地底湖エリア探索
4日目、俺は野村と佐々木という武闘派2人と昨日に引き続き地底湖のあるフロアの探索を行っていた。
「よっこいしょっと」
平らな岩がある場所に3人で腰掛けて話し合う。
「まず2時間くらい探索してみてゴーレム8体を撃破。金やんが言うように首が弱点で倒すと頭から宝石が出てくるな」
「で、機械人形と言う奴とは出会わなかったな。レアモンスターってやつだったんじゃねぇか? 金やん」
「確かに一際強かったし、他のモンスターと違って武器を持っていたからな……レアモンスターかもしれない」
ゴーレムは野村の投石攻撃や佐々木の投げ技、関節技などの攻撃がよく効き、石を投げているだけでも簡単に倒すことが出来た。
俺も野村に習って投石の練習をしているが……。
「昨日あった宝箱は消えて昨日には無かった場所に宝箱が出現か……いよいよゲームみたいな話になってきたな」
「出てきたのはイヤリングが2組だったが、幸運が10と体力が200上がるし、経験値増加(大)と書かれていたな」
「両耳に着けないと効果が無いが強力なアイテムだな。このフロアは宝箱が出やすいのか?」
「かもしれないね」
正直元の世界でクラスメイト以上に2人と喋った事が無かったからこうして3人で話すのは新鮮である。
「金やんとこうして喋るのは初めてだな……佐々木は?」
「俺も初めてだ」
「あはは、まぁよく絡んでいる面子が違ったからな」
「でも陰キャっぽいお前が自衛隊に行こうとしてるって知った時驚いたぞ。てっきり大学に行くもんだと思っていたから」
「そうそう。放課後に鍛えてたんだろ? 3年になってから体つきが変わったもんな」
「あ、やっぱりそういうのわかるんだ」
「いや、金やん3年になってから一気に筋肉付いたから俺らじゃなくてもわかるだろ。なぁ佐々木」
「まーな。でもどうして自衛隊に? 勉強できない訳でも無いだろうに」
俺は家庭の事情というか兄弟が多くて大学に行くよりも家庭へ金を入れないと不味いからと話すと2人も納得したようだ。
「ならなおさら早く帰らねえと不味いんじゃねぇか?」
「あぁ……と言いたいんだがこの体だ。元の体はもう亡くなってるって可能性もあるぞ」
「あー、転移じゃなくて転生って奴か。オタクがどちらか詳しく探っていたな」
「オタク曰くすごい重要なんだと。普通こういう集団で異世界に行く場合目的が定められる場合が多いんだと。王様の目の前に出てきて、魔王を討伐すれば元の世界に帰すと交換条件を求められたり」
「新手の誘拐じゃねぇか」
佐々木は声をあげる。
「オタク曰くこういう誘拐の方が帰れるか帰れないかどちらにせよ転移だから元の世界も集団行方不明とかになっているらしいから元の世界に戻った時に幸せかどうかは別として肉体はあるらしい」
「その言い方だと今回の場合だと帰れない可能性の方がデカいのか」
「オタク曰く今回は集団転生に当てはまるらしい。だから魂が別の肉体に宿っているから帰るという選択肢がそもそも無いんだとか……まぁオタクの仮説だけどな」
「ふ~ん」
「野村! ふ~んてお前野球で大学入学できるくらい上手いし、プロにだって成れる可能性があったんだぞ! 努力してきたのがいきなり無駄になった可能性が高いのになんで落ち着いてられるんだ!?」
「落ち着くのは佐々木お前だ。金やんに言われなくてもこんな姿になって生活をしているんだ。もう帰れない可能性も考慮しなければならないだろ。俺が不安な様子を見せれば周りにも不安が伝播するから委員長と話して俺達も顔に出さないようにしているんだ」
「でもよ……家族にもう会えないかもしれないと思うと……」
「佐々木、それはお前だけじゃない。全員が同じ境遇だ。思っても口に出すな。お前も周りから見たらリーダー格なんだから」
「……悪い野村。取り乱した」
「金やん、となると前田先生が言うように全体のレベル上げとこのダンジョンからの脱出が当面の目標か?」
「ああ、スキルに異世界語がある様に異世界で言語を用いる生物が居るのは確かだ。異世界人はもしかしたら俺達よりも強靭な肉体をしているかもしれないし、異世界の住民からしたら俺達は不法入国の国無き民に等しい。存在を守ってくれる国が無い以上自分達の力を異世界人とのファーストコンタクトまでに上げていく必要がある」
