第四装備 鎧

第四の装備、鎧。

鎧は首から足の先までを覆った白き全身鎧。

肩からは後ろにたなびく紅いマントが脛付近まで伸びている。

この全身鎧だが、外から見ると継ぎ目の類が見えない。

では、どうやってこの鎧を着るのかというと方法はわからなかった。

勇者がこの鎧を手に入れてからというもの、鎧以外の姿を誰も見ることがなかったのだ。

さすがに風呂に入る、睡眠をとる時には鎧を脱ぐだろうと思われるが、勇者は村や町に着いた時に宿屋を取ることがなかった。

誰にも迷惑をかけたくないとの意思表示なのだろうか、食料などを購入し、野営をしていたようだ。

遠目にどんな様子だろうかと観察しようとしたものもいたのだが、そこにいたのは鎧を着たまま、木に寄りかかり、座り込んでいる勇者の姿。

休んでいるようだが、その手のはしっかりと剣の柄が握られており、殺気を感じた瞬間にその剣を振るうだろうと確信が持てるような様子だったという。

そんな着方のわからない鎧ではあったが、不思議なことに鎧表面に汚れ、傷は一切ついていない。

驚きの白さなのに汚れ一つないとはどういうことなのか?

回収時に指紋が絶対につくと思われるのだが、それも無し。

試しに煤の付いた手で鎧表面をなぞってみると煤は溶けるように消えていったそうだ。

鎧自身に除去効果、再生効果があるということなのだろうか?

防御力に関しては盾に劣るものの、一線で戦えるほどはあったようだ。

さらに背中のマントには伸縮性と熱に対する耐性があることも確認された。

伸縮に関しては体全体を包み込む程度には伸び、これだけで野営時の寝床には苦労しなかったようだ。

熱に対しては炎で燃えず、冷気も通さないことが後の検証で判明している。

これだけの機能があるのであれば、たとえ鎧という形でなかったとしても欲しいという意見が多数上がったのだった。

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