性欲の減衰ってやつでっさぁ
「なぁオタク」
「ん?」
「水浴びでさぁ、こう見た目が美少女になったじゃんよ」
「そうでござるな」
「オタクの体でもめちゃくちゃ興奮するかなって思ったけど前のお前の顔がちらついたり、思い出してこうスンッてなる」
「……大丈夫でござる。拙者も金やんの裸体見ても前の顔がちらついて興奮しないでござる」
「なんか声も顔も体も違うから興奮するものだと思ったけど違うんだな」
「……ちょっと待つでござるよ。女の子も元から可愛かった子がさらに可愛くなったり、美人になっているでござるが、そう言う子なら裸体を見なくても興奮するでござらんか?」
「確かにそれはそうだ……あれ? パニックになっていたのもあるが性的に興奮するって無かったぞ?」
「もしかしたら性欲の方もドラゴンになっているでござるか?」
「性欲もドラゴン……どういう事だ」
「物語とかに出てくるドラゴンって発情期が来ないと興奮しないみたいな事が多々あるのとドラゴンだから凄く長生きするでござるよ……それこそ1000年くらい……エルフとかが性欲があまり湧かないで繁殖能力が乏しいみたいな小説や漫画で見たことが無いでござるか?」
「確かに見たことあるな」
「そうでござろう。もしかしたらそういうのかもしれないと思ったでござるよ」
「なるほど……種族による性欲の減衰か……それだったら確かにこんな状態でも興奮しない理由が分かったな」
「これは皆に共有しておいた方が良いでござるか?」
「いや、あくまで仮説だからまだ良いだろう。さて汗も流し終わったからこれからどうするか?」
「拙者達みたいにスライムを体内で飼うのに抵抗がある人も居るかもしれないのと、前田先生みたいにスライムでビーズクッションみたいに使えれば地面で寝るよりも疲れが取れると思うでござるからスライムの捕獲に行かないでござるか?」
「そうだな。その前にスライムを捕まえておく穴掘らね?」
「そうでござるな。前田先生が気に入っているスライムも穴に入れておいた方がいいでござるからな」
「そうなると土魔法のスキルを取ってみるか? 穴を掘るくらいはできるんじゃないか」
「そうでござるな……5ポイントかかるでござるが、先行投資と考えればいいでござるか……でもそしたら金やん残り2ポイントにならないでござるか?」
「レベル上げれば大丈夫だろ。土魔法で穴を掘れたらバロメッツを捕まえたりするのも楽になるだろうし、色々便利だと思うからな」
「土魔法のスキルツリーを見ていたら土魔法の熟練度を上げていけば派生の魔法も覚えられるようになりそうでござるな。ゴーレム生成とかが土魔法の奥にあるでござるが選択不可能になっているでござる」
「本当だ……へぇ土壌改良とかの魔法もあるんだ……面白いな」
「土魔法は穴を掘るだけでなく土の壁を作ったりもできそうでござるし、土を固めて作った鋭利な土柱を槍みたいに使ってみても面白いかもしれないでござるな」
「よし、土魔法を覚えるぞ」
俺は土魔法のスキルを習得するとステータスの欄に土魔法(初級 熟練度1)と書かれていた。
「おお、頭の中になんか知識が入ってくる……違和感凄いな」
「車酔いをした時みたいな感覚でござるよ……ちょっと水を飲むでござる」
オタクは湖の水を飲んで酔いを覚ます。
「ふう、復活でござる」
「広場近くで穴が掘れるか試してみるか」
「そうでござるな」
俺達は湖から皆が集まる広場に移動する。
すると木を輪切りにしたテーブルができていた。
「あ! 金やんとオタクじゃん。水浴びしてたの?」
声をかけてきたのは宮永歩美さんという元から女子の子で俺が密かに好意を抱いていた人物だ。
前はメガネをかけていたのが印象的だったが、黒髪から水色の髪色に変わってやや右側に鬼みたいな角が2本並んで生えていた。
前までの顔は芋っぽかったけど、垢抜けた……いや目の大きさが大きくなったり鼻が少し高くなったりと元の顔の味を生かしながらも美人になったみたいな感じがする。
