第4話 最悪の奇跡

まず最初に自己紹介をした。

龍美りゅうびだ。よろしく」

龍美さんは両腰に刀を装備していて、左目には眼帯をつけている。


そしてこれから俺たちは夜ご飯の調達に出かけることになった。

洞窟を出ると、外は薄暗くなっていた。


龍美「飯見つけてすぐ帰るぞ」


歩くこと15分。

果物のなっている木を見つけた。

その果物を採り洞窟に帰ると、龍美の様子がなんか変だった。

凄く焦っているようだ。


仁「どうしたんですか?」


龍美「…ペンダントを無くした」


仁「ペンダント?」


確かに龍美はロケットペンダントを首につけていた。


龍美「ああ。これから探してくる」


仁「じゃあ俺らも一緒に探します」


龍美「いや、俺一人でいい」


そういうと龍美は洞窟を出て行った。


仁「どうする?」


狐白「獣がいるかもしれないし、着いて行ったほうがええと思う」


朱凛「私も行きます!」


仁「危ないから朱凛さんはここで待っててください」


朱凛「さっきの私とは違います!それに私の能力は回復です。もし獣に襲われて皆さんが怪我をしてもすぐに治すことができます!」


回復能力?

最強じゃん。


3人で龍美を追うことにした。

洞窟を出て5分ほど経ったときだった。


ドン!


大きな音が聞こえた。

龍美に何かあったのかと思い、俺たちは走って音の鳴った方へ向かった。

すると、そこには血だらけで倒れている龍美と、龍美を囲むように3匹の獣がいた。

その獣はゴリラのような見た目で、デカくて凶暴そうだ。

見た目だけでとても強いということがわかる。

さすがの龍美もこの3匹に同時に襲われたら、勝つのは難しいだろう。


仁「狐白の能力って何?」


狐白「ほのお


仁「俺と狐白がゴリラを引きつけて、その隙に朱凛さんが龍美さんを回復するってのはどう?」


狐白「それでいい。あいつが死ぬ前にさっさと助けるぞ」


仁「雷双拳らいそうけん

俺は雷を両手にまとった。


狐白「火槍かそう

狐白は火のやりを出した。


仁「行くぞ!」


俺と狐白は同時に飛び出し、ゴリラに攻撃した。

ゴリラは3匹とも俺と狐白に向かってきたので、その隙に朱凛が龍美のもとに駆け寄り、能力を使った。


朱凛「癒月ゆげつ


龍美は一命を取り留めた。


俺と狐白はゴリラを1匹倒したがあと2匹残っている。


狐白「陽炎かげろう


地面から炎が出てゴリラを燃やした。

狐白の活躍でもう1体倒すことができた。


だが狐白は体力がもう残っていないようだった。

俺が最後の1匹を倒さないとと思った。

最後の力を振り絞った。


仁「紫電砲しでんほう!」


雷をゴリラに放った。

ゴリラは倒れたが、俺も力を使い切りその場に倒れ込んでしまった。


狐白「仁!」


新たなゴリラが1匹現れた。

俺も狐白も体力が残っていない。

あ、終わった。


もう死ぬんだと思ったその時だった。


龍美「龍刃りゅうじん!」


斬撃が飛んできて、その斬撃はゴリラに直撃し、ゴリラは倒れた。


龍美「お前ら、さっきは悪かった。助けてくれてありがとう」


龍美の首にはロケットペンダントがついていた。

見つかってよかった。


朱凛はすぐに俺と狐白の怪我を治してくれた。

そして、なんとか洞窟に戻ることができた。


龍美「改めて、助けてくれて本当にありがとう」


狐白「じゃあそのロケットペンダントの中見せて」


龍美「わかった」


そう言うと龍美はロケットペンダントを開いて、中の写真を見せてくれた。

その写真には龍美と女の人が写っていた。


仁「その女性はどなたですか?」


龍美「俺の妻だ。名前は紗奈さな


仁「龍美さんって今何歳ですか?」


龍美「19」


仁「19歳で結婚するのすごいですね」


龍美「中学の時からずっと付き合ってたんだ。それで半年前に結婚したんだ。でも妻は死んだ」


言葉が出なかった。


龍美「お前らだけに言うが、俺がヒーローを目指すのはヒーローに憧れてるとかではなく、ヒーローに復讐するためだ」


朱凛「ヒーローに復讐?」


龍美「俺の妻はヒーローに殺された」


狐白「それほんま?」


龍美「ああ」


狐白「僕もや」


仁「え、僕もって何?」


狐白「僕もヒーローに復讐するためにヒーロー目指してる。僕は家族をヒーローに殺された」


朱凛「あの、私もです。私は姉をヒーローに殺されました」


仁「…え?」


この時あの日のことを思い出した。

母さんと父さんが死んだ日だ。

母さんは「ヒーローが家を燃やした」と言っていた。

あの時は信じられなかった。

でも今、俺は確信した。

ヒーローが母さんを殺したんだ。


仁「俺もヒーローに家族を殺された」


狐白「え、こんな奇跡ある?」


龍美「最悪の奇跡だな」


その後、俺たちは過去に起きたことを一人ずつ話すことにした。

最初に話し出したのは龍美だった。

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