貨幣経済

私は貨幣経済に感謝している。愛していると言ってもいい。


経済と貨幣は切っても切れない関係に思えるが、意外にもそんなことはなく、貨幣のない経済も存在する。

物々交換の経済である。


物々交換経済は大変である。私はとても生きていける気がしない。

Amazonで物を買おうと思ったら、私からも、Amazon経由で物品を送らなければならない。しかも出品業者が価値を感じる物を選定して送る必要がある。

電車に乗るときだって、いちいち駅員か運転手か鉄道会社か、どこかわからないが、そのどこかに物品を渡さなければならない。


しかも、渡すための物品も、それを手に入れるには同じようなことをする必要がある。

それが無理なら、自分で作るしかない。農作物でも、工芸品でも、何でも良いが、なるべく多くの人が価値を感じるであろうものを作っておいて、それを持ち歩く必要が出てくる。


だがしかし、私は物作りがとても苦手だ。全く向いていない。以前、ひとりで同人誌やボードゲームを作ろうとしたことがあるが、いずれも途中で挫折した。グループでの同人誌や、出版物を出させてもらったことはあるが、私が作ったのは中身だけだ。本そのものはすべて人にお任せした。


その点、貨幣は良い。自分で作る必要がない。

しかも、会社とかいう場所に行って、仕事とかいう行為をすれば、半自動的に提供される。たとえ私の仕事がなんら価値を生まなくとも、だ(実際、私の本業は「検査」が大半なので、本当に何の価値も生み出していない)。


そんなわけで、私は貨幣経済に感謝している。

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