第6話

「侵入者が突破だと!? 兵達は何をしている」

「それが……恐ろしい程の剣の達人で。とても人間業には思えません!」


 その言葉でピンときた。

 よかった。来てくれたんだ。


「馬鹿を申すな。人間じゃなければ何だって言うんだ」

「それくらい強いのです。どうぞ隠し部屋へお逃げください」


 ……逃げる? 一国の王子が? 兵士を見捨てて?

 呆れた。この国って本当にこのバカ王子を甘やかしまくってるわね。

 こんな人がいずれ王になった時、恐ろしいと思わないのかしら。ま、敵うわけないだろうから、ある意味逃げようとするのは正解かもね。


「よし、とにかく逃げるぞ。こっちへ来い」

 突然王子に腕を掴まれたけど、大人しく従うわけがないじゃない。


「情けないわね。自分の城が攻められているのよ。指揮くらいしてみせなさいよ」

「そ、そんなのは俺の仕事じゃない」

「ふーん……ね、さっき言ったわよね? 敵わない相手なら諦めるって」

「い、今はそれどころじゃないだろう」

 いきなり話を戻されて王子は明らかに困惑している。


「それどころ、なのよ。だって、彼だもの。私の大切な人」


 そんな私の言葉をかき消すかのように騒がしいかった廊下の音が、激しい嵐のように部屋の入り口にやってきた。

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