第5話、クルック
「クルック機、発艦どうぞ」
管制官から許可が出た。
「待ちわびたぜっ」
クルックが”ホウセンカ”のスロットルを大きく開けた。
ドオオン
飛行艇空母”キサラギ”の飛行甲板から、斜め上に飛び出した。
「うわっ、クルック機、離艦時の安全速度を守れっ」
離発着訓練中である。
「どう思う~、ヒイラギ中尉~」
メルル―テが艦橋から、クルックの離艦を見ていた。
「腕はいいんですけど、機体の扱いが荒いですよね」
「常にいうこと聞け~って感じです」
ヒイラギと呼ばれた二〇歳前半の女性が答えた。
彼女は、空母”キサラギ”に配備されている、”ホウセンカ”の飛行隊長である。
約五年前、”レンマ王国”と”シルルート王国”、そして”ハナゾノ帝国”の三か国が共同で飛行艇『ホウセンカ』を開発した。
その時の初代テストパイロットが、メルルーテとイナバである。
二代目のテストパイロットとして派遣されたのがヒイラギだった。
「ん、整備士に対する態度も横暴」
同じくヒイラギのコパイロットをした、ヒビキ大尉が言う。
「う~ん」
――かといって、飛行のたびに機体をほぼフルメンテするイオリ少尉も、それはそれで困るんだけど~
イオリは格納庫からほぼ出て来ていない。
「イオリもクルックも濃いわね~」
メルル―テの言葉に、ヒイラギとヒビキは大きくうなずいた。
◆
飛行艇空母”キサラギ”は、レンマ王国王都”レンマ”に少し立ち寄り、東方最大の空軍基地”カラツ”を目指す。
イナバとメルル―テのコノハナ子爵領が”カラツ基地”の北方にあった。
”シラフル湖”はもう少し東に行った辺境地だ。
”カラツ基地”が見えてきた。
基地所属の飛竜に乗った”竜騎士”が出迎えてくれる。
「お帰りなさい。 メルルーテ大佐~」
赤や青や黒い飛竜と竜騎士、10体くらいが出迎えてくれた。
「一番ドッグへ着艦どうぞ」
”キサラギ”がランディングギアを出して着艦した。
◆
”カラツ基地”は、メルル―テが隊長を務める”レンマ空軍教導部隊”の本部がある。
特に、新しい機種である”飛行艇”の”教導”を行っていた。
また、”飛行艇”の
「というわけで、教導部に10機ある”ホウセンカ”の半分を”ゲッカビジン”に換装するわよ~」
メルルーテだ。
”ゲッカビジン”の評価試験も同時に行うのだ。
「うおお、まかせろーー」
何故か、パイロットであるイオリが一番盛り上がっていた。
換装させろーー
「あ~、あれは変態の一種だよな~」
整備長のイナバがしみじみと言った。
いじれて飛ばせてすごいんだけど
ビクッ
――だ、大丈夫か?こいつ
ファラクは、生暖かい笑顔を浮かべてイオリを見ている。
イオリのおかげで通常の三倍の速さで換装が終わった。
飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語 touhu・kinugosi @touhukinugosi
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