メッセージ
『マリちゃん、大好きだよ! 今日もお仕事、頑張ってね!』
とあるアイドルのファンクラブに入って五年、奇跡的に引き当てた「あなたのためだけ! ボイスメッセージ入り目覚まし時計プレゼント」の音声を聞きながら、マリは複雑な表情で、同封のカードを眺めていた。
あなたのためだけ——そう謳っているとおり、このボイスメッセージは、当選者であるマリ一人に向けられたもの。そして、その台詞は、マリが吹き込んで欲しい言葉をあらかじめ送り、その通りに彼が録音してくれたものだ。
だから、彼は、いちファンであるマリのことなんか知らないし、大好き、というのも、マリがそう言って欲しいと書いたから、そう読み上げてくれただけだ。そんなことは分かっている。
だから、せめて、それが読めないほどに小さい文字であったとしても、あるいは、度の過ぎたファンへの戒めであったとしても——『このメッセージは本人の意志とは無関係です』だなんて、そんな悲しいことは書かないで欲しかった、とそう思ったのであった。
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