第2話 記憶のすり合わせ
この謎が判明したのは割と最近の事である。
今現在、我が家(実家)には三匹の猫が居る。その中の一匹が『ミーコ』という名前だ。この猫は祖母が祖父に先立たれた後、寂しさを埋める為に迎え入れた猫である。
名前の由来はお察しの通り、昔に飼っていた『ミーコ』から取っている。
その事に関して祖母と会話していた時、僕がミーコとの思い出を語った。すると、祖母はとても不思議そうな顔をしていた。
「何でそんな事をアンタが知っているの?」
誰かから聞いたの?と言われたが、そう言えば僕はミーコに関する話を誰からも聞いていなかったなぁと再認識すると共に、祖母の問いに否定を返した。
「いや、何でって言われても。居たじゃん。昔の家に」
「居たよ。居たけど、アンタがそれを知るわけがないじゃない。あの子が家に居る時、まだアンタは産まれていなかったんだから」
祖母は訝しむような目を僕に向けていた。とても冗談を言っているようには聞こえなかった。
ただ、僕がミーコの事を誰からも聞かされていない事は事実だ。両親からも、祖母と同じような反応が返って来たからだ。
それに、記憶の中にミーコの姿がはっきりと焼き付いているし、喧嘩した時の鳴き声も覚えている。
その後も何度も祖母や両親と記憶のすり合わせを行った。
特筆すべきは耳の怪我だろう。怪我の位置や形状。そして他の猫と庭で喧嘩して出来た傷だという記憶も全て一致していた。
ただやはり、その時には僕は産まれていなかった。
あまりにも気持ち悪かった為、何度も確認を行ったが、やはりミーコに関する記憶は全て一致していたし、あの猫の事を僕が聞かされたことが無いという事も事実だった。
聞かされていなかった理由は、あまり綺麗な死に方をしなかったかららしく、みんな忘れようと努めていたからなんだとか。
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