一章『源流想起庭園』

白銀の夢

 夢を見た。

 ユメを観た。

 理想ユメを視た。


 森で、草原で、砂漠で、雪山で、

 何処かの誰かが剣を振る夢。


 その人の顔は忘れてしまったけれど、その剣のことはよく覚えている。

 まるで夜空の星と月の煌めきを全部押し固めたかのような白銀の輝き。


 視界を埋め尽くすような魔物の群れも、麓の村に迫りつつある雪崩も、海辺に迫る大津波ですらも、夢の中の誰かはただの一薙ぎで払ってみせた。


 いかにも夢らしい現実感のない光景……でも、私は知っている。私たちは知っている。

 これは、私の先祖が見て魂に刻み込んだ記憶の残滓。

 あの非現実的な光景は、かつて実際にあったことなのだろう。

 

 夢の中のあの人が使う武器は常に同じだけど、その形状は場合と用途によって千差万別。

 ある時は流麗な装飾剣。

 ある時は大木に見紛うような巨大剣。

 剣ではなく斧や槍や弓を使うこともある。

 これらは全て同じ武器が変化したものなのだ。


 変幻自在にして天下無双。

 千変万化にして縦横無尽。


 一つの剣が持ち主の意のままに姿を変え、常に十全の機能を発揮する。

 それこそが聖剣・変幻剣。

 神が勇者に与えし無双の神器。


 あまりに強大な武器・兵器は見る者に畏怖を抱かせる。

 でも、夢の中の私は、その剣を綺麗だと思った。

 とても綺麗だと。



 だから。

 だから、私は―――――。

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