「国無き民か……」
「前田先生とも擦り合わせるけど野村も佐々木も異国とはいえ人が生活していてある程度の文化がある方が良いだろう? ここで食べられるモンスターや植物も限りがある。毎日同じ料理では飽きるし、何より刺激が全くなくなる。安定を求めるもの良いが、それは基盤が出来てからだ。俺は原始人に毛の生えた生活をいつまでも続けるつもりは無いぞ」
「確かに金やんの言うようにいつまでもこの生活をするわけにはいかないな。となると前田先生の言うように外に出ることを最初の目標とするしか無いな」
野村はそう言いながら勢いよく立ち上がる。
「このエリアもそんなに広いとは思えない。できれば今日中に次の階層に向かう道を見つけておきたい」
「おう、野村の意見に賛成だ」
「俺も賛成」
俺と佐々木も岩から立ち上がり、休憩を終えて探索を再開するのであった。
「……金やんあれが機械人形って奴か?」
先頭を進んでいた野村が俺と佐々木を手で制して、先を指差す。
すると奥の方に赤い光が灯っていた。
「多分機械人形だ。まだこっちには気がついていないっぽいな。罠を張るか?」
「じゃあ金やんが罠を、俺が囮をやる。佐々木は補助を頼む」
「ガッテン」
「了解」
俺は足に魔力を集中すると勢いよく踏み込む。
すると3メートル先に穴が空いた。
「魔法って接触してないといけないんじゃなかったのか?」
「熟練度が上がったら出来るようになった。今だと熟練度が3だから3メートル先までっぽいな」
「上出来じゃん」
野村は手ごろな石を複数個集めると機械人形に近づいていった。
「どっせい!」
野村はステップしてから石を投げるが、石は投げられた瞬間から風切り音を発しながら飛んでいき、機械人形に当たるとドゴーンと石が砕け散り、機械人形の表面が陥没していた。
「おいおいゴーレムだと体が弾け飛んだ威力だぞ! 陥没だけかよ!」
機械人形は野村に気がつくと勢いよく襲いかかってきた。
機械人形の手にはカトラスではなく片手斧を握っていた。
個体によって武器が違うのかもしれない。
「野村ジャンプ!」
俺が叫ぶと野村は走り幅跳びの要領でジャンプをする。
野村は俺を飛び越えて踏み切った場所から30メートル以上離れた位置に着地する。
もちろん穴は飛び越えて。
機械人形は穴の手前で止まったが、隠れていた佐々木がショルダータックルで斜め後ろから機械人形を穴に落とし、俺は機械人形の上半身に大量の土を被せた。
土に埋もれた機械人形に俺達は飛びかかって俺と佐々木は両腕をもぎ取り、野村は頭を体から思いっきり引き抜いた。
するとジャラジャラと機械人形の体が崩れ始め、ただのガラクタに変わってしまった。
俺と佐々木の手には銀色に光る手斧に、野村は赤く光る拳大の宝石を握っていた。
「確かにこりゃ強敵だわな」
「この手斧もミスリルって金属なのか?」
野村の質問に佐々木が
「ちょっと実験してみるか」
そう言うと、手に持っていた片手斧を思いっきり壁に叩きつけた。
すると壁に深くめり込み、片手斧を引っこ抜くと斧の方には傷一つ付いていなかった。
「銀やアルミなら傷が付くだろうし、他の合金だったら重いだろうから……全く重さを感じないこの斧はミスリル製なんだろうな……野村も持ってみろよ」
「確かに凄い軽いな……斬れ味も良さそうだが、重さが無い分、力が必要だがな」
「薪割りには良いんじゃないか?」
「まぁこれだけ切れれば使えるだろうが……」
「武器として使いたいよな」
野村と佐々木はそう言うのだった。
穴を埋めてから先に進むと、上に続く道を見つけた。
だいたい上に続く道までまっすぐ進めばこのフロアを1時間程度で突破できるだろう。
「上は見ていくか?」
「そうだなこのフロアの先を確認しておきたい」
俺の問いに野村はハッキリと答え、先の確認をするのだった。
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