第8話 小さな一歩

翌日、優也は愛理を外に連れ出した。

外出に不安を感じていた愛理だったが、優也が付き添ってくれるという約束のもと、勇気を出して家を出た。


優也はゆっくり愛理の車椅子を押す。

「どこ行くの?」

「近所の公園。」


公園のベンチに座り、二人はのんびりと午後の空気を味わった。優也はスマホを取り出して何かを見せてきた。

「何?」

「愛理のこと、みんな待ってる。」

それはクラスの一人一人からのメッセージ動画だった。


愛理は驚いた。優也が自分のためにこんなにも真剣に動いてくれていることが嬉しくて、

みんなの声が嬉しくて、

また涙が浮かんできた。


「……ありがとう。」

愛理は小さく呟いた。その声は震えていたが、少しだけ前向きな響きを含んでいた。


優也は笑顔で言った。

「俺はお前の味方だからな。どんなことがあっても、絶対にお前を見捨てない。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る