デリカシーの無い風俗店!
崔 梨遙(再)
1話完結:1300字
30代の半ば。僕はその頃、お気に入りの女性がいて、その女性が働いている風俗店に通っていた時期があった。その風俗嬢は美咲、理由はわからないが、最初から僕は美咲に惹かれた。星の数ほどいる(←大袈裟)風俗嬢の中で、僕が美咲を贔屓にしたのは奇跡かもしれない。美咲も、僕に対しては最初から何か他のお客さんとは違うものを感じていたらしい。
最初に出会って、3日連続で店に行って指名したら、3日目の夜には2人で食事に行った。美咲のプライベートタイムを一緒に過ごすことが出来たのだ。これは、僕にとっては嬉しいことだった。僕は、美咲の特別な存在になれたのだから。
次に店に行ったら、夜にはカラオケ。その後、2人でホテルに行った。プライベートで結ばれることが出来た。
そうなると、ますます美咲を贔屓にする。或る日、赤い顔をした美咲が出て来た。熱が39度もあった。僕は“今日は帰れ”と言ったが、“今日、頑張ったら、明日から生理休暇やから”と言って、美咲は帰ろうとしなかった。なので、僕は店に10万を払って美咲を貸し切りにして、美咲を帰らせた。そんなこともあった。
僕達には、次第に付き合っているという意識が芽生えていた。
その日、店は混んでいた。
「美咲ちゃん、いますか?」
やり手婆に聞いてみた。
「美咲ちゃん、今、他のお客さんが来てるから」
「どのくらいかかりますか?」
「そうやね、あと30分くらいやわ」
「ほな、喫茶店でコーヒーでも飲んで、30分後にまた来ます」
「まあまあ、そう言わずに、中で待っててよ。今、待合室はいっぱいやけど」
「喫茶店で時間を潰すからいいですよ」
「いやいや、中で待ってて」
「大丈夫ですよ、必ずまた来ますから」
婆は、ここで繋ぎ止めないと僕が帰ったり、他所の店に行くのではないかと不安なのだ。その気持ちは伝わってきた。だが、そんなに必死にならなくても、僕は美咲に会いに来たのだから、また来るに決まっている。僕は、必死で繋ぎ止めようとする婆がウザかった。
「空いてる部屋があるねん。美咲ちゃんの隣の部屋。そこで待っててちょうだいよ」
僕は諦めて店に上がった。気は進まなかった。
部屋に入ると、大きなあえぎ声が聞こえて来た。美咲の声だった。これはキツイ。僕は美咲の仕事を否定しないし、美咲の理解者だと思っている。だけど、気に入ってる女の娘(こ)のあえぎ声を聞かされるのはツライ! あの婆、何を考えているんだ? デリカシーというものは無いのか? 僕は1階に降りた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「美咲ちゃんのあえぎ声を聞きたくないので外に出ます。外で待ってます」
「なんで? 美咲ちゃんのあえぎ声を聞いた方が燃えるんとちゃうの?」
「はあ? 何を言うてんねん、お前は? 気に入ってる女が他の男に抱かれてるあえぎ声なんか聞いても、嬉しいわけが無いやろ、そんなこともわからんのか? 婆、お前は無神経過ぎるねん! 無理に中で待たせるな!」
僕は婆に怒りをぶつけた。美咲は、僕が隣室で声を聞いていたことを知ると泣いた。
デリカシーの無い風俗店! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます