第3話
「ねえ、明らかにレベルが違うのはまあ百歩譲って良いとしても、変な組み合わせがあるのだけど、これは私の感覚が変なのかしら。お粥とハンバーグって一緒に食べないわよね普通。」
ハニーは何を言っているんだ。ハンバーグは何でも合うだろ。合わない組み合わせなどハンバーグには存在しないというのに。なぜ頭を抱えているのか、それにボンも心なしか困惑しているように見える。君の料理の方がきになるんですが。あれはいったい何の魚でどこから出てきたのでしょう。ジンは魚を捌けるからまるっと一匹買ってくる。その方が安いし、うちの近所の感謝の素材箱は。まさかこの短時間で捌いたのか、そんであのスープも自作か、スープなんて俺飲まないからないし。あるとしても味噌だしな。気になる作り方と味が。
「それじゃあ、まずは見たことないボンの料理から食べてみるか。」
スープをすくい一口。まじか、今まで飲んできた中で断トツの旨さだ。ほんのり甘く熱すぎない温度、よくわからんが風味もすんごい良い。コンソメの様な味に近いがどこかもっと深く優しく包まれる味だ。やばい感動で涙が。ああ目を閉じれは見えてくる。大自然が。辺り一面緑の平原に奥の方には高い山々。
「世界はこんなに広いのか。」
俺は上を向き涙を流しながら目に浮かぶ風景を堪能した。魚も柔らかくスプーンに力を入れなくともすっと入っていく、噛む必要はなく舌に乗せたらホロホロと崩れていく。ああなんて儚く脆いのだろうか。
「なんで料理一つで世界の広さを悟ったのよ。どんな感性してるわけ。」
「私も流石にそんなこと言われたの初めてかな。独特な感想だね。」
ハニーは俺が大げさだと思っているらしい。それなら食べてみると言い。絶対に分かるから。俺があまりにも大袈裟なので気になったのかジンとハニーもボンの料理を食べることにしたらしい。旨さのあまり二人は目大きく見開き固まってしまった。
「確かに美味しいわね。」
「美味しい。」
二人ともボンの料理が気に入ったらしい、まぁ俺も気に入ったが、さて他のも食べるとしようかな、ジンのはいつも食べてるから先にハニーのから食べるか。一口サイズに刻まれたジャガイモやニンジンを一口で頬張る、うん美味い、確かに美味いが、アレの後では少し物足りない、そう思ったのが顔に出てたのかハニーは少し不機嫌にため息をついた。最後はジンだが、もう食べなくても味はわかっている。お粥を一口、うんいつも通りだ。ハンバーグは、うんこっちも変わりない。美味しい、本当に美味しんだが、ボンの料理が旨すぎたアレは反則レベルだ。家庭レベルを超えいてる。勿論二人もかなりのレベルだった、ハニーの料理も思ったよりも美味しく、ジンと並んでその辺の店は絶対に越えてる。でも自然の風景まで魅せられた謎の料理はなんなんだ、怖いよ、本当に変な薬とか入ってないだろうな、やだよ俺変な薬知らん間に飲ませられてたら。
「誰が一番美味しかったのかな。」
わかってるのに答えを聞いてくる、かなり良い性格をしているらしい。嫌いではないこの逞しい性格はでも、恋人にするならもう少し可愛げがある子の方が好みだな。さてと、残った料理を食べるとしましょうか。
「私の料理全部マー君が食べてね。マー君の為に作ったんだからね。」
え、この量を一人で食べたらこれだけでお腹いっぱいになってしまう。他のも食べたいんだが、どうしたものか。
「好きなの食べたら良いわよ、そんな意地悪言わないでも良いでしょカレン、一つの料理をマオ君一人で食べたら残りの二つが食べられないじゃない。」
おお、ハニーまさかの助け舟だな。さっきからハニーに助けられてばかりだ。ジンは何をしてるんだ。ハニーの方がサポート力は上のようだな。
「別にそんなこと考えなくてもラップして置いておけばいつでもまた食べられるからそっちの方が良い。マオも自分でお腹空いたら電子レンジで温める方がありがたいはず。」
なるほど確かにそっちの方が夜小腹空いた時とかはありがたいか。最近夜お腹空くようになったし。というわけで俺が後で美味しく全て完食することにしようか。まぁ今夜辺りにでも食べよう。明日も朝食べればいいし。朝はジンにチンしてもらうか。
「まぁなら良いけどさぁ。」
どこか嫌そうだが了承を得たので俺は食べたいものを食べたいだけバイキングの様に食べた。あ、そうださっき考えていたことを皆に言うか。タイミング的に今しかないだろうし。
「皆、タブレットなんだけど月末に確認を皆でしてそれ以外は見ないってのはどうかな。その方が盛り上がると思うし、どうせなら楽しくやろうよ。」
俺の提案に三人とも考え始める。考える姿も美しいな。まるで花の様だ、そうだな三人を花で表すなら何になるだろうか。ジンはサファイアだろうか、ハニーはルビーだな。ボンはシトリン辺りかな。ジンは今まで一緒に居て感情がないと思うくらい無表情で何考えているのか俺でも分からない時がある、でも世話好きで優しい一面を俺はずっと見てきた、だから一般的には青だが実は色んな色があるサファイアが似合うだろう。ハニーは良く知らないが自分の信念は曲げなそうだし、瞳の色が赤くルビーぽいから多分似合うだろう。ボンはさっき俺に引っ付いてきたことを考えるとかなり天然系なのかな。胸を当ててきたときは少しぞっとすることを言ってたけど、まあ活発なイメージだから黄色いシトリンが似合っているだろう。さてもうそろそろ考えがまとまったかな。
「後ルールを決めよう、アプローチの仕方は自由だけど時間とか日にちとかは制約があるわけだしさ。」
俺が考えていたことを話すと待っていたと言わんばかりに三人ともこちらを向いてうなずいた。
「確かにそうね、アオイが今の状況ではかなり有利そうだし、私は部活があるから毎日はこれないもの。」
ハニーが愚痴を漏らす。嫌味っぽさはなぜか感じないが、確かに今の場合ジンはずっと俺といるから一番有利と言えば有利か。
「まぁそうだね、私も部活だから毎日来れないし、曜日を決めて昼休み一緒にすごすとか、登校とか下校とかを一緒にするか、調整できそうな所はかなりあるかも。」
彼女達が話し合うがこういうのは俺は知っている、漫画で学んだが男がハーレムの女の子達の話し合いに参加してらいけないことを。理由は簡単だ、一見にこやかに談笑でもしているかのような雰囲気だが、その裏で男には見えない高度な駆け引きがなされているからだ。そういえば何で皆お互いに闘志を燃やしあっているんだろうか。
まだ入学して間もない頃に確か誰が一番可愛いのか選手権みたいなのが男の間であった、それが女子にばれて変な目で見られたのに耐えかねた誰かが、皆で投票しようということを言い出して。男全員賛成したらしいその場にいなかったので俺は知らない。それでその場にいた奴らが決めたのがジンとハニーとボンの三人がこの学校で一番だという結果になったそう。でもそれを聴いた誰かが言った。「三人も居たら一番じゃ無くね」と、「確かにー」となった一同は彼女達の仲で一番は誰だという議論になりそれは今での答えが出ていない、だから彼女達は事あるごとに比べられていたっけな。
まぁジンは気にしていなかったが、ほかの二人もてっきり気にしていないものとばかり思っていたがどうやら見た感じかなりお互いを意識しているらしい。まぁジンは俺が好きみたいだからこの話し合いでは譲る気がないみたいだが。
結局あの後三十分程話し合い結果、お昼は月・水・木でボンと過ごす。火曜はハニーと金曜はジンと過ごすことになった。登校は水曜はボンと月・火・木はハニーと金曜はジンと行くことに。下校は水曜はボンと月曜はハニーと火・木・金はジンと帰ることになった。各々の家の場所や部活との兼ね合いでこうなったらしい。こうして聞くとそれぞれが何やら作戦があるらしい。でもお昼休みは一緒にご飯食べたりゆっくり話したりできる。下校も寄り道ができる。登校は寄り道したら学校に遅れるしご飯も食べれない、話しながら歩くだけだ正直に言って不公平ではないのか。まぁ本人が良いならそれで良いが。
「じゃあこれでひとまず一週間試してみようか。」
この一週間かなり地獄だった、確かに可愛い子と一緒に居られるのは良いが、それ以外の時間は質問攻めだ。なんで彼女らとそんなに親しいのかやズルいから代われ、なんで三人ともなんだよ欲張り過ぎだろ、などかなりの不平不満が俺に浴びせられた。それと彼女達にもかなり驚かされた。
まずお昼だがボンの料理がガチすぎるのだ。重箱におせちレベルの料理を週三で食べれるのは嬉しいがお金が心配だ。次にハニー普通のお弁当だが中身がボンとは違う方向で痛い。まずご飯がハートの形で盛られているその間をタコさんウインナーだったり焼売で埋められていて、玉子焼きもハートで誰がどう見ても愛妻弁当だ。ジンはまあ普通にコロッケとカレーにミンチカツといたって普通なのだが、これまでは一緒に食べてもいたし変わらないと思っていたのに食べさせる通称アーンが加えられた。
