お酒の味

 夕飯の時間になり、キッチーナのオススメの店を頼むと酒場だった。


 ただ遊技場があるタイプではなく居酒屋に近いかもしれない。


 そこでキッチーナは料理を次々に頼んでいく。


 どうやらこの店は複数人で来るのが普通らしく、周りを見るとピザが1ホール来ていたり山盛りのフライドポテトだったりハマスというソースにナンみたいなのを付けて食べる料理だったりうさぎの足揚げという料理もある。


 頼めばポークステーキも注文できるらしいが、今回はピザを色々な味を5枚注文し、フライドポテトとハマスも頼んだ。


 飲み物だが酒場なので酒が普通らしく前田先生に飲酒はどうなのか聞くが


「日本でも無いですし飲んでも私は怒りませんよ……ただ飲み過ぎて他人に迷惑をかけるのは駄目ですがね」


 と言われた。


 なので全員ワインを注文し、少しすると料理とワインが運ばれてきた。


 ピザがだいたい1枚3G、山盛りのフライドポテトが1G、ハマスは2Gでワインが1杯ジョッキで2Gらしい。


 木製のジョッキの中にワインが並々入っている。


『じゃあいただこうぜ!』


『あ、キッチーナ! こういう時に俺達の国では乾杯って言うんだ』


『そうなのか? じゃあ乾杯!』


『『『乾杯!』』』


 ジョッキを当てて、軽く飲んでみる。


 最初に感じたのは渋みで、次に甘みが来る。


 ぶどうジュースとは違いアルコールが口の中に広がり、それが重みを与えてくる。


 舌の上で飲んだワインを転がしてみるが、渋みがどんどん無くなり甘みが強くなり、後から鼻に抜ける風味が出てきた。


 前田先生は酒を飲み慣れているからか結構勢いよく飲んでいた。


 それを見てキッチーナが飛ばしすぎるなよとアドバイスしていた。


 ゴクリとワインを飲み込むと重みに感じていたのが胃の中にスッと溶け込む感じがしてじんわり体があったかくなるような感覚がした。


 ほろ酔いってこんな感じなのかな〜と思う。


 一旦酒は置いておいてピザを食べる。


 トマトソースとチーズがたっぷりかかったピザからで、上にはハムが1枚乗っているだけとシンプル。


 食べてみるがもちっとしていて耳の部分はずっしりと重みがあり、食べ応え抜群。


 これにワインを飲むとさっきの渋みが料理と調和してトマトの酸味が混ざり、美味しく感じる。


 これなら沢山食べられそうである。


 ちなみにフライドポテトは細切りではなく厚切りのが出てきて、塩かケチャップみたいなトマトソースか、ハマスのソースを付けて食べるのが良いらしい。


 せっかくだからまずは塩で……うん、美味しい。


『なぁカネ、冒険者としてこれから生活していくと思うが何をしたいとかあるか?』


『何をしたいか?』


『ああ、他のメンバーにも言っておくが、冒険者は命がけの職業だ。特に迷宮に潜る場合はな。その分金を稼げるが、稼いだ金で何がしたいかというのも大切になってくる。飲む、打つ(賭博)、買う(娼婦を)で冒険者の殆どは使う事が多いが、迷宮の深部まで潜れるお前らだ。金は大量に転がり込んで来ると思う』


 ぐびっとキッチーナは酒を飲む。


『冒険者としての高みを目指し技能を習得するのでもよし、使える魔法の種類を増やすために魔法ギルドで高い学費を支払って勉強するのでも良し、金を貯めて土地持ちを目指すってのもある』


『土地持ち?』


『郊外を軽く見て回ったろ?』


 教会を見て終わった後に確かに郊外を軽く見て回った。


 殆ど畑しか無かったが、小麦ばっかり育ててるのかと思ったが、綿花や芋、野菜と結構色々な種類が育てられていた。


 ただ畑は広大で本州の農家よりは北海道の大規模農家に近いかもしれない。


『金を貯めて土地を貴族から借りて作物を作る。税を支払う必要があるが、豪農になればダンジョンに潜るよりも金になることもある。俺は年齢的にそんな金は貯められそうに無いが、冒険者ギルドの剣術指南役になるために実績を積んでいる感じだ』