胸も前田先生みたいな爆乳ではないが巨乳なのが服の上からでもわかる大きさをしていた。
「宮永さんが作ったの? このテーブル」
「うん、手刀で動く木だっけ? それが余ったからちょっとしたテーブルを作ってみたんだ……と言っても木を輪切りにして火炎放射で表面を炙っただけなんだけどね」
炙っただけというが、表面はニスを塗ったように滑らかになっている。
何か他に加工した気がするが……。
「炙っただけではござらんな……それだとこの表面にはならないでござるよ……うーん……あ、首長竜の皮で擦ったでござらんか?」
「大正解! ザラザラしていたからヤスリ代わりになるかなと思ったら目の細かいヤスリみたいになったんだ。結構滑らかになったでしょ」
「宮永さん凄い!」
「ありがとう金やん!」
ニコッと宮永さんが微笑む。
確かにさっきの性欲が減衰しているからか興奮はしないけどドキっとはするな。
好意を抱いている相手にそれをやられると胸がドキドキする。
「宮永さんは今暇? 俺達土魔法の実験で穴掘るけど」
「え! 土魔法覚えたの! 他の子が魔法を習得したけど上手くできてなかったよ」
「魔力操作ってスキルを覚えないと魔法のコントロールが難しくなるっぽいでござるよ」
「じゃあ2人とも魔力操作を?」
「うん覚えた」
「覚えたでござるよ」
「私も覚えようかな……風魔法とか水魔法気になるんだよね〜」
「あれ? 宮永さんって美術部で絵をよく描いていたイメージあるんだけど彫刻の方もいけるの?」
俺はテーブルに置かれた木の器を手に取りながら宮永さんに質問する。
「本職は絵だよ。でも彫刻も多少はできるんだ〜」
宮永さんは美大に入学したいと前に言っていたので絵は美味いのは知っていたけど彫刻の方もできるとは思わなかった。
「多才だね」
「いやいや素人に毛が生えた程度だけどね! 金やんとオタクの土魔法やってよ!」
「おっしゃぁ!」
「うわ! 金やんやる気十分でござるな」
好意の人に期待されたらそりゃあな。
「じゃあやってみるぞ」
「あ、金やんもう少し広場から離れたところにするでござるよ。ここだとスライムをいっぱい捕獲しておくには狭いでござるよ」
「おお、悪い悪い」
俺とオタクと宮永さんは少し移動してから改めて土魔法を発動させる。
「よーし、穴よ!」
右足に魔力を溜めて一気に踏み込むと1立方メートルの穴が掘れた。
「おっし、イメージ通り」
「綺麗に立方体で穴が掘れたでござるな。土は周囲に盛られた感じでござるか」
掘った土は異空間に消えるのでは無く、周囲に散布される感じで固めて盛られていた。
俺は再び右足で壁を蹴るとボコっと土が掘られた。
一度穴を掘って、残りは蹴って穴を横や縦に広げれば塹壕とかも簡単に作ることができそうだ。
ちなみに魔法で掘られた地面は踏み固められたみたいになっていた。
耕すみたいな魔法を使わないと柔らかくはならないだろう。
「試してみるか! 耕せ」
そう言って左足を踏み込むと地面がボコボコと波打ってから普通に戻り、地面を触ってみると耕されていた。
「おお凄い」
「実験は成功でござるな」
深さは1メートルの4平方メートルの穴を掘り、そこにスライムを入れてみる。
スライムはぴょんぴょん弾んでいるが、流石に1メートルの高さがある段差は越えられないらしい。
というか弾むだけでなくコロコロと転がる動きもしているな。
何かが押さえつけていれば動かなくなるのだが……。
「これでスライムを入れておく場所はできたな」
「宮永さんもスライム捕獲に行く?」
「暇だから行く〜!」
ということで俺とオタクと宮永さんの3人で、昨日先生がスライムが居たと言っていた方向に進むのだった。
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