やっぱりいい人

校門の前で少し待っていると


「おっ待たせー」


と陽気な様子の藍奈さんと美咲さんがやって来ました。


「そんじゃ、うちらの家に行こっか」


「…うちら?」


「あー、うちらルームシェアしてんだよね」


なるほど。やはり仲のいい人はルームシェアをするのでしょうか。生憎私にはルームシェアをするほどの仲のいい人が居ないので分かりませんが。


「そんな事よりもさっさと行こー」


軽く考え込む私を尻目に藍奈さんはさっさと先に進み始めてしまったので1度思考を止め小走りで藍奈さんを追いかけた。


◇◇◇

「ここだよー」


連れてこられたのは比較的大きなマンションの一角。3階の角部屋でした。

玄関が開くと意外にもシンプルな色合いで統一された部屋が広がっていて、綺麗にされてしました。


「さ、上がって上がって〜」


「お邪魔します」


靴を脱ぎ揃えて置く。振り返ると既に藍奈さん達は進んでいました。…行動が早いですね…


「洗面所はそこね」


美咲さんが手前の扉を指さして洗面所の場所を教えてくれました。

美咲さんが綺麗好きなのでしょうか。手洗いだとか靴を揃えていたりだとか、几帳面さが滲み出ているように感じられます。


手を洗いリビングに足を運ぶと既に藍奈さんがシュークリームが入っているかと思われる箱を持ってきていました。


「これ、約束のシュークリームね〜」


箱が開けられるとそこには粉砂糖が軽くまぶしてあり見るからにふんわりと美味しそうなシュークリームが並んでいました。


なんて美味しそうなのでしょうか!中々お目にかかれないタイプのシュークリームみたいです。これを分けて頂けるなんて…やはりこの2人はとてつもなく良い人なのでしょう。


「ほら、好きなだけ食べてね〜」


「い、いいのですか?」


「勿論いいよ。さっ食べて食べて〜」


それでは遠慮なく。

箱からひとつのシュークリームを取りだし、

1口。生地だけしか食べられませんでしたが中にはぎっしりとカスタードクリームが詰まっています。


「1口ちっちゃ、小動物みたいだね〜」


「そうでしょうか…」


あまりそんなことを言われたことがないので疑問に思いつつ2口目。カスタードの程よい甘みが口いっぱいに広がり幸福を感じずにはいられません。


甘すぎない上品な甘さと生地の柔らかさ、大きさも含めて、120点満点の美味しさです。


この時の私はシュークリームに夢中になっていて、2人が獲物を見るような顔で私のことを見ていたことに気づきませんでした。

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