第5話 壊れた欲望
キャロラインはルカからのメッセージを読み返していた。
「今夜、どうしても君に会いたい。アパートに来てほしい。」
その短い言葉には、いつもと違う焦燥感が滲んでいた。彼の熱に触れたいという衝動と、何か危険な予感が胸を締め付ける。
結局、キャロラインは彼の元へ向かった。スタジオではなく、彼のプライベートな空間で会うのは初めてだった。彼女の中には期待と不安が混じり、胸の鼓動が抑えられなかった。
ルカのアパートに到着すると、彼はすでにドアの前で待っていた。シャツのボタンは無造作に外され、目にはどこか危険な光が宿っている。
「来てくれたんだ。」
その声は低く、どこか硬さがあった。彼は彼女の手を取ると、強引に中へと引き入れた。
部屋の中は暗く、閉じ込められたような空気が漂っていた。唯一の光源は薄暗いランプだけで、家具は必要最低限。壁に飾られたバレエのポスターや写真が、彼の執着を象徴しているようだった。
「ルカ、大丈夫?」
キャロラインが不安げに尋ねると、彼は返事をせず、彼女の肩を掴んだ。
「今夜は……君を感じたい。それだけだ。」
彼の声にはいつもの冷静さはなく、何か抑えきれない衝動が宿っていた。
ルカはキャロラインをソファに押し倒すように座らせると、その上に覆いかぶさった。彼の動きは普段の丁寧さや情熱的な触れ方とはまったく違い、どこか乱暴だった。
「待って、ルカ……少し落ち着いて……」
キャロラインが制止しようとすると、彼はそれを無視するように彼女の顔を見つめた。
「君が欲しい。今すぐに。」
彼の唇が彼女の首筋に強く触れる。その感触は荒々しく、欲望がむき出しだった。彼の手は彼女の服を引き裂くように動き、キャロラインはその勢いに言葉を失った。
「ルカ、少し……待って……」
彼女の声はか細く響いたが、彼はまったく耳を貸さなかった。彼の手は止まることを知らず、彼女の体を貪るように求め続けた。
その行為には愛や優しさはほとんどなく、ただ彼自身の欲望を満たすためだけのものであることが、彼女には痛いほど伝わってきた。
彼が彼女の腰を掴み、身動きを取れないようにして、自分のものを乱暴に彼女の奥にいれた。キャロラインは胸の奥に屈辱を感じた。だが同時に、その荒々しい触れ方の中に潜む熱と執着に、奇妙な快感も覚えてしまう自分がいた。
ルカの動きが激しくなるにつれ、キャロラインは次第に抵抗する気力を失っていった。彼の手が体を這い回るたび、彼女の中で恥辱と欲望が絡み合い、境界線が曖昧になっていく。
「キャロライン……君は僕にとってすべてだ。」
彼が囁いたその言葉は、熱っぽくもどこか病的だった。
彼の行為が最高潮に達すると、キャロラインの中に不思議な感覚が広がった。それは痛みや恥辱だけでなく、体が彼に支配されることへの奇妙な満足感でもあった。
だが、その感覚が快感であることを認めるのが怖かった。彼女は目を閉じ、ただ彼の動きに身を任せるしかなかった。
すべての行為が終わった後、ルカはキャロラインを抱きしめることもなく、ただソファに座り込んで息を整えていた。彼女は自分の乱れた服を直しながら、彼を見つめた。
「ルカ、これは……」
彼女が言葉を探していると、彼は低い声で言った。
「分かっている。僕は……君を傷つけたかもしれない。」
その言葉には後悔の色があったが、同時にまた同じことを繰り返してしまうという確信も含まれているようだった。
「でも、やめられない。君に触れることでしか、自分を感じられないんだ。」
彼の目には苦しみと欲望が混じり合い、キャロラインはその奥に隠された孤独を感じた。
キャロラインは自分の中に沸き上がる感情を整理しようとした。
彼の行為には明らかな乱暴さがあった。それでも、彼女は彼が壊れかけた人間であることを理解してしまった。そして、その壊れた部分に触れるたび、彼女の中で彼を助けたいという気持ちが芽生える。
「ルカ……私は、あなたをどうすればいいの?」
彼女が小さく呟くと、彼は手を伸ばして彼女の頬に触れた。だがその触れ方は今までと違い、どこか脆弱さを含んでいた。
「僕を拒絶しないでくれ。それだけでいい。」
その言葉に、キャロラインは深い溜息をついた。彼の壊れた欲望を受け入れることは、自分自身を壊すことになるかもしれない。それでも彼女は、彼を放っておけないと感じていた。
儚き旋律 ルカ @kakiyan3934
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。儚き旋律の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます