クリスマス・ミッション


「そっちはどうだった?」

「いや、正面突破は不可能だ。そっちは?」

「だめみたい。ベランダ側も完全に警戒されてる」

「そうか。残るは、屋根伝いに行ける出窓だが…」

「だめよ! 夜中に危ないじゃない! それに、あなたにもしものことがあったら、私——」

「でも、それしか方法は!」

「考えて! 考えるのよ! 誰も思いもよらないような、完全な侵入ルートを…!」

「もう考えたよ! でも!」

 絶望の表情で、男は叫び——それから、何かを思い出したように戸棚の奥を探った。

「これだ…これだよ!」

「なんてこと…これ、これしかないわ!」


   *


「あっ、プレゼントが来てる!」

「ほんとだ! やった、俺の欲しかったゲーム機!」


 翌朝、その一軒家の二階の子供部屋からは、兄弟の歓声が響き渡った。


「俺のほうはゲームソフト!」

「やった、あとで対戦しようぜ!」


 兄弟は嬉しそうにベッドで飛び跳ね——それから不思議そうに部屋を見渡した。

 部屋の床には散らばったビー玉に大小の鈴、ベランダ側の窓には空き缶で作った警報装置、出窓には水風船を吊した爆弾トラップ。


 サンタが出入りしそうな場所には、一通りの罠を仕掛けたというのに、それらの罠は何一つ作動していない。


「おっかしいなあ、絶対引っかかると思ったのに」

「うん、やっぱサンタは手強いなあ」


 兄弟はそう顔を見合わせたが、次の瞬間には「パパー、ママー!」「サンタ来たー!」と走って行く。


 そのパパとママが、いたずらっ子たちの罠に悩み、この家の設計図を引っ張り出し、とうとう見つけた「屋根裏の点検口」から、プレゼントを置くまでの苦労を、その笑顔で労るため。

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