トラップ宝箱

「じゃあ今日はよろしくでござるよ」


「金やんにオタクに中園よろしく〜」


「み、皆今日はよろしく」


 朝の体操を終えて、それぞれ班行動を開始すると、地底湖フロアでレベリングをするメンバーとして今日はオタク、宮永さん、中園さんと一緒に行動することになった。


 宮永さんは赤色のヘアバンドを巻くようになり、水色の髪の毛を纏めている。


 クラスメイトもヘアバンドを何人かは巻いているが、何人かはスカーフみたいに首に巻いていたり、腕に巻いていたりと様々である。


 体に触れていればどこでも効果が発揮するらしく、オシャレアイテムになっていた。


 オタクも紫色のヘアバンドを首に巻いてスカーフ代わりにしていた。


「できれば近接武器の1つでも欲しいでござるな」


「マイ武器ってやつか?」


「いや、素手でモンスターを攻撃するのが嫌なだけでござるよ」


「まぁでも今日のパーティーはバランスが良いんじゃない? 全員土魔法を使えるし、私は水魔法を、中園さんと金やんは回復魔法を使えるから継戦能力も高いし」


「できれば今日で一番低いオタクのレベルを10上げたい。俺も一昨日と昨日でレベルが20以上上がったからそれくらいいけると思うし、経験値増加系アイテムが出たら宮永さんとオタクに装備してもらう感じで」


「「了解」」


 他にも野村班と佐々木班とも地底湖フロアに行くまでは一緒だ。


 野村と佐々木はレベルが低いメンバー……女子組と運動が苦手な男子組を引き連れていた。


 ちなみに委員長は今日は運動ができるメンバーと湖の真ん中にある島で亀狩り、他の人は果実の収穫と動く木伐採となっていた。


 前田先生が果実の収穫の指揮をするらしい。


 そんなこんなで地底湖フロアに到着すると野村と佐々木に


「じゃあ俺は次のフロアの近くを探索するわ」


 と良い、2人は地底湖近くで離れながら探索をすることに決まった。


 地底湖フロアも結構広く、半円や三日月形を幾つも組み合わせたような形をしていた。


 なのでそれぞれ別の場所で探索していてもそうそうかち合うことは無い。


 奥の方に進んでいくと、俺達の前にさっそくゴーレムが現れた。


「皆の魔法の熟練度を上げておきたいから魔法を多用する形で……中園さんとオタクは穴を掘って、宮永さんは穴の中に水を入れておいて。俺はゴーレムを穴に誘導するから、そしたらタコ殴りで頭を破壊で」


