同じ仕事


「ハワイのビーチにはさ…」


 薄暗い部屋。パソコンの青白い光に顔を照らされた男が、隣の男に呟いた。


「夜になると、ナマコがたくさんやってくるんだよ。ナマコ。知ってるか? あのぬめぬめした、でっかいイモムシみたいなやつ…」

「ああ、知ってるが…」


 同じくパソコンの画面を見つめる男がそう答える。


「でも、ハワイのビーチがナマコだらけだなんて話は、聞いたことがないな」

「そうだろ?」


 すると、男は表情を変えることもなく、うなずいた。


「朝になると、白いビーチは美しく、ナマコどころかゴミ一つない。何でか分かるか?」

「さあ?」

「それはな、観光客も来ないような早朝に、ナマコを片付けちまうからさ。大量のナマコを拾っては海に投げ、拾っては海に投げ——そんな仕事をやってるやつがいるんだ。ナマコだらけのビーチなんて、誰も来たいと思わないからな」


 そんな話をどうしていま、仕事中にするのだろう——隣の男の怪訝そうな顔に、男は初めて表情を変え、肩をすくめた。


「いや、俺たちのような仕事は、世界中どこにでもあるんだなってこと」

「…ああ」


 一瞬、隣の男は戸惑ったが、すぐに納得したようにうなずいた。


 パソコンに向かい、その画面をじっと見つめる男たち。


 彼らの仕事は、インターネットという大海から押し寄せる、ナマコたち——もとい、アンチコメントを削除し、SNSに動画に掲示板という、ビーチを美しく保つことだったからだ。

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