早速の試合
2
「それっ!」
「ナイスパス!」
「チャンスだ! 撃て!」
「……ふん!」
相手の放ったシュートを天が軽々と弾いてみせる。
「くっ!」
「さ、さすが、ゴールキーパー大国ドイツでもその才能を認められた、『東洋のイージス艦』こと外海天! なんてセービングだ!」
「シュ、シュートが入る気がしない……」
「ええい、諦めるな! どんどん畳み掛けろ!」
相手チームのベンチから監督が声を上げる。
「は、はい!」
「よし、もう一丁!」
「ナイス!」
「そらっ!」
「……無駄だ!」
相手の攻撃陣が素早いワンツーパスからコースを狙った巧みなシュートを放つが、これも天が弾き出してみせる。
「くっ……」
「まだだ! こぼれ球を拾え!」
「おう!」
「よし! 中にクロスだ!」
「よっしゃ!」
相手がサイドから中央にクロスボールを放り込む。
「よっと!」
「た、高い⁉」
クロスボールを昇がヘディングで弾く。ボールがこぼれる。
「こぼれ球だ! 拾え!」
「そうはさせないっての♪」
「うおっ⁉」
昇は着地と同時に鋭い出足を見せて、こぼれ球をカットする。
「さ、さすが、守備の国イタリアでも高く評価された、『太平洋の壁』こと畑昇! まさに鉄壁だ!」
相手チームのベンチが昇のプレーに舌を巻く。昇が照れくさそうに笑う。
「へへっ……」
「昇! ボールを寄越せ!」
「はいはい!」
昇が鋭い縦パスを送る。日が事もなげにトラップし、自らの下に収める。
「か、囲め!」
「……3人で良いのかい?」
「なっ⁉」
3人に囲まれても、日はボールを奪われることはない。巧みなステップで相手のチェックを華麗にかわしてみせる。
「さ、さすが、フランスでもそのテクニックを称賛された、『黒髪の貴公子』こと草加日! 3人がかりでもボールを奪えない!」
相手チームのベンチから感嘆の声が上がる。
「くっ、なにをやっている! もう1人行け!」
「は、はい!」
監督の声に従い、もう1人が日にチェックへ行く。日はそれを見逃さなかった。
「人数かけ過ぎだ……よっと!」
「!」
日から絶妙なスルーパスが旭に通る。
「ナイスだ!」
「と、止めろ!」
「ちいっ!」
相手のディフェンダーが旭の前に立ちはだかる。
「邪魔だ!」
「うおっ⁉」
旭が自分より大柄な相手を吹き飛ばして、ドリブルで突き進む。日が声を上げる。
「撃て! 旭!」
「おおっ!」
「‼」
旭の放った強烈なシュートがゴールネットに突き刺さる。
「さ、さすが、スペインで『闘牛』と呼ばれ恐れられたストライカー……なんていう突破力とシュートだ……」
相手チームのベンチが息を呑む。監督が呟く。
「くっ、創部したてのチームだというのに、まさか旭日昇天カルテットがいるとは……加えてイングランドでコーチ研修をしてきた芦田シャイン……一体どんな采配を振るうんだ?」
「……じゃあ、旭と日、それに、昇と天は交代ね♪」
「⁉」
シャインの采配に相手チームのベンチだけでなく、旭たちも驚く。
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