『キッチーナ、迷宮を購入することはできるのか?』


『できるかできないかで言えば借りることはできる。僻地の迷宮になるし、迷宮は冒険者ギルドの管轄だ。相当ふっかけられると思うぞ』


『なるほど……ありがとう』


 オタクがキッチーナに錬金術とかは無いのかと聞く。


『王都で盛んな学問って聞くな……バーガータウンに錬金術師が居るとは聞かないが』


『そうでござるか……』


『なんだなりたいのか?』


『いや、居たら面白そうだと思っただけでござる』


『ふーん』


 俺はワインを飲み終わり、おかわりを頼む。


 キッチーナや前田先生もおかわりを頼み、ごくごくと飲んでいく。


『よぉキッチーナ! ずいぶん綺麗なねーちゃん達と食事してるじゃねぇか!』


『俺等も混ぜてくれよ』


 現れたのはじゃがいもの様な頭と顔をした男2人でキッチーナが


『悪い奴じゃねぇ。飛竜ハンターのドットとグッド兄弟だ』


『兄のドットだ!』


『弟のグッド!』


『『2人合わせてドッド兄弟!』』


 漫画とかで出てくる冒険者ギルドで主人公に絡んでくるチンピラにしかみえねぇ……。


『どっこいしょっとキッチーナは真面目だから夢を持てとかそう言う話しや将来について考えろみたいな話しをどうせしていたんだろ?』


『硬い硬い。まぁ先輩冒険者として竜人の嬢ちゃん達にアドバイスをするなら迷宮は色々巡った方が良いぜ。ステータスのレベルが1箇所に集中した冒険者よりも複数の迷宮を潜った冒険者の方が伸びる傾向があるぜ』


『経験が多く積めるからとか偉い学者が学説を説いていたが、経験則で冒険者の間では常識だ。まぁ嬢ちゃん達の強さがどれくらいなのか分からねぇから何ともいえねぇがな』


『ちなみにカネ、レベルってどれくらいなんだ?』


『いま65だな』


『『『ろ、65!?』』』


『おいおい金髪の嬢ちゃん……まじか……』


『え? 他のは?』


 58、49、60、55と皆言っていく。


『ガハハ! なんだよ猛者じゃねぇか! 勇者とか超人じゃなければ30代で50レベルまで上がれば上々ってのが普通だ。50超えてれば飛竜も倒せるんじゃねぇか?』


『ドット、この嬢ちゃん達ソレンス迷宮の第8層から帰還してるくらい戦闘力あるぞ』


『ひゅー! バケモンじゃねえか! 超人側かよ!』


『ただ今日冒険者になったばかりの初心者ではあるから先輩風は吹かせられるぞ』


『よせキッチーナ、超人に先輩風吹かせるなんて虚しくなるだけだ』


 その後はドッド兄弟から一応冒険者の心得や冒険の際にあったほうがいい道具を聞いて、楽しく会話して夕食を終えて酒場を出た。


 キッチーナの案内で宿に到着し、キッチーナに依頼完了の手続きをする。


 すると他の班のメンバーも帰ってきて全員揃ったのを確認してからお金を支払った。


『また頼むわキッチーナ』


『おう、何かあればよろしくな』








 入浴しながら皆と情報交換を行う。


 だいたい同じ様な内容だが、とある班は奴隷商館の店の前まで行ったらしく、暗い感じの店なのかと思ったら、小綺麗で奴隷らしい人も檻の中みたいなのではなく、首輪があるだけで店の前で掃除をしていたりしていたらしい。


「奴隷制は悪だと僕たちの常識ではなるけど、借金が膨らんだりしたら奴隷になって稼ぐというのが一般的らしい。僕らが想像している奴隷とは色々違うらしい」


「前園君、こちらにはこちらのルールがありますので政治的な事は異世界の人の前で口にしてはいけませんからね。余計なトラブルを招きます」


「はい、気をつけます前田先生」


「皆さん明日からは自由行動になりますが迷宮に潜る際は1人ではなく3人以上でなるべく潜るようにしてください。それ以外は先生が口を出すことはしませんので」


「ちなみに前田先生はどうするのですか?」


 俺が質問すると


「私は冒険者ギルドで行われている講義を受講しようと思います。剣の扱い方とか鉱物の見分け方とかは習っておいて損は無いと思いますのでね」


 そう言われて俺も頭の中で予定を組み立てていくのだった。

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