登校はボンが手をつないだり腕を組んだりして、ハニーとは左手をしっかりとホールドされている。ジンとはいつもは俺の後ろを付いて来ていたのが横になった。まあ話しやすくなったからこれは良いんだが、手もつなぐようになったな。下校もさして変わらないがボンの時は公園に寄り道をして、ハニーとはカラオケ、ジンとは図書館に行くようになった。そして毎回同じ場所だ、もう気になる本もないし、ハニーの歌のレパートリーも覚えたし、ボンとはバスケをしてかなりうまくなった気がする。
まあ一緒に居たら必ず話さないといけない訳で、無言でいるなんてことは許されない。でもまぁ彼女達の話題は決まっていた。
ボンはアニメの話だ。家で一日数話おすすめされたアニメを見ておけば良い。まぁ話す内容がかなりマニアックなので初めはついていけなかったが教えてもらったりして今では普通に語れるようになってしまった。
ハニーは将棋や囲碁、チェスなんかが好きみたいだ。まぁ部活が将棋なのでなるほどと聞いたときは思ったが、初めは話を合わせる為にやってみようと思ってはじめた。最初はオセロなどを昼休みにして登下校の時に将棋やチェスのルールを聴いた。家に帰って携帯のアプリがあるのでやってみた。むずいが美女の為だと頑張った結果今では戦術や勝ちやすい方法なんかを教わっている。
ジンは小説が好きだからその話だな、今までは興味がなかったから俺の好きなゲームの話ばかりしていたっけ。こうしてジンの話をしっかり聞くのは初めてかもな、それに心なしか小説の話をしているジンはどこか目が輝いている気がした。すすめられた本を少しずつ読んでみることにした一日三十分アニメ一話分だ。これでボンとは差がないし将棋やチェスのゲームもそのくらいはやるようにしている、まあ試合が長くなれば一局くらいで終わってしまうが。
彼女達とは良い感じだ。スキンシップもありつつ、趣味も知れてお互いのことを教えあっているこの時間は友達の様であり、しかし恋人の様な何とも言えない薄いピンク色の時が流れていく。
しかし彼女達と会うのは平日で休日はジンが飯を作りに来てくれるくらいだ、ゆっくりすればいいのに、他の子とフェアじゃないからと作り終えるとすぐに帰ってしまう。正直寂しい今までは俺が食べ終わるまで居てくれたし、食べ終わった後に会話もあったのに今はない、膨れ上がった幸せのふり幅につられてマイナスの幅も大きくなってしまったようだ。正直すごく寂しい。三人に会いたい。平日だけでなく休日も決めておいたら良かった。
心に開いた穴は隠れることはあっても癒えることは難しいらしい。誰も居ない孤独な部屋で暗い天井を見つめては胸の中に曇天が、雨が降りそうになっては雲を払いのけてまた雲が出てきてを繰り返す。休日が大好きだったが今となっては大嫌いだ。好きから嫌いには一瞬でなるらしい。平日を好きになるのに三週間はかかったものだが。嫌いになったのは虚しく思い始めたのは三日かそこらだ。
二カ月が過ぎてこの生活にも慣れだした。アニメを最近は一日で四、五話見る様になり。将棋の腕も上がり目隠し将棋ができるまでに成長したなので登下校でハニーと一局対戦する、正直強くて勝てない。小説はというと読む速度が上がり一日一冊読めるようになった。勿論読書時間も伸びたが。最近変わったことといえば休日だ。俺は考えに考えて三人に言うことにした。「正直寂しので暇なら遊びに来てほしい」とするとジンは休日毎日来るようになり、ハニーもどちらか片方来てくれた。ボンは部活が午前なら午後に、午後なら午前に遊びに来てくれる。
俺は大嫌いになっていた休日が今ではとても大好きになってしまった。やはり人の心は簡単に移り変わるのだな。人の心は空模様。ということらしい、晴れたり雨が降ったり曇ったり。偶に雪が降ったり嵐になったり。コロコロと変わる心情に自分でも嫌気がさす。しかしだからこそ嫌いっだった奴と仲良くなったりするなだろうし、仲良かったものとも仲違いをするのだろう。変わらない心はない。しかし成長しない心はある。実体験をもとに考えた俺の人生観だ。
実際に俺は変わりまくっている。彼女たちによって乱されまくりだ。しかし変わらないやつもいる。クラスの奴らだ。今でも俺の背中を指すが、指さなくなった奴もいる。そいつと話したがばかばかしくなったのだと。俺に嫉妬しても変わらないのにする意味がない。それに気づいたらどうでもよくなったらしい。そいつは今では俺と友達だ。休み時間はそいつと話している。
成長するかどうかは本人の自由だ干渉できない、でも関わる奴は自分で選ぶことが出来る
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