ピラミッドの階層 4日目?終了

 階層を上がってみるとそこにはピラミッドの様な遺跡が鎮座していた。


 ピラミッドの上は上の階層と接続しているのか、天井と繋がっている感じだ。


「ピラミッド……この中を進めって事か?」


「中に入るのはまた今度にしよう……入り口も丁寧に正面にあるしな」


 俺達が居る場所から真っ直ぐ前にピラミッドの入り口が開いていた……いや、上から人が降りてくることを考えれば出口か? 


 俺達は周囲を軽く探索してみると、ここにも見たことが無い植物が生えていた。


「カブ?」


 白っぽいカブかダイコンの様な何かが地面から少し露出していた。


 俺は引っこ抜いてみると


「にんじーん」


 なんか喋った。


「にんじーん」


「いや……どう見てもカブだろ」


 バロメッツと言い、ここのモンスターは何か喋らないといけない決まりでもあるのだろうか? 


「にんじーんにんじーん」


「うるさいなお前……ちょっと黙れ」


 俺は土魔法でにんじんと喋るカブの周りを土で覆った。


 そうするとカブは喋らなくなった。


「なんだったんだいったい……」


「おーい金やん。こっちにも何かあるぞ」


 そう言われてそっちに向かうと巨大なシダ植物が当たりに生えており、1メートルくらいの若葉を野村が指差し


「なんかゼンマイに似てね?」


 と言われ、確かに野草のゼンマイに似ていると思った。


 白く綿っぽいのを纏っているのが若葉のそれに近い。


 でもこれだけの大きさだとアクが強く食べられないんじゃないかとも思う。


「とりあえず1本持って帰ってみっか……食えたら儲け物」


 俺が手刀で巨大ゼンマイ擬きを切り裂くと、野村と佐々木が倒れるゼンマイ擬きをキャッチした。


 あとはカブ擬きを幾らか収穫してそれを巨大な土の塊に埋め込み、喋れなくしてから運んでいった。


 帰りにもゴーレムと対峙したが、俺が土の塊を、野村はゼンマイを抱えていたので、手がフリーの佐々木が5メートルのゴーレム相手に綺麗な巴投げを決めて受け身の取れないゴーレムが背中から落ちて色々なパーツが分解し、そのまま首を引っこ抜いてトドメを刺して勝利していた。


 そんなこんなありながらも皆の所に戻ると、ちょっと早かったのか豪炎寺と原村さんが薪割りをしている場面だった。


「あ、金やん、野村、佐々木お帰り。早かったな……ってなんか凄いな」


「色々収穫ありだ。地底湖エリアの更に上にも行ってきた。これがお土産のゼンマイ擬きだ」


「馬鹿でかいゼンマイだな……一応アク抜きしてみるか。食べれなかったらごめんな」


「ダメもとだ。食えたらラッキーぐらいで持ってきた……それと金やんが面白いの持ってきたぞ」


「面白いの?」


「豪炎寺カブみたいなの取ってきたんだが、喋るし、にんじーんって叫ぶんだ」


 ズボッと土の塊から1本引っこ抜くと


「にんじーん」


 と元気よく叫び始めた。


「確かにカブだがにんじんと叫ぶな……まぁ半分に切ったら静かになるだろ」


 豪炎寺が石で作った包丁で切ると


「ぎゃぁぁ」


 と断末魔を上げてから静かになった。


「気分が悪くなる食材だな」


「なんか罪悪感が湧くな……」


 豪炎寺は切ったカブ擬きを食べてみると


「味はゴボウに近いのかよ……こいつも薄くスライスしてアク抜きした方が良いな。原村、亀の甲羅をいくつか準備してくれ」


「はーい」


 そう言って料理の準備を始めた。


 俺達は薪割りをやっておいて欲しいと言われて薪割りを交代した。


 さっそく片手斧の出番と俺ははりきるが野村と佐々木は微妙な顔をされた。


 薪を置いて斧を振り下ろすとスコーンと心地よい音と共に丸太が割れる。


「めっちゃ気持ちよく割れる」


 そう俺が言うと野村と佐々木も薪を割り始めた。


 スコーン、スコーンと音が鳴る。


「確かに」


「これは気持ちいいな」


 交代で薪割りをして休憩の時に豪炎寺の方を見ると鍋の中で灰汁に何等分かに切ったゼンマイ擬きを煮込んでいた。


「豪炎寺何やってるの?」


「ん、金やんか。アク抜き……灰を入れた水を煮込んでアクを出してるの。試しにさきっぽを食べてみたけどキュウリみたいな食感だったけど雑味が多すぎて食えたもんじゃねえから雑味を抜くためのアク抜き。そろそろかな」


