第5話
「で、どんな男だ? 俺との婚約をここまで拒む程の男というのは」
「あなたに言う必要ある?」
「俺が敵わない相手なら、引いてやらなくもない」
「本当!?」
「まぁ、あり得ないだろうがな」
自信ありげに王子の口が緩む。
王子はそれなりの美貌だけれど、それだけだと噂に聞いたことがある。
知性も剣の腕も人並だと。
誰にも負けないのはプライドだけだ。
ここの国の人たちは、そのプライドを大切に守ったりなんかするから、今回みたいな人攫いをしても、誰も注意したりしないんだ。身元不明の女性なんて絶対に婚約者にしたらいけないでしょう。
……あの人なら、絶対に王子に負けたりしない。
ずっと守ってきてくれたんだもん。
だけど、目が覚めた時には傍にいなかったし、今の私には探す術がない。
どこに行っちゃったんだろうか。もう、私のことなんてどうでもよくなっちゃったんだろうか。
森で一緒に過ごした楽しかった日々は、もう戻ってこないんだろうか。
私達はまだお互いに想いを伝えあえていない。
すぐに真っ赤になる彼がかわいくて、いつか伝えてくれるのを待っていたらこんなことになってしまうなんて。こんな事ならもっと早く伝えておけばよかった。
不安と後悔で心がざわめく中、外が騒がしくなったと思ったら、一人の衛兵が駆け込んできた。
「──申し上げます! 侵入者が正門を突破しこちらに向かっています!」
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