石造りの階層と森の階層

「なんか鞄みたいなのが色々あるね」


「あと鉄製の剣みたいなのもあるな……」


 オークが居た部屋を物色すると鞄や武器が物陰から出てきた。


 中身は皮でできた水筒の様な物や干された肉、軟膏みたいな物、宝石みたいなのが少し入っていた。


「漁られた跡があるから美味しい食べ物系は既に食べられた後なのかな?」


「オークでも肉が残るってことは干し肉は美味くないのか?」


「……これカビているぞ」


 干し肉をよく見ると乾燥が甘いのか、元は普通の肉だったのがここに流れてくるまでに腐って干し肉みたいになったのかよくわからないが、鞄が複数個あり、その作りが均一っぽいので、何処かで人の手で作られ、それをオークが運んできたっぽい。


 そうなると冒険者みたいな異世界人がダンジョンに足を運んでいることになる。


「大きな発見でござるな」


「となると上の階層もしくはオークが動く範囲には異世界人が行動していることになるよな」


 俺の発言に皆頷く。


 予想よりもこのダンジョンの階層は無いのかもしれないし、異世界人とのファーストコンタクトも早いのかもしれない。


「となると異世界人がこのエリアに来ない理由が何かあるか……」


「いやどう見ても飛んでくる鉱石のせいだろ。異世界からしたら鉱石でダメージを受けると考えた方が良いと思うぞ」


 野村の発言にオタクと中園さんも頷く。


「中園さん、オークを倒してレベルは?」


「3レベル上がったよ」


「5体で1レベル……ゴーレムと比べると経験値効率はやっぱり低いな」


 俺の言葉にオタクは頷きながら


「やっぱり上の階層に上がるほどモンスターは弱くなっていくんでござるな……」


 と言う。


 確かに相性有利とかでもないオークを中園さんでも一撃で倒したのを考えると上の階層ほど弱くなっていっていると考えざる得ない。


 とりあえず漁った物で使えそうな物は水筒くらいだったが、熱湯で消毒してからじゃないと使う気にならず、全部部屋の中央に纏めておいた。


 そしてこの部屋であれば休憩ができそうなので、出入口を土で塞ぎ、仮眠をとったり、燻製肉を食べたりと休憩にした。







 4時間くらい休憩をした後に探索を再開し、紫水晶の生えていた階層から更に上の階層に向かった。


「おお、石造りの整備された道っぽくなった」


 ザ·ダンジョンと言う感じの石造りの床や壁のダンジョンへと変わった。


 天井には光る球みたいなのが埋め込まれており、今までがピラミッド以外は自然な感じが多かったが、ここはとにかく人工的な印象を強く受けた。


 歩いていると煙みたいなのが渦巻きだし、渦が静まると、二足歩行の犬の様なモンスターが現れ、襲いかかってきた。


「ふん!」


 俺は手を手刀にしてから犬型モンスターの首を跳ねると、首は勢いよく空中に飛び、制御を失った体はびくびくと数回ビクつくと、煙になって体の殆どが消えてしまった。


 後にはゴーレムやミイラと同じ様な宝石と肉の塊が残っていた。


「ここにきてドロップアイテム制でござるか?」


 オタクにどういう事か聞くと、異世界のダンジョンはモンスターが動物の様に殺しても残るタイプと今目の前で起こった様に素材だけが残るタイプがあるらしい。


 普通両方が起こるダンジョンというのは創作物で見たことが無く、このダンジョンでは両方が起こっている事の証拠になりうるとオタクは言う。


 ただ俺はそれなら


「今倒したのが生まれたてだったから体をしっかり形成する前に倒したから身体が崩れたんじゃないか?」


 と聞くが、宝石が残ったのが気になると言う。


 首長竜やバロメッツ等のモンスターは宝石の様な物が出てこないし、ゴーレムやミイラと同じなら肉が残ったのが違和感が凄いとオタクは言う。


 とりあえず何体も倒さないと説明がつかない為にダンジョン探索を再開した。







 オーク2体、コボルト? 5体、化け猫(人型の猫擬き)を6体倒したが、オーク以外のコボルトと化け猫は倒すと宝石と素材を残して消えてしまった。


 モンスターによってどうやら違うらしい。


 ちなみにコボルトも化け猫もドロップするのは肉である。


 人型というので食べるのは戸惑っていたが、オタクが火炎放射で炙って食べてみたところ


「鶏と豚の中間みたいな味がする……あとドロップした品だからか血の味も全然しない」


 そう言われ、俺、中園さん、野村もドロップした化け猫の肉と共に炙って食べてみると、確かにコボルトの肉は鶏と豚の中間……鶏のもも肉と豚のバラの部位を合わせたような食感がして普通に美味かった。


 化け猫の方はササミの様なさっぱりとした味で、弾力ある肉質をしていた。


「美味しいんだけど犬と猫みたいな見た目を考えると食欲は進まない……」


「まぁそれが普通の感覚だし……まだ肉余っているけど燻製とかにしている暇は無いから残りは埋めていくしか無いな」


 俺の言葉に皆同意して、土魔法で肉を埋める。


 その道中に宝箱があり、罠の確認をしてから開いてみると


「鋼のナイフか? 手に持つと力が25上がったけどスキルとかは無さそうだな」


「一応何かに使えるかもしれないから持っていくか」


「野村、そうだな」


 俺は野村の言葉に頷き、腰の紐にナイフを結びつけた。


 宝箱の質も下がった気がする。


 最下層と地底湖の階層はミスリル、ピラミッドは効果の高いミサンガ、そしてこの階層では鋼である。


 順々に質が下がっている感じがする。


 そしてこの階層でも異世界人とは出会わず、血痕由来と思われる黒いシミがあったりしたが、それ以上の手がかりは見つけられなかった。


 そうこうしていると上の階層に繋がる道を2時間後に見つけ、軽く休憩をした後に上の階層に向かうのだった。










「んん? 森」


 次のエリアは森の様になっていて、中央に巨大な木があり、そこから上のエリアに繋がっていた。


 天井があるのでまだダンジョンの中だと思うが、最下層並みに明るく、植物が生い茂っているので食べられる植物も多そうである。


 ただ俺達は先に進むことを目的としているので飛行のスキルで飛ぶと、木の中にいたのかプテラノドン擬きに攻撃された。


 とりあえずぶん殴って撃墜したが、飛んでいる最中に巨大樹の木に所々に穴があることに気が付き、中を覗いてみると木の中がくり抜かれて階段になっていた。


「おい、階段があるぞ」


「本当だ……中から残りは歩いてみるか?」


「そうでござるな。その方が異世界人と出会えるかもしれないでござる」


 というわけで窓の様な穴から巨大樹の中に入り込み、階段を登るのだった。



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