空き地の幼女
ツヨシ
第1話
あれは俺が高校生の時だ。
まさしの家に、のぼると一緒に遊びに行った。
まさしの部屋でゲームをしたりだべったりして過ごしたのだが、気がつくともう夜の十時を過ぎていた。
男子高校生とはいえ、さすがにこの時間は遅い。
親に怒られてしまう。
「遅くなった。もう帰るわ」
俺とのぼるは外に出た。
まさしが見送りに出てくる。
その時、まさしが言った。
「あれ、あんなところに小さな女の子がいるぞ」
まさしの視線の先は、まさしの家の前の空き地だ。
雑草だらけの。
俺は視線を追って空き地を見た。
さして広くない空き地は街灯に照らされていて、うっすらだが全体が見渡せた。
しかしどこにも小さな女の子なんていない。
「おい、女の子なんていないぞ」
のぼるが言ったが、まさしは言い返す。
「いや、いるじゃないか。空き地の真ん中に小さな女の子が」
「いやいや、どこにもいないぞ。からかってんのか」
俺が言ってもまさしはやはり同意しない。
「いや、はっきり見えるぞ。なんであんなにはっきり見えるのか不思議なくらいに。笑って、俺を見て手招きしているぞ」
その口調はやけに真剣そのものだ。
その顔も。
どう聞いてもふざけているとはとても思えない。
「そうか、いるんだな」
俺が適当に答えると、のぼるが同様に答えた。
俺はなんだか気味が悪くなってきた。
のぼるも俺と同じみたいだった。
「とにかく遅いから、もう帰るわ。おやすみ」
「じゃあ、またな」
俺とのぼるは、逃げるように家に帰った。
次の日、まさしが階段から落ち、頭を打って死んだ。
終
空き地の幼女 ツヨシ @kunkunkonkon
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