 菜箸でゼンマイ擬きを取り出すと糸に縛り付けて川に流した。


「流水に1日浸せばある程度のアクは抜けると思うんだよな」


「なるほど……残りも同じ要領で糸に巻きつけて川に流せば良いか?」


「できるなら頼むが」


「おう、やっておく」


 豪炎寺は続いてカブ擬きの調理を始める。


 幾らかは明日も使うとのとこで地面に埋めておき、今日使う分は断末魔をあげながらどんどんぶつ切りにしてから軽く熱湯で湯がいた後で冷水でアク抜きをする。


 すると水が濁ってアクが抜ける。


 やりすぎると旨味も抜けてしまうのである程度したら水から引き上げて、テーブルに並べて乾燥させた。


 そうこうしていると他のメンバーも戻ってきて今日の料理が作られる。


 今日の狩猟組はワニ擬きを3匹倒してきた。


 採取組はいつもと同じ様に桃オレンジ、ピンクバナナ、牛乳ココナッツを取ってきて、別働隊がバロメッツを取ってきていた。


 あと元水泳部の梶原さんが鮭の様な魚を泳いで捕まえていた。


 曰く湖の中にいっぱい居るとのこと。


 鮭擬きは大きさが2メートル近くあり、普通の鮭ではなくキングサーモンに近いかもしれない。


 あと水草の昆布擬きを取ってきてもらって、今日はそれらの食材の一部を使って煮込んでいく。


 ダシはワニ擬きの手や鮭擬きの頭、それに昆布擬きをコトコト煮込んでいく。


 十分に煮込めばそれぞれ可食部位やカブ擬き、薬草などを入れて肉に火を通していく。


 最後に桃オレンジを輪切りにして鍋の上に置いて柚子鍋みたいに味を整えで完成。


 ワニ鍋である。


 それにオタクが豪炎寺に頼んで綺麗な水で育てたスライム絞めてからうどんの様に切って、麺代わりとして食べるようだ。


 皆流石にスライムを食べるのはどうかと思うので様子見である。


「いただきます」


 俺達は鍋を食べ始める。


 いい感じにワニの骨、昆布擬きからダシが出ていて魚介ダシの様な味わいになっていた。


 カブ擬きの食感はまさにごぼうみたいにゴリゴリしており、味もごぼうに近かった。


「うんめぇ! うんめぇ!」


 一方オタクはスライム麺を投入して食べているが美味しそうである。


「オタクどんな味がするんだ? スライム麺って」


「金やんも興味あるでござるか? 美味いから食べて確認したほうが良いでござるよ!」


 そこまで言うならと俺は豪炎寺からスライム麺をもらい、つけ麺みたいにして食べた。


 ジュル


「!?」


 食感はもちもちっとしているがコシがあり、そして一瞬でスープを吸ってスープにコクを足した様な味がする。


 ツルツルっと飲み込めてお腹にもバッチリ溜まる。


 これは美味い。


「きしめんと太いラーメンの中間みたいな食感で、スープとよく絡む。めちゃくちゃ美味いぞ」


 俺がそう言うと周りの皆もスライムをつけ麺にして食べ始めた。


 皆も美味い美味いと言って食べて、あっという間に鍋は空っぽになり、ピンクバナナの種をすり潰した粉と牛乳ココナッツを混ぜたミルクコーヒー擬きを皆飲みながら今日の報告会をする。


 と言っても変化があったのは梶原さんが湖の水中探索をして鮭擬きが沢山泳いでいることを確認した事と、手芸班がハンドバックを作れた事、そして俺達の更に上の階層の確認をした事についてだ。


 地底湖のエリアは機械人形にさえ気をつければレベリングに最適と判断し、明日からは俺と野村、佐々木の誰か1人と3人の4人班を作ってレベリングを始めようということになった。


 それに宝箱が別の場所であった事を踏まえてゴーレムや機械人形もゲームみたいにスポーンしている可能性があることを説明する。


 ちなみにオタクからゴーレムや機械人形だけでなく、首長竜やワニ等もスポーンしている可能性があると説明される。


 首長竜みたいな大きなモンスターをほぼ毎日倒しているのに翌日や翌々日には普通に居るため生殖ではなく生成されている可能性もあると説明された。


 あとはカブ擬きは喋ったり断末魔に人を不快にする効果からマンドレイクという伝説の植物かもしれないと言われた。


「マンドレイク?」


「叫ぶ人参みたいな野菜でござるよ。伝説上でござるが……食べれば精神の回復だったり、体の不調を払う漢方みたいな使われ方をすると書かれていたでござるから、ごぼうの様に栄養満点なのかもしれないでござるよ」


「なるほど」


 とりあえず報告会も終わり、明日の班決めを行ってから眠るのだった。



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