達は十字路を町の中心部に続く道へと入るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます