第5話 リハビリ
リハビリは想像以上に辛かった。
太ももまで覆う金属製の装具をつけ、
平行棒に手を添えて一歩一歩進むたびに、
関節が痛みを訴える。
「くっ……!」
愛理の顔に汗が滲み、声にならない痛みが漏れた。息遣いは荒く、肩が上下に揺れる。
「はっ……はっ……。」
吐く息に混ざる苦しげな音が部屋に響く。
優也はその姿を横で見つめながら、拳を握り締めていた。
「愛理、もう休め。無理しなくてもいいんだ。」
しかし、愛理はかぶりを振る。
「……これくらいじゃ、終わりたくない……。」
震える足を一歩進めるたびに、装具がカチャカチャと音を立てる。そのたびに顔をしかめながら、それでも彼女は進むのを止めなかった。
リハビリが終わると、愛理は椅子にぐったりと座り込んだ。肩で息をし、手のひらで汗を拭う。優也は隣に座り、そっと声をかけた。
「頑張ったな。すごいよ、お前。」
愛理はうつむきながら、小さく呟いた。
「ありがとう。でも、本当は怖いんだ。いつまで頑張れるのか、自分でもわからない……。」
優也は彼女の肩に手を置き、まっすぐに言った。
「お前は十分すごい。たとえ歩けなくても、踊れなくても、お前の価値は変わらない。」
その言葉に、愛理は少しだけ涙をこぼしながら、頷いた。
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