「おやすみなさい!」


 父と母に元気よく挨拶をしてアリーシアは寝室に駆けていく。寝室の扉を開け、暗闇に静かに佇むベッドへ潜り込む。普段は1日が終わる寂しさと暗闇に一人となる心細さを感じさせるベッドが苦手だったアリーシア。しかし今日はそのベッドが夢の世界への入り口。アリーシアの目には虹色に輝いて見えた。


 夢の世界への興奮を抑え、ベッドの中で目を閉じる。そして白い鐘、フレットバーグの鐘塔のてっぺんに鎮座する大鐘を白くしたものを想像する。


 アリーシアは頭まで毛布を被って白い鐘が鳴り始めるのを待つ。


 夢の世界に行けたら何をして遊ぼうか。イアはちゃんと来れるだろうか。空を飛んだり、お菓子を山ほど食べたりできるのだろうか。


 考えているとアリーシアの意識が少しずつ眠りに落ちていく。アリーシアの想像も少しずつ夢が入り込んでおかしな方へ向かっていく。


 想像と夢が入り混じった微睡の中、その時は突然訪れた。


 ゴーン、ゴーン


 アリーシアの耳にはっきりと鐘の音が聞こえた。


 ハッとしたアリーシアは慌てて音の方へ振り返る。


 そこには鐘塔のてっぺんに鎮座する真っ白の大鐘があった。

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