「「「了解」」」


 作戦はうまく行き、ゴーレムは俺が誘導し、穴が近づいたら俺は新しく取った浮遊と飛行のスキルで空中移動をしながら穴を飛び越える。


 ゴーレムは急ブレーキできずに、穴に向かって突っ込み、水を大量に浴びると土の塊でできているゴーレムの体が崩れてしまった。


 作戦を変更し、宮永さんが水の塊をゴーレムにぶつけると、ゴーレムはドロドロに溶けて宝石を残して消えてしまった。


「相性が良かったんだろうでござるな」


 オタク曰く、ゴーレムの体が土なので水を浴びたら泥になって体が崩れてしまったとのこと。


「ゲーム風に言うなら弱点特効とか効果抜群ってやつでござるな。今の感じなら水の塊をぶつけただけでも崩れそうでござるな」


 俺はレベルアップしながったが、オタク、中園さん、宮永さんはレベルが1から3上がったらしいので残っていたスキルポイントを合わせて水魔法の中級まで習得した。


 俺はスキルポイントに余裕があるので、15ポイント必要な上級を水魔法と土魔法を習得してみた。


「金やん上級まで習得したの? 何か変化あった?」


「ちょっと今試してみるわ」


 俺は土の塊を出してみるとそれに更に魔力を込めると石に変化した。


「上級は性質の変化っぽい。水なら氷にしたりできる感じ」


「おお、水魔法が攻撃魔法に化けるじゃん」


「あと純粋に生成できる量も上がるっぽい」


「良いでござるな……魔法での攻撃手段が増えるでござる」


 皆スキルポイントが足りないからかそれ以上は上げないけれど、レベルアップしてスキルポイントが足りたら上級まで上げようと思うのだった。


「ちなみに上級以上もあるけど、スキルポイントが聖級にあげるまでに30ポイントも必要になる」


「うへ、コストが重いね」


「私だったら回復魔法を聖級まで上げたいな」


 中園さんは回復魔法や状態異常回復の魔法を極めたいらしい。


 スキルの整理をしたあと、探索に戻るとまた昨日には無かった宝箱が出現していた。


「あ、宝箱じゃん」


 宮永さんが宝箱に気が付き、いきなり開けようとしていた。


 オタクが


「罠があるかもしれないから気をつけるでござる!」


 と叫ぶが、宮永さんはお構い無しに開けてしまった。


 するとザシュっと鍵穴から槍が飛び出し、宮永さんの胸に突き刺さった。


「いぎゃぁあ!」


「宮永さん!」


 俺と中園さんは急いで近づいて回復魔法をかける。


 すると直ぐに出血は止まり、傷が巻き戻る様に塞がっていった。


「いてて……ごめん油断した」


「宮永さん気をつけてください! ビックリしました!」


「あはは、中園ごめんごめん」


「胸がデカくなっててよかったよ。肉で内臓まで届いてなかったから」


「胸が胸部装甲になった感じ?」


 タプタプと宮永さんは胸を触って感触を確かめる。


「服にも穴が空いちゃって……あれ?」


 ジュウウと言う音とともに宮永さんの穴の開いたドレス? は元の形に戻っていたった。


「「「ええ……」」」


 その場に居た俺と中園さん、宮永さんは驚いた。


 一方で宝箱から飛び出してきた槍を確認していたオタクは宝箱の大きさ的に槍が絶対に入らない大きさをしていることに気が付き、空間が歪められていたか、槍を無理やり入れて、箱が開いた瞬間に元の形に戻ったのがトラップみたいに作動したのではないかと説明する。


「宮永殿も今回みたいな罠があるかもしれないから宝箱があっても直ぐに開けるのは気をつけるでござるよ」


「オタクごめんね」


「金やん、この槍もおそらくミスリルで出来ているでござるよ。拙者達の服なんでござるが木を切り裂ける手刀でも破ける事がなかったのに、槍は簡単に貫通したでござる。となるとそういう金属……ミスリルになるでござる」


「このらの機械人形といい、宝箱から出てきた槍といい、ミスリル製の品が多いね」


「オタク、ミスリルってそんなにポンポン出てくるような物なのか?」


 俺の問いにオタクはNOと答える。


「ミスリルは異世界物でも物語の中盤から終盤にかけて出てくる金属でござるよ。秘境とかダンジョンの最奥から採取できたりする金属で、こんなポンポン見つかっていい金属ではないでござる」


「となるとやっぱり俺達がいつも生活しているフロアがダンジョンの最奥で、このフロアとかも奥だからミスリルの武器が出てきたりするのか?」


「たぶんそうなるでござる。拙者の仮説だと拙者達は凄く強い部類だと思うのでござるが……」


「うーむ……実際どうなんだろうな。比べる対象が居ないからどうしようもないが……」


 ミスリルがポンポン見つかるのはダンジョンの奥だからと考えれば上に行けば行くほどモンスターが弱くなっていくことになる。


 ただ今のところ機械人形が一番強いモンスターになるが……。


「わかんねぇな……」


「金田君、ゴーレム来た! 4メートル級が3体!」


「よっしゃあ水魔法の試し撃ちだ。3人とも撃ち漏らしたら俺がトドメ入れるからガンガンやってくれ!」


 水魔法で水の塊を投げつけて攻撃を始めるとゴーレム達は次々と体が崩れていき、宝石を残して消滅してしまった。


 相性があるかもしれないが、こうも簡単にゴーレムが倒せるとなると呆気ないと感じる俺だった。

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