友人が「ランダム単語エッセイ」をやり始めたので追随して同じ単語でエッセイを書いてみる

黄黒真直

「力こそパワー」というジョークがある。

これに対する「物理学的ツッコミ」として、「力はフォースだ」というものがある。


物理学用語としての力の訳語は、PowerではなくForceを使う。というより逆で、英語のForceを「力」と訳した。そしてPowerは「仕事率」と訳された。


物体に力を加えると、物体は移動したり変形したり熱くなったりするが、そのときにエネルギーをため込む。そして力を加えた側は、逆にエネルギーを失う。このとき移動したエネルギーの量を仕事といい、1秒間に行った仕事の量を仕事率という。


力と仕事率は全く異なる概念だが、見た目は似ている。力と仕事率は比例するからだ。

同じ重さのものを同じ高さまで持ち上げるとき、素早く持ち上げた方が仕事率は高い。そして我々は、重いものを素早く持ち上げられる人間を「力持ち」と表現する。仕事率を計測することで、力の大きさを逆算しているのだ。


力と仕事率の混同は、我々素人に限った話ではない。なんと、物理学の用語自体に、その混同が見られる。

例えば「電力」は、電気の力ではない。電気の仕事率のことだ。

電子レンジで同じものを温めるとき、500Wの電子レンジよりも1200Wの電子レンジの方が早く温まる。このW(ワット)というのが仕事率の単位であり、これが高いほどエネルギーが素早く移ることを意味する。


正式な物理学用語ではないが、「馬力」もやはり、馬の力ではない。馬の仕事率のことだ。

1頭の馬が継続的に出せる仕事率を1馬力といい、現在の日本では、1馬力を735.5Wと定義している。


我々は500Wの電子レンジを動かすたびに、馬を0.6798頭働かせている。

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